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国債問題が噴出する最悪のケースは、「デフレ不況」の継続で起きるものである。
このケースが行き着く先はハイパーインフレである。
財務省や政治家そしてある程度の国民も、「デフレ不況」がそんなに長く続くはずはなく循環的な変動や米国経済の回復によりそう遠くないうちに上向くという期待的予測をしているように思われる。
しかし、合理的な政策を実行しない限り“デフレスパイラル”から抜け出すことはできず、さらに悪化の方向に進む。(米国経済がひょっとして回復するとしても日本経済を上向けるほどのものではない)
小泉政権が志向している税制変更や経済政策(不良債権処理や規制緩和など)は、ほっといても悪化する“デフレスパイラル”をさらに加速させるものである。
このようなことから、国債問題=“国債不安”は、最悪のケースで現実化する可能性が高いと考えている。
国債は、主として銀行・生保・郵貯及び簡保運用部門によって引き受けられている。
端的には、勤労者をはじめとする経済主体の預貯金と保険料が、国債というかたちを通じて消費されたり移転させられているのである。
(この詳細については、『レス4:「国債サイクル」による金融資産の侵食とハイパーインフレへの道』 http://www.asyura.com/sora/dispute1/msg/505.html を参照して欲しい)
税収の増大が期待できないまま国債発行高が増大していく一方で、国民生活や企業経営が疲弊・困窮し預貯金や保険料が減少していけば、国債を引き受ける原資が不足する事態に陥る。
これをそのまま放置すれば、金利支払不能や償還不能という政府債務のデフォルトにつながるだけではなく、預貯金の払い戻し不能=銀行及び郵便貯金の破綻につながっていく。政府・日銀はこのような破滅的な事態を避けようと考えるから、銀行を経由するとしても、日銀が国債を実質的に直接引き受けることになる。
金融現象を見る限り、この段階は既に現実になっている可能性がある。
日銀がいくら日銀券を発行しようとも、それが商業銀行から外の経済主体に流れ出さない限り、ハイパーインフレになることはない。(現在のようにデフレになることさえある)
ハイパーインフレになるトリガーは、日銀の実質的な国債直接引き受けによる財政支出の増大である。
小泉政権は新規発行国債30兆円枠を掲げているが、「デフレ不況」が進み税収が落ち混み続け、景気対策ではない通常歳出の歳入不足がさらに増大すれば、30兆円枠を維持することは政治的にできなくなる。
つまり、公務員の給与や社会保障関連支出が税収で賄えなくなる割合が高くなればなるほど、根拠のない、すなわち経済活動成果を伴わない日銀券が経済社会のなかにますます入り込んでいくことになる。
抑制されている公務員への支払い給与額は増えないとしても、「デフレ不況」の悪化や高齢化の進展で、社会保障関連の支出は否応なく増大していく。銀行の破綻を避けるための公的資金の注入も再び行われることになるだろう。
これは、経済論理から言えば、経済活動成果を伴わない需要が生まれることを意味する。
土地や株式など投機的もしくは金融的商品を除けば、商品は、生産・販売活動を通じて供給されるものである。
生産・販売活動を行っている経済主体が得た日銀券をそれに従事している人たちにある割合で分配し、受け取った人が、税金や社会保険料を支払い、その残りで欲しい商品を購入するという仕組みで経済社会全体は基本的に動いている。
日銀→商業銀行→経済主体という流れで貸し出される日銀券も、そのようなサイクルのなかで、経済主体→商業銀行→日銀という流れで利子付きで返済されるものである。(個人がクレジットカードを使ったり借金をしてモノを買うのも、将来得られるであろう所得の先取りでしかない)
(投機や金融商品取引で得る日銀券は、余剰の日銀券を持っている人(企業)たちが対象商品を保有していた人(企業)に移転させたものであり、余剰日銀券の基礎=裏付けはあくまでも生産・販売活動の成果である)
根源的には、生産・販売活動を伴わないかたちで手に入れた日銀券は、それで購入するのに見合う商品がないのである。
幸か不幸か、日銀券は、“裏付けのない”ものなのか、ちゃんとしたものかを識別することができない。
そして、生産・販売活動が過剰という状況であれば、“裏付けのない”日銀券が使われることで起こる弊害=インフレは現出しない。
(経常黒字の蓄積による円高=日銀券の高価値を根拠に中国などから低コストの商品が輸入されていることもインフレの現出を阻止している)
このようなことから、日本でハイパーインフレが現出するのは、生産拠点の海外移転がさらに増加し、外国企業の国際競争力上昇と相俟って貿易収支が赤字化が公然と予測されるようになってからではないかと予測される。そのような予測は、円の信用力を低下させ、円安を招くことになる。
円安になったからといっても、それが輸出の拡大や利益の拡大につながり、景気回復につながるかどうか疑問である。
というのは、貿易収支の赤字化が、輸出企業生産拠点の海外移転や外国企業の国際競争力上昇で起きたものだからである。
生産拠点はすぐに戻せないし、中国企業の国際競争力はその対象商品範囲を現在よりも広げているだろう。その時点の日本の生産コストが中国の10倍だとしても、ハイパーインフレを経ないまま為替レートが1ドル=1,300円になることはない。
企業経営者は、そのような現実を直視して日本の“産業空洞化”をそのまま推し進める可能性が高い。それが、企業の利益だからである。
このような事態が、隠れていた“裏付けのない”日銀券の存在を白日のもとに晒すことになる。産業空洞化・失業者増大・高齢者増大という状況でインフレが進めば、“裏付けのない”日銀券を使った財政支出をさらに拡大させざるを得なくなる。
インフレがインフレを推し進めるというハイパーインフレに突入する。
このような話は、ことさら将来を予測しなくても、80年代の米国経済を顧みればわかることである。
80年代前半のドル高時代に米国企業は生産拠点を外国に移していった。そして、経常収支の赤字増大により対外債務純赤字国になった85年には「プラザ合意」でドル価値を大きく切り下げた。しかし、米国の貿易赤字はその後も増大し、生産拠点の海外移転も続いたのである。対円で半分近くまでドル価値を切り下げても、ある範囲の商品では日本企業の国際競争力に太刀打ちできなかったのである。
米国の救いは、自国通貨ドルが国際基軸通貨であり、世界最大の輸入市場であり、経常収支を埋めるにとどまらない厖大なドルを還流させることができたことにある。
幸か不幸か、日本にはそのような力はない。
米国は、日本をはじめとする諸外国の経済活動成果であるドルを国債や投資というかたちやで還流させることで、経済活動成果が不足した状態で繁栄を享受してきたのである。
ハイパーインフレが現出するトリガーとしては、米国政府債務のデフォルトも考えておかなければならない。(外国の経済活動成果を借りて繁栄を享受した後始末をしないということ)
一説では1兆ドルとも言われているが、日銀が大量の米国債を保有している状況で米国政府がデフォルトに踏み切れば、日銀の信用力は大幅に低下する。
また、対米投資を行っている企業も大きな打撃を受ける。
米国政府のデフォルトは、2兆ドル(およそ256兆円)もの米国債を保有している日本経済に一大打撃を与えることになる。
その打撃を緩和するための財政支出増大が、ハイパーインフレのきっかけになる可能性は高い。
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「議論・雑談1」ボードでPBSさんが転載してくれた『小泉改革の真の目的はいったい何なのか? 〜2002年の経済展望 〔プライオール投資顧問〕』のレスとした書いたものの抜粋です。
そちらの方で議論に参加してもらえれば幸いです。