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皆さんは割安と思って買った株が上がるどころか逆に下がってしまった経験はないだろうか。果たしてこの一見納得いかない動きの真相は?また株で負けないために必要なこととは?
6月も後半となり、会社四季報の最新号も発刊となった。熱心な投資家の方は、まさに四季報の全ページをめくるほどの勢いで、優良株、割安株の発掘にいそしんでいることと思われる。
筆者も株式投資に際しては会社四季報のデータを参考にすることが多いのであるが、四季報掲載のデータを見ていて、この業績予想に比べたら今の株価は安いな、と思って購入した株式の株価が、上昇するどころかずるずる下落してしまった苦い経験がある。その一方で、業績予想の数値は大して良くないのになんでこんなに株価が高いのか、と思っていると、その後さらに株価が上昇していく、といったケースもある。
では、なぜこのような現象が起こるのか、例を挙げて考えてみたい。
ジャスダック市場にケイビーという会社があった。この会社は冷凍食品の製造・販売を行っている会社であるが、関係の深かった居酒屋チェーンの北の家族(こちらもジャスダック上場)とともに、今年の1月17日に民事再生法の適用を申請して事実上倒産した。
会社四季報の2001年春号によると、この会社の2000年3月期の業績は売上高163億円、経常利益10億7千万円、当期利益5億7千万円であり、2001年3月期の業績予想は売上高160億円、10億円、当期利益4億9千万円と2000年3月期とほぼ横ばいであった。また、1996年3月期から2000年3月期まで経常利益は毎期増益であり、配当も10円以上、さらに2000年9月中間期現在の株主資本比率も55%と財務面でも特に懸念は見当たらない。それなのに、株価は1999年の2580円をピークにして、反発らしい反発もないまま、2001年1月には500円まで下落していた。
その後、2001年3月期の決算発表があり、売上高117億円、経常利益5千万円、当期損失2億2千万円と、実績は予想より大幅に悪化していた。さらに、前の期まで続いていた10円以上の配当を、無配とした。
このとき、会社四季報に掲載されている2001年9月中間期の業績予想は、売上高80億円、経常利益5億8千万円、中間利益2億8千万円としており、この数字だけ見ると、2002年3月期は再び業績が回復するように見て取れる。しかし、株価の方は下げ止まることなく、2001年10月には100円台にまで下落した。
そして、あっと驚く2001年9月中間期の決算が発表された。売上高は予想をはるかに下回る約9億円、経常損失5億円、そして当期損失は112億円というとてつもなく大きい金額となったのである。
この会社の良くなかった点としてあげられるのが、2001年9月中間期の実績が当初予想より大幅に悪くなるのが分かっていながら、業績の下方修正の発表をしたのが決算発表の直前であったということである。四季報を頼りに多くの個人投資家は、果てしなく下げ続けるケイビー株を、人によっては難平買いをしながら、「割安だから」という一心で買い続け、そして多大な損失をこうむったのだ。
結局、いくら会社四季報の業績予想数値が良いものであったにしろ、会社の内情は火の車だったということであり、果てしなく続いた原因不明の株価の下落は、ふたを開けてみれば納得できることであった。
逆のケースとして、スタンレー電気という会社を挙げてみよう。この会社は自動車のランプメーカーであるが、電子機器等に使用される発光ダイオードも手がけており、これが業績急成長の原動力となっている。筆者がこの会社に注目したのは1999年の終わりごろであるが、このときの株価600円前後に対し、四季報での予想業績をもとにした一株あたり利益は17円であり、株価はやや割高と感じていた。しかし、その後株価は上昇を続け、2000年10月には1300円以上となった。結局、相次ぐ業績上方修正の結果、予想業績をもとにした一株あたり利益は40円から50円程度にまで上昇し、株価上昇の理由が後になって判明したという結果になった。
個人投資家にとっては会社四季報の業績予想データは投資判断に非常に参考になるものである。ただ、この業績予想データを使用するに当たって注意したいのは、業績予想はあくまで会社が独自に発表した数値であり、会社によりその信頼性はまちまちであるということと、業績予想自体が、ある一時点においての将来の予想数値であり、時の経過とともに当然予想数値は変化していくものということである。
アナリストの人々は、企業に足繁く通って、企業から最新の業績データを入手する。また、メーカーの場合は受注残高の動向を把握すれば、ある程度先の業績が見通せる。大口の機関投資家は、アナリストらが入手した、いわば生きた新鮮な情報をもとに売買を行っている。一方で個人投資家にそうした情報が回ってくるのはかなり時間がたってからである。機関投資家と個人投資家には情報量や情報の入手スピードに格段の差があり、ただ何も対策せずに四季報のデータのみを鵜呑みにして売買すると、思わぬ損失をこうむったり、逆にせっかくの収益チャンスを逃してしまうことになりかねない。先のケイビーやスタンレー電気の例においても、機関投資家は個人投資家が情報を入手する以前からしかるべき投資行動をとっていたことは、株価の動きから間違いないと思われる。
よって、個人投資家は四季報のデータを活用しつつも、株価の動きを常にウォッチして、機関投資家との情報量の差によるハンディを補う必要がある。機関投資家らがどのような行動をとっているかは、株価の動きをみていれば分かることも多い。四季報データでは好調な業績予想であるのに株価が下落を続けている場合は、予想よりも実際は業績が悪くなりそうだ、という情報を入手した機関投資家らの売りによるものと推測できる。そんな場合は安くなったからといって安易に買いを入れて、後の業績予想下方修正で思わぬ損失を受けることのないよう、しばらく様子をみればよいし、逆に四季報での業績予想がさほどよくないのに株価が上昇を続けている場合は、業績の上方修正見込みから機関投資家が買いを入れている可能性が高い。こんなときは黙って買ってみるのも案外良い結果に結びつくかもしれない。
まず会社四季報によって気になる銘柄をピックアップするのは個人投資家にとって重要な作業である。ただし、その後に、ピックアップした銘柄の株価の動きをチェックし、四季報のデータと矛盾する動きがないかどうかを確認することの方が重要である。最も分かりやすいのは、相場全体が上昇しているにもかかわらず、ある銘柄は全然上昇しない、といった場合である。この場合はその銘柄に業績下方修正などの悪材料が隠されており、実情を知った機関投資家等が先回りして売っているためである事が多い。個人投資家はデータ量やその新鮮さ、という点では機関投資家にはかなわない。しかし、機関投資家の先回りの行動は必ず株価の動きに表れる。個人投資家は四季報データの活用とともに株価の動きを常にチェックし、機関投資家の行動をいち早く推測することが、株式投資で負けないためには必要不可欠なのである。
加藤武夫
提供:株式会社FP総研