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【ワシントン竹川正記】
21日の米市場での株安、ドル安は、「米国売り」の様相を示し、「景気底入れ宣言」をしたばかりの日本をはじめ、米経済頼みの世界経済への打撃が懸念され始めた。21日のダウ工業株30種平均株価は7カ月半ぶりの低水準、ハイテク銘柄の多い店頭市場のナスダック総合指数は、昨年9月の同時多発テロ後の最安値に接近した。一部では米国からの資本流出による国際金融市場の混乱を心配する声も出てきた。
中南米市場も株価や通貨が急落しており、不安心理の連鎖への懸念も浮上している。26日からカナダで開かれるカナナスキス・サミット(主要国首脳会議)でも、米国を中心に世界の金融市場の動向が重要議題になりそうだ。
最近の米株価急落の底流は複雑だ。最大の要因はハイテク業界を中心とした企業業績の改善の遅れへの懸念。それに加え、巨額の簿外債務の発覚で昨年経営破たんしたエンロン事件からくすぶり続けている企業会計に対する根深い不信や独立記念日(7月4日)が狙われると、うわさされる新たなテロへの不安が絡み合い、「複合的に投資家心理を冷やしている」(大和総研アメリカ)。
企業会計不信は、透明性が売り物だったはずの米国資本主義の基盤を揺るがしている。エンロン倒産以降もダイナジーなど電力各社の売上高水増しと電力価格の操作疑惑の拡大、大手複合企業、タイコ・インターナショナルの会長兼CEO(最高経営責任者)への絵画購入を巡る脱税捜査など、連日報道される企業不祥事に投資家の疑心暗鬼が増幅している。証券アナリストが、自社の投資銀行業務の営業支援のため、顧客企業に有利な投資情報を流し、個人投資家らに損失を与えた疑惑も株不信を強めた。
株安は、米貿易赤字の拡大を材料にドル売り加速の動きと共鳴し合った。21日に一気に1ドル=120円台までつけたドルの急落は、「ドル建て資産からの資金流出懸念」を拡大し、今後、一層の株安を誘発する悪循環も指摘される。
さらに、米景気回復のけん引役となっている個人消費への逆資産効果による悪影響も大きな懸念材料兆だ。米国野村総研の推計によると、最近の株安で4―6月期の株式時価総額は約1720億ドル、名目GDP(国内総生産)の16%分も減少。株価が現在の安値水準を続けた場合、同期の米経済成長率を0・3ポイント」、さらに7―9月期では0・6ポイント押し下げるという。企業のリストラ強化による雇用所得環境の悪化や5月の小売り売上高が低調だったことも「個人消費の腰折れ懸念」を誘っている。
金融当局からも「株価急落が消費者支出の不確実性を高めている」(パリー米サンフランシスコ連銀総裁)との懸念が漏れ始めている。