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アルゼンチンで州政府が発行する州債を通貨代わりに使用する「準通貨」が急増している。経済危機による税収不足などで生じた財政赤字を補うために発行したものだ。国際通貨基金(IMF)は、通貨・金融政策に一貫性を欠くと反対しているが、通貨流通量に対する州債の割合はすでに過去最高規模に達している。乱発される“通貨”は、各州で超インフレを誘発し、社会不安を拡大させる起爆剤にもなりかねない。(アルゼンチン中北部コルドバ、本間 圭一)
同国第2の都市コルドバ。通貨として流通するのは州債「レコール」だ。年率7%の利子で3年満期で償還される債券で、商店で受け取るつり銭はペソよりもレコールが多く、両替所の看板にもレコールの文字が目立つ。同州でレコールが発行されたのは昨年10月末から。既に約5億3000万ペソに相当するレコールが市中に出回り、州内の通貨流通量の3割に達している。
レコールのように“通貨”として使用される債券は現在、全国で1国債と12州債の13種類に上る。昨年7月までに州債は全国23州のうち3州だけで、通貨流通量の5%に過ぎなかった。
しかし、今年4月までに発行総額は約50億ペソ分に達した。すでに通貨流通量の30%に上っており、有力紙クラリンのクロディア・マルティネス編集委員は「アルゼンチンでは、州債が通貨として流通した歴史を持つが、これだけの流通量はかつてなかった」と指摘する。
背景には、連邦政府と州政府の財政が悪化している事情がある。経済危機から企業の生産活動が悪化している同国では、税収が落ち込み、ブエノスアイレス州の場合、今年第1・四半期(1―3月)の税収は前年同期比で約3割下落。さらに、IMFが連邦政府に歳出削減を要求、地方交付金の月額は今年に入り、昨年当初に比べ3割前後減額された。州政府は苦肉の策として、州債で職員の給与を払い、コルドバ州では給与の8割がレコールだ。
コルドバで花店を経営する日系二世のホルヘ・ウエハラ氏(47)。店内には、レコールの受け取りを「5割」と書かれた張り紙があるが、実際には支払いの約7割がレコールだ。発行当初は、1ペソ=1レコールで取引されたが、最近ではレコールの価値は1―2割下落。ウエハラ氏は「レコールが増え続ければ、いつ紙切れになるか分からない」と不安をこぼす。
通貨事情に詳しいブラジル・サンパウロ大のマノエル・ガルシア教授(国際経済学)は「債券通貨は正当な裏付けがなく、連邦政府が州債の回収を怠れば、インフレによる社会不安が生じかねない。州債は政情不安を呼ぶ時限爆弾だ」と警告する。
コルドバ州ではすでに、レコールの下落に反対する住民運動が起こっている。7月に州債・パタコンの償還期限を迎えるブエノスアイレス州では、ペソでの払い戻しを行えず、別種の州債で払い戻されるとの報道が流れ、住民の抗議行動が高まっている。
(6月12日22:08)