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【政局の焦点】
●「非核発言」「リスト問題」は“オウンゴール”
サッカー・ワールドカップ(W杯)での日本代表の快進撃に国中が沸いている中、今国会の42日間延長が固まった。延長しても有事法制関連法案や個人情報保護法案などの重要法案の成立は絶望的なため、「こんなケチのついた国会は一度閉じるべきだ」(橋本龍太郎元首相)との意見も自民党内には渦巻く中での決断だ。もし、この上、小泉純一郎首相が最も力を入れる郵政改革関連法案や健康保険法改正案が不成立の事態にでもなれば、この内閣は瓦解する。
それにしても小泉首相にはまだツキが残っていたようだ。なぜなら、福田康夫官房長官の「非核3原則発言」や中谷元・防衛庁長官の「リスト問題」はいわば“オウンゴール”で、従来なら引責辞任にまで発展しかねない大問題。しかし、国挙げてのW杯フィーバーで国民の関心がそちらに奪われ、さほど深刻な事態にはならなかった。
加えて、鈴木宗男衆院議員に関する国会の逮捕許諾請求は審議をボイコットしている野党各党が立ち上がるきっかけとなる。このまま野党が審議拒否を続けた場合、会期延長も与党単独議決となり、野党が国会に戻るタイミングがさらに遠のいた。そうなれば郵政関連法案や健保法案も与党単独採決との異常事態となり、最悪の場合、衆院解散にまで発展する可能性も決して否定できなかった。そういうことを考え合わせると、「W杯と鈴木宗男氏が小泉政権を救った」との皮肉な見方も成り立つ。
●何とかならないか、首相のW杯コメント
W杯の政治、経済に与える効果は予想以上だったようだ。各研究所がW杯の経済効果について試算しているが、直接的経済効果で4000億円とGDPを0.1%押し上げる効果があるとされ、中には日本がベスト8まで勝ち上がれば何と3兆8000億円の景気への影響があるとする計算もある。恐らく何かモノが売れる直接的な経済効果というより、閉塞感が強い日本の現状を打ち破る心理的影響が大きいのだろう。何より選手やサポーターが一緒になって日本チームを応援し、国民の心が一つになるということが素晴らしい。現在、各競技場にあふれているいわば「健全なナショナリズム」が、「天皇制」云々とか「戦前への回帰」がどうのこうのといった議論や杞憂を吹き飛ばしている。そういえば、試合前、選手たちが国歌をきちんと歌っていないチームは往々にして弱いことにお気付きだろうか。
それにしても小泉首相の日本戦終了後のコメントは何とかならないものか。「感動した」だけではまるで子供の感想だ。世界中の指導者はW杯を国威発揚の場ととらえ、もうちょっとマシな発言をしている。政治家はすぐれた言論人でもなければならない。小泉首相はもっと言霊(ことだま)を大切にして欲しい。
●鈴木氏逮捕は「別件」の可能性はないのか
鈴木宗男議員の製材会社「やまりん」をめぐるあっせん収賄容疑で、衆院に提出される予定の逮捕許諾請求は恐らく「全会一致」で許可され、短時日に同議員に対する逮捕状が執行されるのだろう。ただ報道を見る限り、今回の逮捕容疑がよく分からない。例えば、読売新聞(16日付)によると、「東京地検特捜部では、同議員側が1998年12月末、同社幹部から受け取った500万円のうち400万円を返却した行為について、『鈴木議員が資金の違法性を認識していたことを示す行為』と見ており、わいろ性は十分立証できると判断した」とあるが、献金の事実が報道された後、返却することはままあることだ(なぜ返却額が400万円なのかは分からないが)。同議員も返却後、翌1999年9月に政治資金収支報告書の記載を訂正している。
そこにわいろ性があったかどうか、官房副長官としての職務権限がどう認定されているのかなど検察側の主張には恐らく理由があるのだろう。しかし誤解を恐れずに言えば、返却の事実があり、肝心の「あっせん」も成立しておらず、さらに議員本人も事情聴取に応じたにもかかわらず、国会開会中にわざわざ逮捕許諾請求をしてまで現職議員の逮捕に踏み切る必要があるのだろうか。これが今後すべての議員に公平に適用されるというのなら、今、首筋が寒くなっている議員は何人もいよう。
本来、鈴木議員の最大の「疑惑」とは北方支援事業に対する不当な圧力ということではなかったか。こうした本筋には触れず、別の理由で身柄拘束することは通常「別件逮捕」と呼ばれる。仮に鈴木議員が「天下の大悪人」だから何でも許されることを期待してのことであれば、検察当局は重大な過失を犯すことにもつながりかねない。
●内閣支持率、ついにターニングポイント下回る
大手マスコミの中で最も歴史が古く、調査方法も最も手堅いとされている時事通信の6月の世論調査結果がこのほど発表された。これによると、内閣支持率は前回よりさらに3.6ポイント減の34.0%と続落した。中曽根康弘元首相によると、内閣支持率のターニングポイントは35%。これ以上、下がると「反転攻勢は難しい」(中曽根氏)という。
これに対し、不支持率は2.4ポイント増の45.2%。小泉首相を「信頼する」という人も減り続けており、今回は9.7%と初めて1ケタ台に。逆に不支持の理由は「期待が持てない」が4.1ポイントも上昇して29.5%。「政策がだめ」(13.5%)、「リーダーシップがない」(12.1%)もそれぞれ増加し、首相の人気下落が数字上もはっきり確認された。
普通の内閣なら支持率が30%を超えていればまずまず安全圏内だが、小泉政権の場合、いきなり70〜80%台からスタートしており、しかも今年1月までの9カ月間はまがりなりにもこれを維持してきただけに、ここ数カ月間のちょう落ぶりは特筆に値しよう。何度も言うが、第1に、まずできるところから手を付け、早く成果を示すこと。第2に、いつまでも意地ばかり張らず、妥協すべきところは妥協して、1歩でも半歩でも自分が掲げる目標に近付くことだ。最初から100点満点の政治などありはしない。第3に、小泉首相は目標を自らの言葉で国民に分かりやすく説明すべきだ。国民に理解されないことを記者のせいにするようでは、小泉政権もやがて森前政権の轍(てつ)を踏むであろうことを思い知るべきであろう。
●天につばする村田元駐米大使
中国・瀋陽の日本総領事館における朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)住民の亡命事件については、その後、北京の韓国大使館で起きた同様の事件との対比などいささかの感慨がないではないが、もうこれ以上この件で日本外務省を批判することはしない。原因も改善点も分かっているのだから、後は実行あるのみである。ただ、この事件直後、村田良平元駐米大使が自民党本部などで講演し、「日本の外交は事なかれ主義になり過ぎている」「日中国交正常化以来、日本の姿勢はあまりにも弱腰」「中国の主張に唯々諾々と応じてきた」と、外務省を批判しているのはいただけない。ご自分も同省トップの事務次官を務めただけでなく、外務審議官として中国との折衝の最前線に立ったことを最早お忘れなのではないか。
村田氏は事務次官の時に「大使は1人で3カ所以上させない」と言明しておきながら、自分では駐米大使の後、異例なことに初代統一ドイツ大使まで務めるなど4カ所の大使を歴任したことでも有名。敢えてこれ以上、現職時代の細かいことには触れないが、少なくとも他人事のように現役を批判することはお止めになった方が身の為だ。
(政治アナリスト 北 光一)