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柳澤金融担当大臣の発言からマスコミ報道され、話題となった銀行の株式窓販解禁ですが、実現するのは難しい状況のようです。その理由とは?
一部マスコミにより、政府では柳澤金融担当大臣、自民党では相沢デフレ対策特命委員長から、証券市場への個人マネー流入を拡大させるために、銀行に株式窓販を解禁することについて検討を進めるといった報道がなされています。現在、預貯金は銀行や郵便局、株式は証券会社、保険は保険会社というように業態別に販売体が分かれていますが、株式の販売体を銀行にも拡大することにより証券市場に個人マネーが多く入ってくる可能性が高くなるのではないかといった考えからのようです。本年10月から銀行本体による販売対象の保険商品が拡大されることに加えて、今回の議論の進展によっては従来の業態別規制が大幅に見直される可能性も出てきました。
しかし、当事者である銀行界は株式窓販解禁に対して目立った反応を示していないような状況ですが、その理由等について少し考えてみたいと思います。
■ 銀行本体による公募型投資信託の窓販の浸透と依然として進まないETF窓販
平成13年中における投資信託の販売体別残高(金額ベース)では、銀行本体の窓販分が全体の21.6%を占めるなど、投資信託の銀行窓販については消費者の間で次第に浸透しつつあります。
しかしながら、本年4月から認められることになったETFの窓販については、解禁後約2ヶ月半を経過した現在、いまだ一行も開始した銀行はありません。これはETFが株式と同様に証券市場において刻々変化する時価により取引される金融商品であり、銀行においてそれに対応するシステム投資や配置人員や従業員教育に係るコストからなかなか踏み切れないためであると考えられます。銀行本体による株式窓販が解禁されるとしても、それに必要とされるコストはさらに大きくなると予想されます。
また、主要な都市銀行については、自らのグループ内に既に証券子会社(株式のブローキング業務は完全に解禁されています)が存在しており、新たに証券業務を行うことが二重投資になります。
銀行界から積極的に株式窓販を解禁すべきといった声が出ないのはこのような理由からではないでしょうか。
■ 銀行顧客に証券投資ルートを開拓するなら店舗共用の規制緩和が現実的では?
銀行本体で証券業務を行うことが現実的でないならば、同グループ内の証券子会社と店舗を共用して営業すれば、システム投資や従業員に係るコストが節約できるのではないかと考えられます。しかし、現行規制(金融庁のガイドライン)では、銀行が証券会社と店舗を共用する場合には、顧客の誤解防止や情報遮断といった観点から、それぞれのブース等の間における物理的な壁や仕切りの設置や、それぞれ別々の出入口を設けるといった規制が存在しています。このような店舗の改築コスト等が数百万円から場合によって数千万円にまでにのぼるため、銀行が証券子会社と店舗を共用して証券業務を展開することに二の足を踏んでいるのが実情です。それならば、銀行と証券会社の間に物理的な障壁を設置する過剰な現行規制を緩和すれば問題は解決するはずです。
なお、上述の規制は金融庁のガイドラインを変更すれば緩和可能であり、法律改正における(業界エゴが錯綜する)与党内の事前審査や(スキャンダルや与野党間の闘争により遅々として進まない)国会審議等の時間や障害の多い手続きを経る必要はないと考えられます。(銀行顧客にも証券投資ルートを拓くといった販売チャネル拡大策としてより実現が容易な方法があるにも関わらず、政府・与党の政策担当者等の方法論には疑問を感じざるを得ません。)
また、銀行にも証券業務を解禁するということで販売チャネルを拡大することが証券市場の活性化に繋がるといった考えはいかにも短絡的であり、政策担当者はむしろ証券税制の抜本的な見直しや違法な証券取引の排除といった政策に重点を置くべきではないでしょうか?
阿波一行
提供:株式会社FP総研