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「最近、財務省関係者から“ファンダメンタルズ”という言葉が聞かれなくなった」(銀行系証券)―。金融・資本市場関係者からこんな失笑が漏れてくる。財務省は従来から景気認識や市場の動向をとらえて日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に関するコメントを発してきた。ただこの市場筋が指摘するように、ファンダメンタルズという言葉は、各種報道をみる限りここ数週間は発せられていない。なぜ同省はこの言葉を使わなくなったのか。
●どっちが本当?
財務省は今年に入ってから、二つの大きなテーマと絡めてファンダメンタルズという言葉を頻繁に使ってきた。ひとつ目は、円高をけん制する際の常套句としてだ。特に今年5月以降、海外機関投資家の日本株手当ての裏側で円高が進行した際、同省は「日本経済のファンダメンタルズの脆弱さからみると、円高になるのは不自然」(幹部)とのコメントを繰り返してきた。
もうひとつは、米ムーディーズ・インベスターズ・サービス(MDY)をはじめとする海外格付け会社に対し、日本国債の格下げをけん制する際に「日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると、(現状は)格付けは低すぎる」(別の幹部)と繰り返してきた。
賢明な読者はお気づきだろうが、「日本経済の現状は強いのか、弱いのか。財務省の言うファンダメンタルズはどっちが本当か」(銀行系証券)という素朴な疑問が生じた訳だ。
●「二枚舌」批判も
財務省がファンダメンタルズの「強弱」を使い分けていた過程では、「円高や格下げという嫌なものに対して、白黒使い分けるのはご都合主義、二枚舌に他ならない」(銀行系証券エコノミスト)、「円高阻止と格下げけん制のために経済の基礎的条件をアピールするのは明らかに矛盾している」(別のエコノミスト)との批判が渦巻いた。
皮肉なことに、財務省が窮する局面が5月31日に訪れた。同日は為替市場で一時1ドル=123円02銭と急激な円高が進行、政府・日銀は円売り介入に踏み切った。またこの日はMDYが日本国債の2段階下げを発表。意地の悪い市場関係者からは「財務省はどちらの“ファンダメンタルズ”を使うのか」(米系証券)との声が上がっていた。
●スピードと感情論でお茶濁す
介入に際して出された財務相談話では「最近の為替相場の動きはあまりにも急激」と、ファンダメンタルズではなく、相場上伸の「スピード」に着目したことを強調。一方、MDYへの反論では、「不当な格下げであり、反省してもらいたい」(黒田財務官)と「感情論」が先走った。エコノミストたちの批判が功を奏したかどうかは不明だが、“ファンダメンタルズ”に関する説明は聞かれずじまい。
ご都合主義と財務省を痛烈に皮肉った向きからは、「筋の通った確たる判断や行動指針が欠如している日本政府の現状こそ、日本のファンダメンタルズの弱さを象徴している」との声が出ている。
(相場 英雄)
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http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/28/20020528095523_37.shtml