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２０日にも送金トラブルが発生したみずほフィナンシャルグループが、新たな危機に直面している。この３１日に法人税、消費税、自動車税などの納付期限が集中し、大企業取引専門のみずほコーポレート銀行の決済システムが懸念されているのだ。同行については「一連のシステム障害の元凶」と指摘する声もあり、金融関係者の間ではコーポレート銀不要論さえ浮上している。
個人・中小企業取引専門のみずほ銀行では、システム障害で懸念された統合後初の給料日の「４月２５日」と、処理案件が１２００万件にのぼった五日後の「３０日」の大量決済を人海戦術でなんとか乗り切った。
だが、５月３１日は３月決算分の法人税、消費税、自動車税、固定資産税の納付期限で、年間でもっとも銀行窓口への持ち込みが多い時期。
そこで今度は、「上場企業の７割と取引があり、４割がメーンバンク」といわれるコーポレート銀のシステムが問題となっているのだ。
旧３行の主導権争いの結果、最も優秀な旧富士銀行の日本ＩＢＭ製システムを採用しなかった。みずほ銀では旧第一勧業銀行の富士通製システムを、コーポレート銀では旧日本興業銀行の日立製システムを基幹システムに決定したことは、今や周知の事実である。
だが、みずほ銀のトラブルもそもそも、コーポレート銀のシステムに起因すると指摘される。
旧興銀のシステムは都市銀行と違い、個人相手の大量の事務処理を行う能力がない。このため、昨年末になって、月５万件を超える口座振り替えについては、旧一勧のシステムで処理することを急きょ決定した。
電力、ガス、電話会社などの大量決済を追加的に引き受けざるを得なかったみずほ銀の決済トラブルが、さらに拡大する結果となったのだ。
こうした脆弱（ぜいじゃく）なシステムを抱えたままで、企業からのコーポレート銀の窓口への税金納付の持ち込みが集中し、処理能力をオーバーしてしまう恐れがある。そこでコーポレート銀は、取引先に持ち込みの抑制または前倒しを要請していた。
そんな矢先の今月２０日にコーポレート銀で送金トラブルが起きた。みずほ側は「人為的ミス」と説明したが、発生直後は、金融関係者の間で「やはりコーポレート銀で起こったか」という声が相次いだという。
コーポレート銀に対しては、「大企業の中には『支店が少なく、使い勝手も悪い』として、みずほ銀との取引を望むところもあった」という。
収益性についても、ＢＮＰパリバ証券審査部部長の小田切尚登氏は「海外でもＪＰモルガンやバンカーズトラストが事実上、救済合併されたように、法人専門の金融機関というビジネスモデルはうまくいかない−というのが定説だ」と語る。
それなのに、あえてコーポレート銀を立ち上げたのはなぜなのか。
「時間がたつにつれて、みずほ統合の目的が見えてきた」と語るのは、旧日本長期信用銀行執行役員でアローコンサルティング事務所代表、箭内（やない）昇氏だ。
旧第一勧銀の人事で旧第一と旧勧業の“たすきがけ”が続いたように、みずほの場合も、旧ポストの数がすべて“３の倍数”といわれ、「人事が見事に各行に分散してバランスが取れている」と最初から人事ありき。
コーポレート銀も「一勧、富士と比べてかなり異質な興銀が、コーポレート銀に逃げ込んだ面もある」というのだ。
大企業は最近、資本市場から直接、資金を調達する傾向を強めているため、銀行が企業に融資をしても利幅は薄い。
特にコーポレート銀の場合、「貸し出しも預金の受け入れも、大企業相手で何かあったときのリスクが大きい。取引先企業も、財閥系の三井住友銀行や東京三菱銀行と比べて不良債権が大きい」（前出の小田切氏）。
株式や社債の発行、Ｍ＆Ａ（合併・買収）など投資銀行業務についても、「グループ内で、みずほ証券がノウハウでも経験でも上回っている」（金融関係者）という。
となると、みずほ銀行とみずほ証券があれば、コーポレート銀は不要との見方もできる。箭内氏も「顧客からみてニーズがないものは、存在意義がない」と断じる。
みずほホールディングスの株価をみると、２３日終値で２９万８０００円。三菱東京フィナンシャル・グループ（９５万２０００円）はもとより、ＵＦＪホールディングス（３８万５０００円）にも水を開けられている。
５０円額面に換算すると２９８円となり、三井住友銀（６９４円）も大きく下回る水準だ。
前出の小田切氏は「株価が回復しないのは、投資家が一連のトラブルが一時的な問題ではないとみていることにある。事後処理のまずさも含めて、みずほの経営者の株主や預金者に対する責任は大きい」と分析する。
そのうえで、信頼回復には「みずほのＤＮＡに染まっていない、強いリーダーシップを持つ人材がトップに立つ必要がある」と指摘する。
誕生からわずか２カ月足らずにして、みずほは重大な岐路に立たされている。
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。