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社債の額面金額に対する利率が0%の社債、利回りマイナスの社債が登場!国債の格付け低下による利回り上昇も考えられるなかで何故に?
普通預金や定期預金など預貯金の利息がますます低下する一方、それらよりも高い利率・利回りを示している国債、地方債、事業債そして外債などの「公社債」に資産運用の対象として注目が集まっているといわれています。
海外の格付け会社からの日本国債の格下げ懸念が台頭し、わが国企業の発行する社債の利回りの低下が懸念される昨今、社債の額面金額に対する利率が0ないしは、利回りがマイナスの社債が発行されてきています。具体的な事例を挙げると、セザール(8845/東証1部)、サイバー・ミュージックエンタテインメント(4740/東証マザーズ)、富士通(6702/東証1部)などですが、これらはいずれも社債の額面金額に対する利率0%の社債が発行されていますが(富士通は募集価額が102円となっているため名目上は償還まで保有すると2円分の損失となります)、その事情等についてみてみましょう。
■ 商法改正による影響を懸念?
昨年12月13日のコラム「商法改正で転換社債がなくなる?」でも紹介しましたが、4月の改正商法施行により転換社債が発行できなくなり、新株予約権付社債を転換社債と同様のスキームである転換社債型新株予約権付社債で発行することが必要になりました。これまで転換社債は、社債と株式への転換権(オプション)が不可分一体の存在であるため、明確に転換権単独の財産価値が評価される必要がありませんでしたが、転換社債型新株予約権付社債については、発行時に、社債と新株予約権(転換権に代わるもの)それぞれの財産価値を算定する必要があります。そのなかで、転換社債と同様の商品性(100円で発行されたものが100円で償還され、額面金額が転換後の株式の取得価額となる)を維持するためには、社債と不可分の新株予約権の財産価値0円とすることが求められると考えられました(日本証券業協会ホームページ「商法改正に伴う転換社債の取扱いについて」参照)。事実、上述の3社は新株予約権の発行価額を0円としています。
また、転換社債は、株式への転換権(オプション)の見返りとしてその分を社債の利率を普通社債に比べて低めに設定するのが一般的です。既存株主に著しく不利な条件で転換社債を発行する際には株主総会で総議決権の3分の2以上の決議(特別決議)が必要となりますし、その手続きを欠くとファイナンス自体が取消される可能性があり、企業にとって機動的な資金調達が実施しずらくなる可能性があります。
今回、社債の利率が0%とされた理由の一つは、本来、何らかの経済価値を有する新株予約権を0円とすることが、既存株主に対して不利な条件の転換社債型新株予約権の発行とならないようにするための措置であると考えられます。
■ 利率が0%でも既存株主に不利な転換社債型新株予約権付社債の発行も?
上述の3社のうちセザールとサイバー・ミュージックエンタテインメントの2社の転換社債型新株予約権付社債(私募)は、利率が0%であるものの、既存の株主に著しく不利な条件である可能性があると思われます。
まず、前者については株価が下落したとしても転換価額の下方修正条項が付いているものですし、後者については同様に転換価額の下方修正条項が付いているうえに何故か転換価額の算定期間を直近2ヶ月間に設定し、その算定価額からさらに9.98%をディスカウントされています。後者の転換社債型新株予約権付社債の転換価額は11,000円に設定され、5月30日に発行されますが、5月10日現在の株価は17,000円となっています。株式に転換請求できる最初の日は6月5日になっており、仮にその時の株価が17,000円である場合にはこの社債を購入した者は差額の6,000円を約1ヶ月で利得することになります。
このような条件でなければ社債を購入してもらえないのかも知れませんが、仮に同様の条件で購入を持ちかけられれば飛びつく方も多いのでは?株主として会社を私物化されないよう注意深く監視しましょう。ドラマ「ビッグマネー」でTOKIOの長瀬智也演じる白戸則道のセリフのように「会社は株主のモノ」なのです。
阿波一行
提供:株式会社FP総研