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グリーンスパン米連邦準備理事会（ＦＲＢ）議長がドル先安説に異例の警戒発言を行ったことで、欧米を巻き込んだ協調介入の思惑が交錯している。発言は、さらなるドル安進行によって米国から資金が流出することに強い懸念を示したと受け止められた。グリーンスパン議長が為替動向に言及することは異例なこと。米国がドル安を自国の問題として受け止め始めたことで、ドル安と株安の連動を遮断するために協調介入の余地が広がった、との思惑を呼んでいる。
しかし、主要国の金利協調が難しい情勢下で、仮に協調介入を行っても短期的な効果しか望めないことや、米中間選挙を控え政治的にドル安是正が難しい環境に変化はないといった見方は根強く、「グリーンスパン発言に協調介入の可能性を読み込むのは、日本の希望的観測だ」（ＪＰモルガン証券調査部長・菅野雅明氏）との否定的な見方が多い。
グリーンスパン議長は１６日の議会証言で、「ドルの先行きは不透明だが、下落に対する過度な解釈には注意を要する必要がある」と警告した。通常ほとんど為替相場に触れないグリーンスパン議長がドル安進行への懸念を言及したことが、市場の関心を集めた。三井住友銀行・市場営業統括部・調査グループグループ長の大中道康浩氏は、「ドル安予測に対する一種の警告であり、裏を返すと非常に心配しているとも言える。ドルがフリーホールで下落するような事態になれば、何らかの政策対応をするという意思を示唆したものではないか」と分析。邦銀関係者も、「ＮＹダウが下げても、ただちに個人消費に影響しないことはデータで明らかだが、さらなるドル安進行によって米国から資金が流出することに強い懸念を示したのではないか。株と為替の連動を切断するための対応を考えなければならないと思い始めているのではないか」と、公的な発言の裏に政策協調の余地をみる。
さらに、ユーロ高による欧州内の軋みを指摘する声もある。ユーロ／ドルは、１５日のロンドン市場で１ユーロ＝１ドルのパリティを回復。１９日の東京市場では一時２年半ぶりの高値水準となる１．０２ドル台までユーロ高が進んだ。パリティ達成時点で欧州当局者はインフレ退治に資するとしてユーロ高を歓迎したが、限界点がある、との指摘も市場では出始めた。
政府筋も、外為市場に協調介入の余地が出てきたとの見方を否定しない。
一方で、直ちに、日・米・欧の協調介入を予測する声はほとんどない。ひとつには、株・債券・ドルのトリプル安になっていないこと。
ＪＰモルガンの菅野氏は、グリーンスパン発言について、「市場心理が一方向に傾いて、アメリカ売りの様相になることを懸念した。しかし、それは為替のレベルではなく、調整速度の問題だ」という。「米国は中間選挙を控え、政治的にドル安是正が難しい環境に変わりない。ユーロ・ドルもパリティを越えたが、まだ５％程度の調整余地があり、よほどドルが急落しなければ、協調介入はない」とみる。
ドイツ証券チーフストラテジスト・水野温氏も、トリプル安にならない限り、米財務省は動かないと分析。「協調介入はいつでも出来るが、持続的な効果をあげるには金利協調がなければ難しい。中間選挙を控える米国としては、日本が単独でドルのフリーフォールを抑えてくれるのが一番ありがたいことだ」とみる。欧州については、「インフレ抑制のためにユーロ高が望ましいと言われる。しかし、これ以上ユーロが強くなることは望んでいないが、為替介入の限界も承知している」という。
みずほ総合研究所チーフエコノミスト・中島厚志氏も、「今の水準で為替介入の連携が出てくるほど大掛かりなものは感じられない」と否定的だ。ユーロ高の限界についても、ユーロ圏経済の回復が外需頼みである点は日本と同じだが、域内の取引が全体の７割を占め、ユーロ高の経済下押し効果は小さい、という。
ただ、中島氏も、「米国がドル安が自分たちの問題と意識し始めているという意味では、変化の兆しと言えるかもしれない」としている。
日本の単独介入を、傍観する欧米通貨当局者。ＮＹダウの下げやドル安が加速した時、欧米通貨当局者のスタンスが変わるかどうかが注目される。
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