現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
【政局の焦点】
●「司令塔」の役割果たしていない弱体・自民執行部
国会は会期末まで1カ月を切ったというのに、比較的順調に審議されていたかにみえた有事関連3法案の地方公聴会開催が突然延期されたり、小泉純一郎首相が政治生命を賭ける郵政関連法案をめぐって首相と郵政族のドン・野中広務元幹事長が激突するなど、重要法案の会期内成立のめどが全くたっていない。その大きな原因のひとつは山崎拓幹事長ら自民党執行部が弱体で、国会運営に関する“司令塔”の役目を果たしていないことがある。既に大幅な会期延長論も出始めているが、根本原因が変わらない限り、いくら延長しても状況に大きな変化があるとは思えない。近々、与党内で会期延長の是非と重要法案のうちどれを先行させるかの検討が行われる見込みだが、30日以上の大幅延長が実現しても重要法案の成立はせいぜい2本程度にとどまるとの見方が有力になりつつある。
●首相に“貸し”で解散封じ―が狙いの野中氏
小泉首相が「構造改革の本丸」と最も力を入れている郵政関連4法案は、野中氏が同法案の会期内成立に協力する意向を示したため、すんなりいくかにみえた。しかし、小泉首相が審議入りした21日の衆院本会議で「4法案は将来の郵政民営化への一里塚。外堀は埋めた」などと、持論の郵政民営化論を声高に強調。これに激怒した野中氏がこの直後、取り囲んだ記者団に対し、「もう私は汗をかく気はない。せっかくまとめようと努力しても、自分で壊すなら責任を持てない。物事は独裁者が決められるものではない」と、吐き捨てるように述べたため、法案成立の見通しは一転して不透明になった。
野中氏にしてみれば、郵政法案成立で衆院解散の大義名分を封じるとともに、首相に“貸し”を作ることで今国会閉幕後の内閣改造などでの主導権を握ろうとしたものとみられる。また首相が法案成立という「名」を、郵政族側が実質的に民間参入は阻止という「実」を取るとの思惑もあったろう。これに対し、首相も野中氏のそうした意向を感じたからこそ、本会議では意図的とも思える挑発的答弁を行い、さらにこの後の記者団のぶら下がりインタビューにも「私は民営化は譲りませんから。私の発言がけしからんということは、前から皆が言っていたことだ」と、あえて一歩も引かない構えを強調した。
●首相が意図的に演出する「抵抗勢力と対立」の図式
小泉首相がこうした強気の姿勢を崩さないのは、郵政3事業の民営化が財政投融資制度の改革、ひいては特殊法人の抜本的な改革につながる、との首相自身の年来の主張実現のためというのが表向きの理由。内実は、先程挙げた法案成立に向けどちらが主導権を握るかの権力闘争といってよい。首相にしてみれば、仮にこのまま郵政法案が成立しても、「野中氏ら抵抗勢力に妥協した」と言われたのでは何にもならないとの判断がある。このため「まるで子供のケンカ」(青木幹雄参院幹事長)と揶揄(やゆ)されながらも、「郵政民営化」は首相としては繰り返し主張せざるを得ない「譲れない一線」だったわけだ。また郵政族が抵抗勢力の雄であり、その主要メンバーが橋本派と重なり合うことから、これと鋭く対立する図式は首相の改革派としての立場を国民に強くアピールすることになるとの計算は当然働いていよう。
●「恐るるに足らず」と野中氏を見切った首相
周辺などの意見を総合すると首相は、野中氏が先に妥協で動いたことで「野中氏恐るるに足らず」と、既に同氏を見切ったフシもうかがえる。右腕の鈴木宗男議員を離党で欠き、当選1、2回のまだ地盤も固まっていない議員を多く抱える野中氏にとって、今、「抵抗勢力」のレッテルを貼られたまま衆院解散・総選挙に臨むことは絶対に避けたいことだからだ。その野中氏の足元を見透かした首相は「郵政法案が通らなければ解散」の“爆弾”をことあるごとにちらつかせる。もっともその爆弾が本当に爆発する時は、小泉首相自身も巻き込まれる“自爆”なのだが。
