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内閣府が７日発表した今年１−３月期のＧＤＰ（国内総生産）は、前期比１．４％増、年率換算で５．７％増となり、昨年１−３月期以来１年ぶりのプラス成長を記録した。政府が出した「景気底入れ宣言」を裏付けた形だが、失業、倒産、賃下げにあえぐサラリーマンの実感とはあまりにもかけ離れている。しかも、統計としての信頼性に大問題があり、実感どころか、景気の実態とも大きくかけ離れているのが実情なのだ。
プラス成長の最大の要因は、個人消費と輸出の増加。ＧＤＰの約６割を占める個人消費は前期比１．６％増を記録。輸出も同６．４％増となり、外需だけでＧＤＰを前期比で０．７ポイントも押し上げた。一方で、足を引っ張ったのが設備投資で、同３．２％減と大きく落ち込んだ。
民間シンクタンクによる事前予想は、年率で８−１０％台のバブル時代に匹敵する高成長が大半を占めていたが、それに比べると低めの数字となった。これは、５日に発表されたＧＤＰの設備投資を算出する際の基礎データとなる法人企業統計の設備投資が１６．８％減と予想を超える落ち込みとなったためだ。
バブル並みという仰天数字にはならなかったが、政府は「５月の月例経済報告で出した景気底入れ宣言が確認された」との自信を深めている。
これに対し、民間エコノミストの見方ははるかにシビアだ。
「景気が底入れしたことは間違いないが、実態は数字が示すよりもはるかに悪い」（櫨浩一・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト）
「何かショックが加わると一気にしぼんでしまいかねないくらい景気の基調は弱い」（霧島和孝・住友生命総合研究所上席主任研究員）
景気がドンドン悪くなるという最悪期は何とか脱しただけ。それも、生産を絞り込んだ結果、在庫が減り、おかげで再び生産が上向いたという単なる景気循環と、米国やアジアの景気回復で輸出が増えたという他力本願に過ぎないのだ。
こうした官民の景気認識のズレの根底にあるのが、これまでも度々指摘されてきたＧＤＰ統計の信頼性の問題だ。
今回の問題点は、プラス成長の牽引（けんいん）役となった個人消費だ。「実態は底ばい」との見方が圧倒的なのに、統計では高い伸びを記録した。
ＧＤＰ統計の個人消費は、総務省が毎月発表している家計調査を基礎データとして推計されている。家計調査は、全国約４６００万世帯のうち、約８０００の複数世帯と約７００の単身者世帯を対象にしたアンケート調査。家計調査では１−３月期の消費支出は前期比１．７％増となっており、当然、ＧＤＰの個人消費も大幅増となったわけだ。
なぜ、実態とかい離してしまうのか。内閣府関係者が明かす。
「かつてはＧＤＰの個人消費には、単身世帯の消費を反映させていなかったが、高額商品の購入などは単身世帯が中心で、現在の消費実態とかい離しているとの批判が出てきた。そこで、単身世帯の消費も反映させるようにした。ところが、家計調査の単身世帯の消費支出は、サンプル数が少なすぎる上、調査対象者が支出内容をきちんと把握していないなどの問題があり、月ごとに大きくぶれる傾向にある。結果として、ＧＤＰの個人消費にもブレが生じるようになってしまった」
信頼性を高めようとして、裏目に出てしまったというわけだ。
内閣府も信頼性に乏しいことを自覚しており、次回の４−６月期から個人消費の推計方法を見直すという。お金を使う側の家計調査だけでなく、メーカーや小売りなど供給側の統計も反映させるというものだが、これでは自ら「今回の１−３月期はデタラメ」と認めているようなものだ。
前出の櫨氏は「政府は新たなデフレ対策を策定しようとしているが、ＧＤＰはその判断基準となる。信頼性の乏しい統計では、政策判断を誤らせることになりかねない。さらに、為替や株価などの相場形成をゆがめてしまうことにもなる」と警告する。
政府の“大本営発表”など信用すると、ろくなことにならないのは言うまでもないだろう。
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