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「派閥や学閥は絶対に許さない」―3年前の1999年4月に登板した日商岩井<8063>の安武史郎社長は、就任当時からこう言い続けてきた。 守備範囲が広く、縦割り社会の強い総合商社は他業界に比べて派閥ができやすいが、日商岩井はその中でも特に目立った存在だった。日銀総裁の速水優氏が同社の会長時代、当時の西尾哲社長と後継者を巡って意見が対立し、内紛になったことはよく知られている。
そこで折哀案で登板したのが草道昌武前社長である。が、同氏も財テクの失敗が明るみに出て辞任を余儀なくされ、7人抜きで現在の安武氏が登板したという経緯がある。
●安武社長は会長に
その安武氏は、同社の役員任期が1年に変更されたとはいえ、周囲の予想を裏切って社長交代を発表 (正式交代は6月末) した。同氏は辞任の理由として、「リストラを3年間やってきたが、またリストラの延長戦に取り組まなければならなくなった。しかも、社員の基本給1割カットも強いている。ここで代わらなければ社員は納得しないだろう」としている。
が、引責でないことを強調し、「やってもせいぜい2年」としつつ、安武氏は会長ポストに就く。そして後継者として選んだのが、西村英俊・専務執行役員である。安武氏は「3年前に本命視されていたのは彼のほうだった」と後継者を賛美するが、年齢的にも同世代の無難な人事に落ち着いた。
ところが「恣意的なものは一切ない」(安武氏)とは言いながらも、冒頭の言葉とは裏腹に、安武、西村両氏はともに九州大経済学部卒。さらに、企画部門という中枢を担い、西村氏の任期によっては「次」もあり得る南健一・常務執行役員も九大経済卒。しかも入社後は3人とも機械畑で育った先輩後輩の間柄。偶然というにはいささか無理がある。加えて、6月末に 社長に就く西村氏を除くと執行役員のなかでは南氏だけが取締役待遇だ。
●情報分野で力量の西村次期社長
もっとも、新社長になる西村氏の経歴を見ると、1991年から98年まで情報産業部門(現在は分社化したITX<2725>)を率い、富士通<6702>に売却したニフティ、あるいはスカイパーフェクト・コミュニケーションズ<4795>の商社連合も同氏が仕掛け人。確かに、将来を嘱望されていた人物である。
ところが、前述の草道氏が交代する際、西村氏は左遷ともとれる北京駐在の中国総代表に出されてしまうが、2年後、安武氏が完全に権力を握ったときに、西村氏は米国法人の社長に抜擢される。このポストは商社では社長への登竜門といわれている。安武氏が明らかに「次」を意識したことがうかがえる。問題はこの「九大トリオ」で、同社が復活できるかどうかだ。安武氏はリストラを指揮するにはある意味では相応しい、真摯で誠実な面がある。対して西村氏の社内評は「グイグイ引っ張るので人気がある。ただ、その分、敵も多い」といわれる野武士のようなタイプ。
●ニチメンとの“統合”も視野に
同社は商社のなかでは、最も分社化が進み、鉄鋼部門は三菱商事<8058>、LNGは住友商事<8053>と組み、化学品や情報産業はニチメン<8004>を核にして組んでいる。体のいい解体、切り売りとも言われる。商社は財閥系3社プラス伊藤忠商事<8001>の4社が生き残り、あとはいずれ再編成される可能性が強い。
日商岩井はメインバンクが同じ旧三和銀行という縁からニチメンと共同持ち株会社を設立する案も水面下では検討中というが、商社のなかでも企業規模に対して有利子負債が最も重くのしかかっている。足元の業績をみても、純利益も赤字転落寸前まで激減している。このタイミングで学閥、派閥を最優先した「九大トリオ」による“お手盛り経営”が吉と出るか、凶と出るか、その判定が下る日も遠くない。
(吉野 経)
・看板の鉄鋼部門を手放した日商岩井の窮状
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/08/20020408101518_25.shtml