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「日本の新聞はそこまで詰めないで書く。海外の中央銀行関係者もよく言っているが、まだマチュア(成熟)してない。売らんかなで書かれてしまう」−−。日本銀行の速水優総裁は19日の衆院で、こう苦言を呈した。しかし、真相は、自らの不用意な発言が為替相場を動かしてしまったことに対する八つ当たり、といった方が正確なようだ。
事の発端は、11日の参院で池田幹幸氏(共産)の質問に答え、為替相場について「長年の経験では、今度は円高ではなくドルの全面安だ。1960、70年に米国が双子の赤字になって、ドルが不安定になったときと似ている。米国は今年再び双子の赤字になるだろう。海外でドルを保有している人たちの間でドル安の思惑が強まり、世界的なドル売りが起こることは十分あり得る」と述べたことだ。
これが、日銀総裁がドル安を容認していると受け取られ、為替市場が材料視。塩川正十郎財務相のコペンハーゲンでの不用意な発言と合わせ、最近のドル安円高を加速させたとして、批判を浴びていた。
為替のなかで育ってきた男
19日の衆院では、藤島正之氏(自由)が質問に立ち、総裁の発言を批判。これに対し、速水総裁は「わたしは日銀に戻ってくるまで、日銀に34年間ほどいたが、固定相場の時代からニクソンショックまで、そのほとんどを為替とともに仕事をしてきた。実際の波のなかで育ってきた男だ。為替のことはよく知っているつもりだ」と反発した。
さらに、11日の発言について「その経験から、ドルが弱いのは、株が軟調なこともあるが、経常収支がGDP(国内総生産)比で4%の赤字で、98年に黒字になった財政収支も赤字になり、双子の赤字となって、ドルの弱さが復活してきたと言ったつもりだ。新聞がどう書いたが知らないが、恐らく事情をよく分からずに書いたのかもしれない」と述べた。
これに対し、藤島氏は「マスコミがどう書いたか知らないというのは、無責任極まりない。発言がどう影響するかは大変重要な問題だ。総裁を辞めた後に何を言っても構わないが、来年3月までは誤解を招かないようにしてほしい」と、総裁の姿勢を批判した。
ドル安か、ドル売りか
総裁はここまで追及されて、「どこの新聞とは言わないが、その報道は読んだ。しかし、言ったことと違うことが書いてある。その新聞の編集局長に直接電話をして、『こんなことは書いてない。しかも、(言っていないことを)大きく書くのはおかしい』と抗議した」という裏話を披露した。そこで飛び出したのが、冒頭の発言。海外の新聞は「わたしが説明した円高の背景をちゃんと書いてある」とした後で、「(日本の新聞は)成熟していない」発言に発展した。
確かに、批判された格好の某経済紙を見ると、「世界的なドル売りが起こることは十分あり得る」という速水総裁の発言を伝えた囲み記事の見出しに、「ドル安さらに進む」とある。総裁の不満の種は“ドル売りが起こる”とは言ったが、“ドル安が進む”とは言っていない、ということのようだ。
しかし、いくら“為替の波のなかで育ってきた”と言っても、一国の中央銀行の総裁が「世界的なドル売りが起こることは十分あり得る」といった発言を軽々と口にすれば、憶測を生むのは避けられない。塩川財務相の不規則発言と合わせ、どう抗弁しても、市場にとっては余計な雑音になったことは否定できないだろう。