こうした首相の動きについては与党内にも「本当に頭がおかしいとしか思えない。(野中氏が)ソフトな球を投げているのに、いきなりビーンボールだ。変人だから本気で解散したいんだろう」(公明党中堅)との見方も。また実際に解散になった場合の見通しについても「自民党は厳しい。石原慎太郎都知事が新党を作れば、若手の中には参加するという声が結構多い」(自民党中堅)と見る向きも多い。
●自発的議員辞職などまずあり得ない鈴木宗男氏
鈴木宗男衆院議員の公設第一秘書が会計責任者を務めていた政治団体が政治資金収支報告書に虚偽の記載をしていた疑いで東京地検特捜部が鈴木議員の自宅や議員会館の事務所を家宅捜索したことについて、同議員がかつて所属していた自民党橋本派を中心に異論が相次いでいる。同派幹部は「見込み捜査や別件逮捕は戦後だめだということになったのに、この頃、この原則が少し揺らいでいる」と、検察の動きを非難。また若手の中にも「検察は世論の動向に左右される。形式的な罪で家宅捜索までやっている」との批判的意見がある。さらに近い将来、鈴木議員が逮捕される可能性についても別の同派若手は「罪状を特定しないまま別件逮捕するのは刑訴法で認められていない。公判維持ができず、無罪になる可能性がある」とまで指摘する。
確かに今回の事件は、秘書の容疑で議員の自宅まで家宅捜索したり、直接の権限がない佐藤優元外務省主任分析官を逮捕したりと異例づくめ。このことに対し、検察の意気込みというより、何か焦りを感じるのはどうしてだろうか。もし検察庁が鈴木議員にプレッシャーをかけ、自発的な議員辞職を期待しているのなら、それは恐らく不可能である。同議員にとっては自民党を離党したことが政治生命を自ら絶ったに等しく、加藤紘一氏の議員辞職ような事実上の司法取引は困難だ。鈴木氏にとっては、離党以降のことは自らの「存在理由」を賭けた戦いだからである。従って同氏が議員を自発的に辞任することはまずあり得ず、国会閉幕後に仮に逮捕されても徹底的に裁判闘争を続けることはほぼ間違いないだろう。
【瀋陽総領事館事件】
●「事なかれ主義」と「独善的エリート主義」
中国・瀋陽の日本総領事館で起きた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の住民5人の亡命事件は若干時間を要したものの、マニラ経由で韓国に入国し、とりあえず一件落着した。様々な問題を惹起した。この件はすでに詳述しているが、5人が韓国に無事着いた22日深夜、首相官邸に報告に訪れた外務省幹部に対し、首相が「反省が足りない。もっとしっかりやれ、しっかり」と、ゲキを飛ばしたことを同省幹部は胆に命じるべきである。今回、事件がこじれた根本原因は同省の「独善的エリート主義」と、さらにこれと裏腹な関係にある「事ななかれ主義」にあるからだ。今後は、といえば在外公館の警備が一斉に強化され、事件に関する処分は恐らく形式的なものだけに終わる可能性が大きい。しかしそれでは外務省がこの事件から何の教訓も学なかったことになるのだが・・・。
(政治アナリスト 北 光一)
・分析「日本の政治を読む」〜北朝鮮住民の亡命は事実上“成功”した
http://www.paxnet.co.jp/cgi-bin/bulletin/bulView.cgi?ads=yes&frame=news&boardid=32001&billid=320011021856693&parentId=0&page=1
・分析「日本の政治を読む」〜命取りとなった日本の初動ミスと「主権」意識の低さ
http://www.paxnet.co.jp/cgi-bin/bulletin/bulView.cgi?ads=yes&frame=news&boardid=32001&billid=320011021250741&parentId=0&page=1