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海外の公社債や株式に投資をする人は多く、最近では中国などのアジア市場に投資可能な証券会社も増えています。そんな中、ある米企業の再編では日本人投資家に納得の行かない出来事が・・・！？
わが国における公社債や株式の利回りに飽き足らず、為替リスクを積極的にとってまで海外の公社債や株式に投資を開始する方が増加しているようです。
ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場する銘柄だけではなく、最近、特に注目が集まりつつある中国やシンガポールなどのいわゆるアジアマーケットに上場する銘柄にも投資が可能な証券会社も増加してきています。
海外の投資物件は、キャピタルゲインやインカムゲインがわが国に比べて非常に魅力的なものも確かに存在しますが、現地とわが国の間の情報が行き届かないリスクや税務上の取扱いが異なるリスクがあり、場合によってはわが国投資家が不利益な立場になることもあります。
その一例として、米AT&T社のスピンオフに伴い一部の投資家が理不尽な思いをしたといわれる問題について紹介したいと思います。
■ 米AT&Tの再編（スピンオフ）とは？
AT&Tワイヤレス社はAT&T社の100％子会社ですが、ワイヤレス部門の中核として2000年に同部門の業績に連動するトラッキングストック（AWE）を発行しました（全体の約15％が株式公開）。これについては100億ドルを超える資金調達を行う米国市場最大のIPOということで新聞紙上を賑わせたことで御存知の方もいらっしゃるでしょうし、その後、ニューヨーク証券取引所で取引された投資家の方もいらっしゃることでしょう。
そのAT&T社が、昨年10月、同社を企業用長距離通信の「AT&Tビジネス」、住宅用長距離通信の「AT&Tコンシューマ」、CATVの「AT&Tブロードバンド」、そして携帯電話「AT&Tワイヤレス」に4分割することを公表しました。これに伴うAT&Tトラッキングストック保有者及びAT&T株主への影響は次のとおりです。
（1）AT&Tワイヤレストラッキングストック（15％）を消却し、その対価としてAT&Tワイヤレス普通株と1：１の割合で交換
（2）AT&Tワイヤレス残存資産について、AT&T株主に対して1：0.3218の割合でAT&Tワイヤレス普通株を割当て（いわゆるスピンオフ）−AT&T社が自ら保有する既存の完全子会社であるAT&Tワイヤレス社の普通株をAT&T株主に対して分配することによりAT&Tワイヤレス社を分離−
■ 株式交換？株式配当？
わが国投資家の税務上の取扱いはどうなったでしょうか？
まず、トラッキングストック保有者ですが、AT&Tワイヤレストラッキングストックの消却の代価として交付されたAT&Tワイヤレス普通株の基準日（2001年7月9日）時価は16.56ドルであり、わが国の税法に照らすと、この16.56ドルが譲渡所得における収入金額とみなされトラッキングストック取得価額等との差額について課税されることになります。AT&Tワイヤレスについてトラッキングストックから普通株に交換されても引き続き継続保有している方でも、税務上は一度売却して課税した後再取得したということになります。
一方、AT&T株主については、AT&Tワイヤレス普通株が交付されますが、その原資はすべて利益剰余金から構成されるため、株式配当ということで課税されます。
いずれもITバブルといわれた好況期が終焉した時期に公表されたものだけに、株価が大幅に下落した状態にあり、わが国投資家には余計に納得が行かない取扱いに感じたことと思います。
しかも、このAT&T問題で最大の問題は、確定申告の直前まで当局における税務上の取扱いが決まらず、投資家・証券会社に大混乱をもたらしたことです。確定申告書に記入できなかった投資家も当然いるわけですが、後日、申告漏れから税務署から何らかの処分が通知される可能性があります。
来年1月からは大幅に証券税制が変更されるわけですが、このような事態が二度と発生しないよう税務当局にはしっかりしてほしいものです。
阿波一行
提供：株式会社ＦＰ総研
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。