現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
サミュエル・ライダー著「ライオンは眠れない」という本が、ベストセラーになっている。「ライオン王」こと小泉首相が眠れないほどの破壊力を持つX計画とは何か?
「ライオンは眠れない」の著者はイギリス人となっていますが、日本人ではないかという説も浮上し話題を呼んでいるようです。読んでいない人のために少し内容を要約してみましょう。
ライオンはもちろん小泉首相のことで、特殊法人の廃止・見直しや郵貯の民営化などの構造改革では現状の財政危機を打開することができないため、いよいよ最後の手段であるX計画を実施することにしたので、夜も眠れないのです。このX計画とは、Xデーに預金封鎖・デノミ・新円切り替えを実施し、さらに財産税を課税しようとするものです。そして、国民は手持ちの旧円を新円に換えなければ紙屑になるため隠していたタンス預金まで換金に走り、その結果政府は国民1人1人の財産が把握できるので、財産金額に対して平均30%の課税率で財産税を徴収するというものです。X計画の最終目的は、この税収で日本国の借金と金融機関の不良債権をいっきに解決しようとするのです。
また、日本をこの破産から救う道は他にはなく、Xデーという「破壊」は必ず来ると予想しています。更にこの「破壊」は、破壊のための破壊ではなく、変革のための、再生のための、復活のための、創造のための破壊なのだと定義付けした後、この破壊を恐れることなく復活のチャンスとして考えるべきであるとしています。そして、日本人には仏教で言うところの「諦観」というものがあり、それが「運命に対する醒めた目」となり、そしてそれは「明日は明日の風が吹く」と言った楽観性にも繋がっていて(日本民族の強さ)、今回のXデー到来による危機を難なく乗り越えることができるのではとこの本は締めくくっています。
しかし、財政危機を乗り切るための聖域なき構造改革は、内閣支持率急落と抵抗勢力の復活により雲行きが怪しくなり、小泉首相が「創造的な破壊」行為を実施する可能性は非常に少なくなってきたと言わざるを得ないので、Xデーの可能性はないと見ていいでしょう。先日このような日本政府の経済運営総力の無さ、無為無策振りを反映してか、日本の国債の格付けが2段階引き下げられ、主要先進7カ国では最低となりチリ、チェコ、ハンガリーよりも低い水準となってしまいました。
また、「日本人には諦観があり、それが運命に対する醒めた目となり・・」の部分は、失われた10年の影響が経済のゼロ成長や財政危機だけでなく、日本人の精神的な脆弱性を招来してしまったことに目を覆うものです。確かにゼロ経済成長率下で失業率が増え少子高齢化社会を迎え社会保険などの負担が増加しているため漠然とした不安はあるものの、そこそこ蓄えがあり世界でトップ水準の消費水準を維持しているため、危機意識が欠落し痛みを感じないマヒした状態にあるのであって、諦観ゆえの楽観性ではなく、マヒ状態ゆえの恒常的な楽観性・無関心に陥っているのです。したがって、日本人はX計画を将来の日本復活のための必要な痛みとして捉えることができないと思いますので、日本はソフトランディングを指向することになるのでしょう。
このように「ライオンは眠れない」が予想している復活日本のシナリオの実現性は現時点では低いと見ています。むしろ、ソフトランディングの行き着くところは、ニューズウィーク誌などが予想している「引退国家への道」「世界第2位の経済大国日本が表舞台から引退する?めざすは、そこそこ豊かなアジアのスイスなのか」のシナリオに近いのではないでしょうか。ただ、引退していくにしても快適な引退生活をするためには、財政問題の解決と少子高齢化対策をしっかりしておかないと引退後死期を早めてしまいますので、引退もなかなか難しいといった感じです。何れにせよ迷走日本の姿はしばらく続きそうです。
田中 かほる
提供:株式会社FP総研