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いま再び“ハーディング”(?)現象 (☆☆)
NY株式市場の値動きが非常に荒っぽくなってきた。
今回は、金市場を取り巻く環境(金価格に影響を与えるもの)としてNY株式について見てみよう。
まず、今月に入ってからのNYダウの価格推移を見てみると以下のようになっている。
始値 高値 安値 終値 前日比
7月1日 9239.25 9381.37 9059.88 9109.79 −133.47
7月2日 9104.95 9185.88 8918.11 9007.75 −102.04
7月3日 9006.37 9140.32 8832.89 9054.97 +47.22
7月5日 9061.54 9399.65 9054.97 9379.50 +324.53
7月8日 9375.70 9433.08 9184.90 9274.90 −104.6
7月9日 9273.38 9357.35 9065.88 9096.09 −178.81
7月10日 9098.16 9188.71 8772.94 8813.50 −282.59
7月11日 8812.12 8937.87 8557.84 8801.53 −11.97
7月12日 8805.33 8903.00 8555.15 8684.53 −117
7月15日 8681.28 8720.18 8220.78 8639.19 −45.34
7月16日 8635.31 8697.69 8346.29 8473.11 −166.08
7月17日 8476.21 8765.39 8401.12 8542.48 +69.37
7月18日 8540.47 8621.95 8404.43 8409.49 −132.99
今朝方終わった18日の取引は、ご覧のように8500j割れとなり、終値ベースで同時多発テロ後の安値である昨年9月21日の8235.80jに迫り、年初来の安値となっている。すでにテロ後の安値を下回っているナスダック総合指数やS&P500種など主要指数も更に安値を更新する雲行きである。
さて冒頭で書いた値動きの荒さであるが、5日の前日比324.53j高が今年最大の上げ幅となったのを手始めに、一時前日比で450j以上売り込まれたあと、終値では45.34j安まで戻した15日の取引など、振幅が非常に大きくなっている。ちなみに1日の高安でみると13営業日中9日間が300j以上の振幅となる荒れ様である。海外メディアでは、こうしたNY市場の様子を「バンジージャンプ相場」として伝えている。筆者などそういう記事を読むと、うまい表現だと思わず感心してしまったりするのである。
これほど値動きの荒いNY市場であるが、注目すべきは出来高(取引高)のほうも膨らんでいる点である。破綻寸前で株価の安くなったワールドコムなど大型銘柄の取引高急増ということもあるが、おしなべて15〜25億株という“大商い”が続いているのである。じつは、これほど値動きが荒くなり、しかも出来高が伴っている状況は、株価の天井圏あるいは大底圏でよく見られるパターンでもある。事実そうしたことから、海外の株式関係のアナリストの間では「NY株式は底打ち」との見方も増えている。
それでは、なぜ、こうした現象が見られるのか。はたして、底打ち間近なのか。
そこでまず確認であるが、ここまで一連の株安状態をもたらしている大きな背景が、エンロンに端を発する不正会計の問題であるのは言うまでもないだろう。ところが流れを見ていると政府筋も含めて市場参加者は、この問題はゆゆしき問題ではあるが、ここまで広がりと市場センチメント(投資家心理)に影響を及ぼすとは考えていなかったのでは、と思わせる節がある。当初は一定の時間が経過するまでと我慢の姿勢でいた個人投資家も、さすがに不安になってきた(これまで何があっても静かに待てば株価は回復したし、テロの時だってそうだった)。いづれにしても、まず個人投資家の見送り姿勢が高まり、そして売りに転じた。そして株価の下げが拡大する中で、株式投信の解約が始まり、それにともなった換金売りが増える。もちろん、見切りをつけた海外の投資家の売りも入ってくる。そうこうするうちに、結局、市場は限られた人々によるものとなってしまった。端的には、機関投資家を中心とした売買の場になっているのである。
市場参加者が、いわば専門家に絞られた結果、特有の値動き(現象)が見られるようになったのである。以前(2001年5月31日配信号)取り上げた「ハーディング(群集行動)」がそれだ。取引主体が特定の集団に限られたことで、投資家の行動パターンも似通ったものとなっているのである。これは拠り所となっている「投資理論」が似ているため、ある一定限度の値下がり、あるいは値上がりとなると、自動的に売買の指示が発動されることによる。そうすると、リスク管理上、同じ行動パターンを次々と巻き起こすことになり、ますます流れを加速させ、結果的に値動きを荒くするというわけだ(そしてそれがまた次の行動を呼び起こす)。まさに「群集行動」である。したがって、このパターンで出来高が盛り上がり、かつ、値動きが荒いからといって、底打ち近しとの判断は時期尚早ではないかと思うのである。結局は90年代金融の時代に築き上げられた投資理論がつくった現象であって、いわば“恐怖におののいた見切り売り”などどいうものではなく、そうした面からも「セリング・クライマックス」とは趣を異にした動きのように思われる。
この中で、金価格はレンジ取引の上限(310j台上方)で推移している。
はたして、日本時間今夜のNY市場はどうなるか。ダウもついにテロ後の安値を下回るのではないだろうか。(7月19日)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