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ソフトバンクはヤフー株の売却に続き、あおぞら銀行株の売却も検討中。金融庁はこの売却に反対姿勢を示していますが、売却を望むソフトバンクは一体どう対処する?
平成14年6月13日の日本経済新聞3面には、ソフトバンク孫正義社長が平成14年6月12日の衆院財務金融委員会において、ソフトバンクが保有しているあおぞら銀行の株式について売却の検討を始めたことを表明したのに対して、金融庁は出資後2年足らずの売却話に難色を示すとともに、売却を認める場合も長期保有先に限定し買い手として名乗りを上げている投資ファンドには認めないとしているため、両者の調整は難航しそうであると伝えている。
平成12年9月1日に特別公的管理を終了した旧日本債券信用銀行が、平成13年1月4日よりソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険などの出資を得て、あおぞら銀行として再出発して1年6ヶ月が経過している。3社の出資比率は、それぞれ48.87%、14.99%、14.99%で、当時ソフトバンクは約490億円を出資し、「ネット関連ベンチャー企業育成の担い手としてあおぞら銀行を生かしたい」(孫社長)と熱く語っていた。舌の根の乾かぬうちの話は、今回のあおぞら銀行売却話だけでなく、ナスダック・ジャパン株式会社売却話も同様に起きており、ソフトバンクグループの台所事情が相当厳しいことの一端を窺うことができる。
あおぞら銀行ができた当初、社債償還や銀行借入返済などで資金繰り問題を抱えているソフトバンクに銀行の資金が還流するのではないかという「機関銀行化」説(あおぞら銀行がソフトバンクグループの資金源となる)も一部論じられたが、オリックスや東京海上火災保険などの経営参画が歯止めとなることと、昨年11月に銀行法が改正され法律的にも機関銀行化は道が閉ざされることとなったため、機関銀行説は消えた。
すなわち、異業種からの銀行業への新規参入に伴い、銀行の健全且つ適切な経営を確保するためとして、銀行の発行株式総数の原則20%以上所有する株主を「銀行主要株主」として、財務面の健全性、株式所有の目的、社会的信用などの基づいてその適格性が判断される。そして、その判断の必要限度において「銀行主要株主」に対して財務状況に関する報告書を求めたり立入検査を行うことができるとしている。つまり、この銀行法改正により金融庁によるソフトバンクへの立入検査の可能性を開き、ソフトバンクの財務状況の悪化が進むことになれば、ソフトバンクに金融庁のメスが入ることになるのである。
孫社長は、今回のあおぞら銀行の売却検討理由について、今年4月の銀行法改正で事業会社が銀行の株式を20%以上保有する場合には改めて認可が必要になることを上げているが、この銀行法改正は昨年3月に国会に提出され11月に成立したものであり、その間改正内容はソフトバンクも知ることができたわけであり、今回の売却検討理由にはあたらないと考える。また、あおぞら銀行をソフトバンクの資金源として活用する道が閉ざされただけでなく金融庁の立入検査を受けてはたまらないという理由で今回の売却を検討して訳でもないだろうから、やはりソフトバンクの財務状態が原因と見るべきであろう。
したがって、ソフトバンクは少しでも高く買ってくれれば、外資の投資ファンドでも売却したいと考えているのであろうが(現在のところ、あおぞら銀行の11.52%を保有しているサーベラスが有力)、金融庁は絶対反対の姿勢である。金融庁としてはオリックスや東京海上火災保険などへ売却をするよう促しているようであるが、オリックスも東京海上火災保険もあと0.01%株式保有率を上げるとあおぞら銀行が自社の連結決算の対象となってしまうため、これ以上の買い増しは難しいのではないかと思われる。いずれにしても金融庁とソフトバンクとの熱い戦いが続きそうであるが、「窮鼠猫を噛む」で決着しそうな予感があるのは私だけであろうか。
経済コラムニスト 河井 蒼佑
提供:株式会社FP総研