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日立製作所<6501>と米IBMの間で交渉が続けられてきたハードディスクドライブ(HDD)事業の提携交渉が最終決着した。当初は合弁で新会社を設立するはずが、フタを開けてみれば一転、日立がIBMの事業部門をそろって買収するシナリオに書き換えられている。驚くのはこれだけでない。買収金額は20億5000万ドルで、日本円に換算すればなんと2500億円。「この程度の金額なら、内部留保でやりくりできる」(八木良樹副社長)と、日立にとっては痛くも痒くもないと強弁するが、業界内では失笑がもれている。日立とIBMの交渉劇はIBMの圧勝で終わったようだ。
●真意が「全く理解できない」・・・
「どちらが(2500億円を)払うの?」―。このニュースを聞いたある大手コンピュータメーカー幹部は、冗談交じりにこう切り出した。それもそのはずで、日立が買収するIBMのHDD部門は赤字部門であり、IBMが切り捨てたくて仕方なかった事業だからだ。一説によるとその赤字額は500億円を超えるともいわれており、ハードウエアに強いIBMといえども、頭を抱えてきた事業。それだけにそんな“お荷物”をわざわざ2500億円という巨額な金額を払ってまでも手に入れたいとする日立の真意は「全く理解できない」(業界関係者)ようだ。
●尋常ではない買収額〜予想の2倍
当初、提携交渉を発表した際、「合弁で進める」という構想に対し、関係者の間ではすでに「IBMは(HDD事業から)逃げるに決まっている。体よく日立に押し付けるだろう」(外資系証券)という読みが流れていた。その場合、日立が買収することになるが、市場の見方では「買収金額はよくても1000億円程度」(同)。
しかし、今回明らかになった金額は、予想をはるかに上回る2500億円に達した。特許権などを含めた有形無形の固定資産のすべてを買い取るにしても、このギャップは尋常ではないだ。日立では「資産規模は4000億円程度ある。決して高い買い物ではない」(庄山悦彦社長)と正当性を主張する半面、ある市場関係者は「企業を買収する場合、現有資産の価値も大切だが、もっとも重要なのは将来性にある。今後どれだけ利益を稼げるかを最大限考慮すべきだ」と分析。つまり過去を含めた現時点ではなく、将来に対する“楽観”が日立には確かにある。
●まるで見えない将来の価値〜需要はあっても収益性は?
それではHDD事業に未来価値はないのか―。確かにHDDはコンピュータやストレージだけでなく、情報家電分野にも用途は拡大しており、需要は期待できる。ところが収益性を第一にした採算面を考えると事はそう簡単には進まない、との見方が大勢を占める。
日立では初年度(2003年度)から営業黒字化を見込んでいるが、「それはほとんど不可能に近い」とする声がほとんどだ。なぜなら、HDD事業は韓国や台湾メーカーの台頭で単価が下落の一途をたどっていることと、米国のシーゲイトやマクスターという超大手企業の寡占化が進んでいる。待ち構えているこの2つの高いハードルを越えない限り、日立は今後、大きなリスク要因を背負うことは避けられないであろう。
赤字事業から完全に足抜けして巨額の資金を得る―。現時点ではIBMのしたたかさだけが浮き彫りになっている。
(井原一樹 市川徹)
・ビジネス上手のIBM〜日立へのHDD事業切り離しで身軽に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/18/20020418151008_59.shtml
・「グループ価値向上」?〜連結経営時代に乗り遅れる日立
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/05/20020405094505_43.shtml
・日立、本体から半導体事業を完全分離
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200203/19/20020319113008_87.shtml
・帝国の逆襲〜再開した米IBMの日本市場戦略
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200110/24/20011024115004_59.shtml