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地銀が危ない！？ 「寄らば大樹」と大手銀行にシフトし、第２地方銀行や信金、信組など中小金融機関からの預金流出が止まらない。普通預金の全額保護を打ち切る来年４月からのペイオフ全面解禁を前に、預金者の自己責任による「選別の目」が厳しくなっており、“弱者連合”など再編・淘汰（とうた）に拍車がかかる。ここにきて、完全解禁の再凍結論も浮上するなど、危機感は高まっている。
「（中小も含めて金融機関は）今は安全な状況にある。この点は信頼していただいてよい」
破綻（はたん）時の払い戻し保証額を元本１０００万円と利息までとする定期預金のペイオフが解禁された４月１日、柳沢伯夫金融担当相は、こう言って自信を示した。
だが、不景気とデフレ進行のなか、株価低迷とドロ沼の不良債権処理に追われ、４月以降も、大手銀に加え、中小金融機関を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。
全国銀行協会の集計によると、５月末の都市銀行の預金は１年前に比べて、１７兆２０００億円（８．２％）も増加した。
地方銀行は１兆５０００億円（０．９％）の微増だが、第２地銀は前年比１兆１０００億円（２．０％）減。前月末比でも３２２１億円（０．６％）も減らし、都市銀行への預金シフトの流れは鮮明になっているのだ。
経営不安を抱える中小金融機関にとって、預金の流出は深刻。昨年１２月に破綻した石川銀行（石川県）や、今年３月に破綻した中部銀行（静岡県）でも、預金流出による資金繰り悪化がトドメとなっている。
そして今後、大きな問題となってくるのが、中小企業や地方自治体の預金の“行き先”だ。
「地銀や第２地銀では、この４月はペイオフを懸念する顧客に対し、定期預金から全額保護の普通預金へ移し替えてもらうことで何とかしのいだが、全面解禁に備え、より健全な金融機関にシフトさせてくるだろう」（金融担当アナリスト）
東京都はすでに公金の運用先に独自の格付けを導入したが、他の自治体や企業も同様の自衛措置を取る可能性が高い。
となると、預金者の選択の目安となるのが、損益や自己資本比率など財務データである。
ところが、平成１４年３月期決算では、全国の地銀６４行、第２地銀５４行のうち、３割以上が最終赤字に転落し、不良債権処理に伴う損失も拡大している。
このうち、第２地方銀行協会が１４日発表した同決算では、最終損益は合計１８５９億円の赤字となり、最終赤字は２１行にのぼった。
また、剰余金がマイナスで配当原資が底をついた銀行も少なくない。健全性を示す自己資本比率も、３０行近くが８％を割り込んでいる。
単独での財務健全化が難しく、最悪の場合は“ペイオフ発動第１号”になりかねない金融機関に残されたサバイバル手段として、各地で再編の動きが加速している。
今年４月には、福岡県２位の地銀の西日本銀行と、第２地銀の福岡シティ銀行が来春をメドに経営統合すると発表。３月には茨城県の関東銀行とつくば銀行が合併を発表。北海道や広島、長崎でも再編が進んでいる。
都内では、地銀の東京都民銀行、第２地銀の東京スター銀行、八千代銀行、東日本銀行、わかしお銀行と５行がしのぎを削り、再編に向けた動きが注目されている。
金融庁も税制優遇を柱とした金融機関の合併を促進する法案を秋にも提出することを検討するなど、再編の旗振り役となっている。
一方で、「弱者連合では結局、生き残りは難しい」（前出のアナリスト）との指摘も根強い。
全国信用金庫協会がすでに、ペイオフ全面解禁の延期を金融庁に要請する方向で検討に入っているが、第２地方銀行協会も延期の是非を議論する姿勢を見せている。
政府は平成１１年にペイオフ解禁を延期しているだけに、今回は予定通り全面解禁するとの方針を強調し、預金保護の上限額も「現時点で引き上げる理由はない」との姿勢を崩していない。
金融機関を取り巻く環境は厳しく、「寄らば大樹」と預金が流入している大手銀自体も、２７兆円以上の不良債権残高を抱え、体力低下で経営基盤は脆弱（ぜいじゃく）である。地銀６４行全体の不良債権残高も約１０兆７８００億円に上っている。
政府の景気底入れ宣言や、ＧＤＰ（国内総生産）のプラス成長見通しに実感はまったくない。米国経済の景気回復の遅れや株価急落などを契機に、預金の大量引き上げが起きれば、３月危機の再現ともなりかねない。
地銀、第２地銀にとって、来春までが最大の正念場となりそうだ。
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