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http://www.mri.co.jp/TODAY/KASADA/2002/0607KN.html
日米シンクタンク事情
コメンテータ
ワシントン駐在員事務所 所長 笠田伸樹
5月8日付のワシントンポスト紙に「Thanks to Two Think Tanks」という見出しの社説が掲載された。
保守系シンクタンクの代表格ヘリテージ財団とリバタリアン思想に立脚した自由市場経済研究が専門のCATO研究所の創設に関わった二人の人物の功績を称えるセレモニーが行われるにあたり、これまで両シンクタンクが米国の政策立案に果たしてきた実績に対して謝意を表したものであった。
米国を代表する新聞社が紙面を割いてシンクタンクに対する感謝の意を表すことに驚くと同時に、米国の政策形成過程のなかで、いかにシンクタンクの存在が大きいかを改めて認識させられた。
シンクタンクは一般的には頭脳集団と訳されるが、日本では主に民間の調査研究機関を指すのに対し、米国でシンクタンクとは企業、団体、個人の寄付金によって運営されている政策提言をおこなう非営利団体を指す。
米国では法案の多くを議会が策定しており、そのために上下院とも膨大な議員スタッフを抱え、彼等が立法府の政策立案機能に貢献している。そして非営利団体という立場から、客観的な政策分析と提言をおこない、その政策決定プロセスに影響を与えているのが米国シンクタンクでなのである。
ワシントンD.C.だけでも約100のシンクタンクがあるといわれているが、彼等は常に競争と外部からの評価に晒されている。常にタイムリーな政策、アイディアを出し続け、存在感を示すことがシンクタンクそして各スタッフに求められている。(これができないと組織的には寄付金が集まらない、スタッフにとっては※リボルビングドアーに入れないことになる。)そのために彼等がやっているのは、あらゆる手段を利用した情報発信である。筆者の元にも毎日のように複数のシンクタンクから電子メール、FAX等でイベント、フォーラムの案内が届くが、それに留まらず新聞・雑誌への寄稿、テレビ・ラジオへの出演、出版等を通じて最大限のPR活動をおこなっている。彼等にとって政策は「商品」なのである。
翻って日本では、政策形成過程に関与するのは殆どが行政府(いわゆる官僚機構)であり、これまで日本のシンクタンクは情報産業的な側面が強かった。
しかし、日本が再び活力を取り戻すために政治・経済・社会システムの変革が急がれてるいま、外部からも多様な政策、アイディア提供を行ない、オープンな議論を経て新しいパラダイムを構築することが健全な民主主義を発展させ、21世紀の”この国のかたち”を創ることになる。
そのためは議院内閣制と大統領制という日米の政治制度の違いを踏まえたうえで、米国シンクタンクのような機能と役割を日本のシンクタンクのなかにもビルトインすることが必要と考える。
※リボルビングドア−(回転ドア)
新政権が発足する際、大統領が行政府の要職に自ら選んだ人物を任命できる制度を政治任命(political appointee)と呼ぶが、この政治任命制度によって政府と民間の間を行ったり来たりすること。
米国のシンクタンクには前政権の要職にあった人、次期政権で要職に就くことを虎視眈々と狙っている人が多数いる。