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去る5月20日付で発信された「ゴールドマンサックス証券」が作成したリポートに、極めて興味深い部分が登場してくる。
“利鞘改善の現実的な見通し 銀行”とタイトルされたリポートがそれで、その冒頭に以下で紹介するようなくだりが出てくる。
「当社のボトムアップ分析によれば、8.6ベーシスポイントの利鞘(ザヤ)改善が可能。利鞘改善により、今後2−3年間で大手行の業務純益は7.3%高まるだろう。上昇幅が小さいのは、貸出先の86%が現状より高い金利を支払えない弱い企業、もしくは支払う必要のない強い企業となっているためである−−」
この中で登場する“8.6ベーシスポイント”とは、0.086%を意味する。
そしてこのリポートの中に、次に示すような個所が出てくる。
「−−JPモルガン・チェース銀行では、国内貸し出しの62.7%が消費者向け融資である。これが同行の利鞘が極めて高いことの理由となっている。したがって米銀と邦銀の利鞘の違いは、米銀が邦銀と比べ、リスクに応じた貸し出しのプライシングで先行していることだけでは説明できない−−」
このくだりに登場する「JPモルガン・チェース銀行」は、米銀の代表格という意味で扱われている、と考えてもらっていいだろう。
つまり、このくだりの言わんとしていることは、「米銀と邦銀では、そもそもその融資構造が違うのだから、邦銀が米銀のビジネスモデルに倣って利ザヤの改善(利ザヤ幅の拡大)に取り組んだとしても、目ざましい成果は得られない−−」というものに他ならない。
そして筆者がなぜこの部分に注目しているのかというと、利ザヤ−−つまり“預貸金利ザヤ”の改善拡大が、邦銀が再生するうえで最大のカギを握っていると思われるからだ。
先週末の金曜日−−5月24日、主要行は一斉に2002年3月期決算(単体ベース)を発表した。
そしていくつかの主要行は、この決算発表で今期決算(2003年3月期)において、利ザヤ幅を改善させることを優先経営課題とすることを明らかにしたのである。
「−−新たに貸出先を開拓して融資量を増加させる『貸し興し』と貸出金利を見直す『貸し起こし』を実行したい」
こう言ってみせたのは、三菱東京フィナンシャル・グループの三木繁光社長だ。
また、三井住友銀行の西川善文頭取は、「(貸出金利の引き上げは)リスクが取れる銀行に変えることが狙いだ−−」として上で、「(今期の利ザヤを)年間平均で最低でも0.25ポイント引き上げる−−」と宣言した。
「主要銀行にとって、今期の決算の最大のポイントは、どの程度までどの程度まで利ザヤの改善が進むか、ということになることは間違いない。逆に言えば、思ったように利ザヤの改善が進まない銀行は“負け組”への転落は必至だろう」(大手都銀役員)
そうした意味において、前述したゴールドマンサックス証券のリポートは非常に興味深いのである。
「せいぜい0.086ポイントの利ザヤ改善しか見込めない」とするゴールドマンと「0.25ポイント引き上げる−−」とする三井住友銀行との間には大きな隔たりがあると言っていいだろう。まさに“コンマ以下”に、都銀の命運はかかっている。