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スタンダード&プアーズは本日、「金融システム健全化策の評価――アジア諸国の事例からみた日本の課題」と題するリポートを発表し、日本の金融システムは他のアジア諸国に比べ、1997年の金融危機からの回復が遅れているとの見解を示した。韓国の金融システムが安定化しつつあり、マレーシアでもそれに次ぐ回復が見られるのとは対照的に、日本の金融システムは多額の不良債権にあえぎ、邦銀の資本は潜在的な処理費用に対し脆弱である。
日本では政策自体が中途半端な上、政府は世論の顔色をみながら政策を小出しにしてきた。金融システム安定化に向けて1998年以降、約10兆円の公的資金注入がなされたが、銀行の財務内容は依然として弱く、自己資本を毀損する状況が続いている。日本の金融システムの回復が遅れている要因として、デフレや景気悪化を指摘する声が多いが、政策の一貫性や実行力にも、改善すべき点があると言えよう。
こうした状況下、日本の銀行業界の信用力改善は期待できず、むしろ一段と悪化する可能性があることから、スタンダード&プアーズは大手邦銀の格付けに対するアウトルックを引き続き「ネガティブ」としている。金融システム再生のカギとなる要因として、金融、事業会社の両部門でのコーポレート・ガバナンスの強化と収益力改善が挙げられる。整理回収機構や株式取得機構の機能拡大はプラスではあるものの、銀行が財務内容の改善を迫られない限り、そうした機能が完全に活用されるとは考えにくい。 実際、大手邦銀には、最近の統合の流れの中で、「大きすぎて潰せない」との意識の下、モラルハザードが蔓延している。
日本と韓国の銀行の間には、経営面で明確な違いがある。韓国では外資の持ち株比率の上昇(20−30%程度から50−60%へ)に伴い、コーポレート・ガバナンスが強化され、取締役の半数を社外取締役とし、大財閥から招聘しないことが義務づけられた。さらに、金融危機と銀行国有化に伴い、銀行の経営陣がほとんど入れ替えられた。こうした組織変更が銀行のリスク管理改革、法人向け事業からリテール向け事業への転換、収益力の改善につながった。一方日本では、社外取締役や報酬委員会などコーポレート・ガバナンスを補完する仕組みが導入され、情報開示にも進展が見られるが、多額の株式持ち合い、物言わぬ株主、規制当局の温情的なアプローチなどが、引き続きコーポレート・ガバナンスの改善を妨げている。