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●コーポレート銀行の危うい内実
みずほホールディングス<8305>・みずほコーポレート銀行(CB)のシステムの危さは、4月1日の統合前から囁かれていた。何故なら、旧日本興業銀行(興銀)のシステム「ITIS」をそのまま引き継ぐ形になるCBのシステムは、企業向けの取引を専ら扱ってきたもので、個人向け業務が中心の旧第一勧業銀行や旧富士銀行のシステムとは根本的に性格の違うものなのだ。
まず、みずほ内部で最大の問題になっていたのが処理能力。つまり、処理できるデータの容量が圧倒的に小さい。また、長期信用銀行として金融債を発行していたため、システムを更新してこなかったという事情があり、旧第一勧銀や旧富士のシステムに比べると一世代どころか二世代前のシステムというお粗末さだ、という。
●決定的な人材不足
さらに事態を深刻にさせているのが人材の不足だ。日本の金融エリートの宝庫だった旧興銀だが、ここのシステム担当部には「まったく言っていいほど人材を揃えていない」と言われる。もともとシステムを重視してこなかったこともあり、この部門については人材投資を怠ってきた、と指摘されてもやむを得ないであろう。しかし、これまではそれで済んでいたいわゆる「システム軽視」がトラブルを引き起こし、「決済」や「信用」という銀行には無くてはならない機能と看板を失おうとしている状況は、何とも皮肉な事実と言える。このため、みずほでは月間の振り替えなどが一定の量を超える企業については、すでにみずほ銀行(BK)に事務処理を移している。
こうした事実を持って、今さらながらCBのシステムが危いと騒ぎ立てるのは、時すでに遅しの感は否めないだろう。しかし、みずほ内部でCBのシステムに対する危機感は、極めて強い。その理由はトラブルが常に起こり得る状態にあるからだ。さらにそのトラブルが万が一起きたならば、その解決には膨大な時間がかかると予想されてもいる。
●常に起こる可能性を孕むCBのシステムトラブル
みずほ首脳は「みずほ銀行のトラブルは、データをちゃんと落とし込めさえすれば旧第一勧銀・旧富士のシステム自体は優れたものなので心配は少ない。しかし、CBはシステム自体の脆弱性が大きな問題となる。いつ能力を超える大量のデータが流れ込んで歯車が狂ってしまうか分からない」と言う。CBのシステムこそが世界最大の金融グループが抱えるお粗末で、しかも致命的な欠陥―となり得る可能性を孕んでいる。
一部のマスコミは、5月末が危機だと指摘している。それは、企業の納めている税金の納税期限であるためだ。しかし、みずほ内部ではこの日ではなく、実は5月21日が危機的だと囁かれていた。21日にCBが処理するデータが、1000万件に上ると見られていたためで、今月末はこの数を上回る事はないと見られている。それに旧興銀でもこれまでこうした税金関係への対応は滞り無く行われてきたためだ。
●どちらが早く切れるか〜「みずほの緊張の糸」と「取引先の堪忍袋の緒」
しかし、21日はそうはいかない大量の処理が待っていた。これも現場の努力があって、無事に乗り切る事ができた。何故なら、CBはこれまでも口座振替や振込みなど処理を前倒しで行う事が出来るように、取引先に量は減らせなくてもデータの持ち込みを決済日周辺に集中的に行うのではなく、時期を分散して行うように求めている。今月もこうした取引先の「配慮」があって、何とか凌いでいるのだ。みずほの緊張の糸と取引先の堪忍袋の緒とどちらが早く切れるか分からない緊張状態が続いている。そしてそれはこれからも続く。
●頼みの綱は“人海戦術”しか存在しない状況
では、CBのシステムにトラブルがひとたび起きれば頼みの綱は何か。それは、お寒い実情だが「人海戦術」でしかない。すでにBKから200人程度の要員をデータの大量処理のため、急遽派遣して緊急事態に備えている。しかし、その人海戦術もうまく機能するかは分からない。それは緊急事態にあたって指揮をとる人間が、何を隠そう旧興銀つまりCBの幹部だからだ。その幹部個人の問題ではない。データの大量処理などという世界では生きてこなかった人間が陣頭に立って、一体何が出来るというのであろうか。
いずれにせよ、オンライントラブルから始まった“みずほ危機”は今でも存在していると言っていい。仮にCBのトラブルが起きたとき、みずほ銀行で起きた口座振り替え処理の遅れなどとは比較にならない事態を招き、解消するまで想像以上の膨大な時間を要するのはまちがいが無い。そのときが不幸にも来てしまうのかどうか。固唾を飲む瞬間がまだ続く。
(東山 恵)
・「金融再生最前線」〜みずほトラブル幕引きで“邪悪な思惑”<上>
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/09/20020509110015_72.shtml
・雪印に酷似の「みずほ」〜利用者無視の構図
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200205/07/20020507093517_95.shtml
・みずほの障害復旧に“ウルトラC”?〜当局の苛立ち頂点に
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/25/20020425095520_71.shtml
・みずほを覆う新たな“憂鬱”〜煩雑さ極める「費用請求」
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/19/20020419101511_71.shtml
・「深層・真相」〜日銀当座預金残高が伝える“みずほ”と金融危機
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/10/20020410152513_09.shtml
・露呈した金融界の“盲点”〜みずほ障害が示すシステム軽視のツケ
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/09/20020409103016_01.shtml
・「金融再生最前線」〜大再編に大暗雲・・・みずほのATM障害
http://www.paxnet.co.jp/news/datacenter/200204/03/20020403103510_21.shtm