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●第3者機関のキーマンは松田、田中両氏
小泉純一郎首相が、道路関係4公団の民営化を具体的に検討する第3者機関である推進委員会のメンバーに作家の猪瀬直樹氏を起用したことで、自民党道路族との対立は抜き差しならないものになってきた。政権発足当初に比べ、改革姿勢の後退が指摘される首相が“最後の意地”をみせた格好。しかし現実問題として、自民党だけでなく、同じ与党の公明、保守両党まで首相への反発を強めており、延長国会の最大の焦点である郵政関連法案や健康保険法改正案の成立にも何らかの影響が出ることは避けられない見通し。その意味で首相は政権維持に向け「大きな賭け」に出たとも言える。
今回の人事のキーポイントは、マスコミに再三取り上げられ、高速道路建設の即時中止など最も過激な主張をしている猪瀬氏が入ったことではなく、実はJR東日本<9020>の松田昌士会長と田中一昭拓大教授の2人が起用されたことだ。いずれも国鉄分割民営化の時の立役者で、田中氏は当時、事務局長として国鉄民営化を仕切った。この時のノウハウを熟知している2人がメンバーに選ばれたことで、首相が道路公団民営化に本気であることが改めて示された。いささか邪推すれば、焦点となっていた猪瀬氏を反発覚悟で敢えて入れたのは、いずれどこかの時点で道路族と妥協する際の“捨て石”と解されなくもない。首相の「反発は覚悟の上。捨て身の決意で人選した」との感想がやや芝居じみている、とみるのは深読みのし過ぎであろうか。
●今国会末か臨時国会での“不測の事態”高まる
いずれにせよ、道路族や各都道府県知事らからは「またポピュリズムの人選をした」「改革というより、破壊者的な人がいることを憂う」(古賀誠自民党道路調査会長)などの強い反発の声が上がっており、今国会終幕時点、首相が「道路」と並んで最も力を入れている「郵政」関連法案にも何らかの影響げ出ることは避けられない見通しだ。仮に同関連法案が会期を延長した上で不成立となると、小泉政権には大きな打撃となる。
自民党の野中広務元幹事長は「小泉首相が解散するというなら受けて立つ」とまで言い切っており、今国会末や秋の臨時国会での解散・総選挙という“不測の事態”が起こりうる確率は高くなったと言ってよい。しかし、解散するためにはそれだけの力を保持しておく必要がある。仮にこのまま内閣支持率が下がり続ければ、10月27日の衆参5補選で惨敗、さらに来年春の統一地方選で負けて退陣―ということも十分考えられる。そのことを考慮すれば、小泉首相の今回の人選に当たっての「捨て身の決意」というのは、意外に本気とだいう解釈も成り立つ。
●田中氏が新党結成に動く可能性はゼロ?
公設秘書給与の流用疑惑が持たれていた田中真紀子前外相に対する自民党党紀委員会の処分が「2年間の党員資格停止」と決まった。これを重いとみるか軽いとみるかは様々だが、「期限付きの除名」(野中氏)という言い方が最も実態に即しているかもしれない。「単なる執行猶予。実損はない」(政府筋)との見方もあるが、党総裁選への立候補や投票権がないだけではなく、党の部会への出席も禁止、さらには選挙区支部長も解任され、もしこの間、総選挙が行われても党から公認されないなどを考えると、これまでにない“重罪”であろう。他人より目立ちがり屋で役職に就くのが好きな人だけに、2年間全く無役というのに田中氏本人が耐えられるかどうか。
ちなみに1月の外相更迭当時、新党結成に動くのではなどという観測もあったが、今回はさすがにそうした記事はみられなかった。最側近議員とみられていた平沢勝栄氏ですら「世論の空気が変わった。(処分は)やむを得ない」と言い切っており、仮に田中氏が離党してもついていく者など皆無だろう。
また、そもそもで言えば、今回の自民党の処分は要するに田中氏の「態度がけしからん」というもので、秘書給与の詐取疑惑が何ら晴らされたものではない。従って、今後、検察庁ないしは警視庁の捜査は当然行われるものとみられる。少なくとも同種疑惑で議員辞職した辻元清美前社民党議員らのケースより悪質で、これが見過ごされるようなら、日本には法の下の平等など存在しないことになる。いずれ鈴木宗男議員のあっせん収賄事件が一段落すれば、検察庁も本格捜査に乗り出すものとみられる。
●「意思に報いる」と決議案に賛成した野中氏
その鈴木議員が逮捕され、議員辞職勧告決議も衆院で初めて通った。同議員の逮捕容疑については何度も書いているように、憲法でその身分が保障された国会議員の逮捕許諾請求をしてまで行う事案ではない。政界でも橋本派を中心に「何がいけないのか分からない。検察は別の狙いがあるのではないか」「これで裁判を維持できるのか。検察が狙ったら何でもできることになる」「検察が何のチェックも受けずに好き放題しているのは恐い」などの検察批判が噴出している。
逮捕許諾請求決議案の採決でも6人が不賛成だったり、抗議のために議場を退席した。鈴木議員が弁明した衆院議院運営委員会でも「証拠隠滅や逃亡の恐れが本当にあるのか。鈴木氏は逮捕して、なぜ加藤紘一氏はやらないのか」(高木義朗氏=民主)、「鈴木氏の政治力が強かった時には手を着けず、マスコミの追及が大きければやるのではリンチではないか」(小池百合子氏=保守)などの疑問が相次いだ。
それにしても、鈴木議員が最後まで師と慕った野中氏が「鈴木君の意思に報いること」などとして、決議案に賛成したことは解せない。政治家として惻隠の情がないというか、要は役に立たない人間はさっさと消えろということか。
●ナべツネ氏が小泉発言に激怒
小泉首相が日本新聞協会の総会で「(マスコミの目は)節穴だ。構造改革は着実に進んでいる」と述べたことが、首相の目の前にいた同協会会長の渡辺恒雄読売新聞社長を「こんなに失礼な政治家は初めてだ」と、激怒させている。首相は腹心の山崎拓自民党幹事長を呼び、対応策を協議したが、妙案は出ていない。
政権発足当初、ナべツネ氏は小泉首相を支持していた。ところが、同新聞が経済政策の転換などを求めたのに対し、首相は無視。以後両者の溝は大きく深くなっている。もちろん、たかだか一新聞社の社長が仮にも総理大臣に対し、けしからんもないものだが、同社長と長年盟友関係にある中曽根康弘元首相が小泉批判を強めていることと軌を一にしているらしい。
確かに小泉首相の切れ味が次第に鈍くなっていることは事実だが、かと言って大姑小姑に囲まれ、何だかんだと文句をつけられる首相にもいささか同情したくなる。
(政治アナリスト 北 光一)