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救世主になるか−。神話崩壊で業績と株価低迷のなか、「ユニクロ」のファーストリテイリングは、食品事業への参入で糖度や栄養価が高い「永田農法」と提携、秋の販売開始に向けて急ピッチで準備を進める。夕刊フジはマスコミに滅多(めった)に登場しない永田農業研究所の創始者、永田照喜治氏(76)=写真=を直撃したところ、提携の真意や壮大な構想を激白した。
−ユニクロとの提携理由は何ですか
「古びた言葉になりますが、農業の構造改革をやりたいんです。柳井さん(柳井正ファーストリテイリング社長)に会ったときにその話をしたら、柳井さんも『やりましょう』と言ったんです。もうだいぶ前ですけどね。提携条件は他に何もありません。男の約束って単純なものですよ」
−構造改革とは?
「1つは無駄な中間流通を通さないこと。実際、ユニクロは秋田県大潟村の生産者グループと直接契約をしました。全国で同様の動きが雪崩(なだれ)現象のように起こるはず。今の日本の農業は江戸時代のまま。消費者は栽培情報を遮断されていて、そこにBSE(牛海綿状脳症)や雪印の偽装などの問題の根がある。当然、ユニクロも直接販売が多くなるでしょう。情報公開も徹底します」
−なぜ、ユニクロを選んだのですか
「あまり具体的に言うと支障がありますが、ニセモノ時代ですから、スーパーではやりたくなかったんです。それに(ユニクロの社員は)まじめですよ。今の怠け者ニッポンの中で珍しいぐらいひたむきです」
−永田農法の野菜にも幅広くランクがあるようですが
「確かに糖度9以上の最高級の頂点から裾野まであり、幅広く扱う予定です」
−ユニクロ側は普及価格で出せると言っているようですが、
「糖度6から8ぐらい(一般のトマトの糖度は3から4といわれる)なら可能だと思います」
−価値ある野菜が分かる消費者のため、一部の高所得層向け高級野菜を作っていたのでは
「それがね、一度このトマトを食べた人が『ほかのトマトが食べられなくなった』って言う。買うには高いし、そもそも店に置いていない。『もっと欲しい、それも手ごろな値段で』って、本気で怒ってくるんです。これ、こたえました」
−手軽に高級野菜が食べられますか
「ホントはご自分で作るのが一番。都市の住民にこそ、それがいいのでは。ドイツなどでは野菜や果物は物々交換が多い。市民農園や家庭菜園が盛んなんですね。まあ、戦後の食糧難の一坪農園と違い、趣味や楽しみで育てておられるから、むしろ“貴族農園”とでも呼ぶべきでしょう」
「『園芸』の語源には、貴族のニュアンスがあるぐらい。ベルサイユ宮殿の裏にも、かつての王妃の農園があり、政府が大事にしてますよ。日本でも“貴族農園”が広まれば、中間流通を省く構造改革にもなります」
−広まりますか
「はい。専業農家が減りますから、1人当たりの作付面積は十何年か後には、県によっては400ヘクタールにもなって、専業農家が自動栽培をする時代になります。いま私は自動化技術の特許も書いていますが、農業人口の0.1%が自動栽培をする大規模専業農家で、残り99.9%が貴族農園になると思っています」
−都市住民の栽培は大変なような気が…
「ベランダの鉢植えでいいんです。これで十分糖度の高い野菜がつくれますよ。特許も出してます。自分でおやりになるなら、ノウハウは無料で提供します。その代わり、これで商売するなら特許料はいただきますよ(笑い)。これがホントの情報社会だと思う」
激白を締めくくり、永田さんは「大地に根をはらなければ、農協法、農地法上の農業ではなく、鉢植えなら規制を受けません。いっそ日本中の農業を鉢植えにしようかな」と目を輝かせた。
◇
永田照喜治(ながた・てるきち) 1926年、長崎県・天草生まれ、76歳。神戸大経済学部卒業後、農業を継ぐ。あるとき肥えた土地の作物よりやせた土地の作物の出来が良かったことに気づき、新たな栽培方法を研究。原産地の環境を再現するなど独自の農法を確立した。
水、肥料を極端に減らすのが代表的な特徴。糖度と栄養価の高い作物ができることで知られ、トマトについては雁屋哲氏の『美味しんぼ』(小学館)の第7巻でも紹介された。著書『永田農法 おいしさの育て方』(小学館)では栽培方法の一端を披露。現在、永田農業研究所所長などを務める一方、各地で農家の生産指導に当たる。
◆業績悪化、反転へ正念場
ユニクロを展開するファーストリテイリングは今、業績悪化の立て直しに全力を挙げている。
業績は下降の一途。一昨年秋にフリースを2500万枚売って一世を風靡(ふうび)したが、その後の他社の追随やユニクロ商品の新鮮味の薄れなどから暗転した。
既存店の売上高は、昨年10月から今年5月まで8カ月連続で前年実績を下回り、下落幅も5月は過去最大の前年比44.2パーセント減になるなど、厳しい状態が続いている。
今年2月中間決算では初の減収減益となったうえ、8月の通期見通しも4割の減益見込みだ。
懸命に反転を模索中で、今秋にはカリスマ柳井正社長にかわり、玉塚元一常務が社長に就任して経営を刷新。カジュアル衣料に加えて、ビジネスにも使えるシャツ、子供向け衣料、ベビー服などで攻勢に転じる構えだ。
サッカーチーム「草津ザスパ」への公式ユニフォーム制作で話題も提供した。
昨年9月に進出した英国では、5月末、ロンドンのファッションの中心、リージェントストリートに15店目を開店。秋には中国にも進出する。同じころ食品販売もスタートする計画で、同社にとっては今年後半が最大の正念場となる。