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アルゼンチンの経済危機が一向に収まりそうにない。物価高騰と雇用不安で、貧困層が国民の半数程度に膨れ上がったといわれる。ドゥアルデ大統領の経済政策には市民の批判が集まり、労組の反政府デモも繰り返されている。大統領の辞任を求める声は強いが、有力後継候補のいない主要政党の思惑から政権はかろうじて延命しているのが実情だ。(ブエノスアイレスで 本間 圭一)
◆貧困層◆
ブエノスアイレス有数の繁華街、フロリダ通り。差し出した小箱をのぞくと、コインが3枚だけだった。
「毎日、新聞を読んで仕事を探した。まさか自分がこんな姿になるとは――」
四女、アントニラちゃん(2)を抱きながら、ルベン・フラメンゴさん(28)は苦渋の表情を浮かべた。建築業の仕事を今年2月に解雇されて以来、職が見つからない。物ごいをして、1日に8ペソ(約300円)程度をかせぐ。妻と5人の子供のため、食堂の残飯もあさる。
今年1月の通貨切り下げ以降も輸出は伸びず、預金凍結措置の継続で金融不安が続く。今年1―4月の消費者物価上昇率は、政府予測を大幅に上回る21%に達し、失業率も25%の高率だ。ある調査によると、ブエノスアイレス州では4月、1か月150ペソ(約5500円)以下で生活する人の割合が、半年前に比べて10ポイント以上も増え、全体の48・9%に達した。フラメンゴさんは「大統領には何も期待しない」と息巻いた。
◆反政府運動◆
ドゥアルデ大統領を支えてきた労組も反旗を翻し始めた。主要労組は先月22、29の両日、全国規模のゼネストを呼びかけ、全国各地でストに呼応した反政府デモが起こった。
労組の怒りは、政権の国際通貨基金(IMF)との協調路線に向けられる。大統領は4月、ペソ下落回避のため、固定相場制の導入に傾いたが、融資元であるIMFの主張を受け入れ、変動相場制を維持した。しかし、ペソは今月4日までに1ドル=3・6ペソ台まで急落し、国民の資産の目減りは続いている。
有力紙ラナシオンが発表した世論調査によると、7割以上が大統領を支持しないと答え、5割近くが大統領選前倒しを求めている。
◆党利党略◆
政権批判が最高潮に達する中、大統領選を行えば、大統領与党の正義党の敗北は必至の情勢だ。連立相手の急進党も、経済危機を表面化させたデラルア政権時代に国民の信任を失い、有力な大統領候補は不在だ。次期大統領選の候補者支持率では、両党に属さない新党代表のエリサ・カリオ下院議員が、今のところ抜群の人気を誇っている。