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大手銀行は02年3月期決算で、総額8兆円近い不良債権処理を迫られたが、体力指標の自己資本比率は健全基準の8%を上回った。大手行も監督当局の金融庁も「銀行経営は安定している」と胸を張るが、一方で「健全に見えるのは、税効果会計が自己資本をかさ上げしているため」との指摘がある。税効果会計とは何か。自己資本とのかかわりを含めてまとめた。
Q 銀行の体力はどこを見れば分かるの?
A 自己資本に現れている。資本金や利益を蓄積した剰余金などで構成される「正味の自己資本」に、国からの借金の公的資金、繰り延べ税金資産を足したものだ。
Q 自己資本が大きければ健全な銀行なの?
A そうとは言い切れない。公的資金は将来、返済しなければならないし、繰り延べ税金資産も「みかけ上の資本」と言われているからだ。
Q みかけ上の資本?
A 銀行は、融資先企業の倒産に備えて貸倒引当金を計上しているが、税法で損金扱いできるのは破たん先に対する引当金だけ。銀行は不良債権処理を進めるために破たん懸念先などにも有税で引当金を積んでいる。
有税の引当金も、融資先企業が法的整理されれば損金として認められるので、法的整理が実施されれば、すでに払っていた税金の一部が戻ってくる。簡単に言うと、支払った税金が将来戻ってくると見なした繰り延べ税金資産を自己資本に参入することを認めているのが、税効果会計なんだ。
Q それなら、不良債権を処理すればするほど自己資本は増える。
A 自己資本の額が増えても、正味の自己資本の割合が減ってしまい、「資本の質が劣化する」との指摘がある。税金が将来戻ってくるといっても、税額を減額する形でしか実現できないルールなので、赤字決算が続いて課税所得がなければ税金は戻ってこない。だから、繰り延べ税金資産はあくまでも「見かけ上の資本」と言われるんだ。
Q 大手行の正味の自己資本の実態は?
A 銀行グループ間の差は歴然。三菱東京フィナンシャル・グループの自己資本に占める正味の自己資本の比率は83・5%なのに対し、みずほは45・3%、りそなグループは23・3%にとどまっている。50%を切る状態では「磐石な自己資本」とは言えない。
Q 金融庁は税効果会計をどう見ているの?
A 課税所得がなければ税効果による資本は見かけ上に過ぎないから、将来、自己資本比率が大きく変動するリスクを抱えている。このため、収益計画などを厳格にチェックする方針だ。日本の銀行は税効果資本が多いとの批判も根強い。今後の銀行経営には、収益力をつけて正味の自己資本を充実させることが必要だ。
【瀬尾忠義】