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通信界の巨人、NTTドコモ株に市場関係者の目は冷ややか。第三世代携帯電話サービス(3G)も今までのところ不調。この状況を投資家はどうとらえるべきか?
ドコモ株に、今ひとつ元気がない。先日発表された決算においても、前期決算においては予想を上回る収益を達成したのだが、今期の業績見通しにおいて成長の鈍化が明らかとなった後は、他の通信株と比べても、今一つ振るわない。投資対象として、現在どのように考えるべきであろうか。
NTTドコモについては、もはや説明は必要ないだろう。鈍化しつつあるとはいえ、成長を続ける携帯通信事業においてダントツの地位を占める。また、その技術水準の高さもつとに有名であり、第三世代携帯電話サービス(3G)、世界に先駆けていち早く実用化している。
このように、一見何の死角もないかのドコモであるが、市場関係者の目はやや冷ややかと思われる。何故ならば
1.携帯の使用時間及び使用料が減少傾向にある。
2.海外投資において多額の損失を計上。
3.現行サービスにおいて、加入者増の鈍化が顕著。
4.期待の3Gも、現在までのところは、不調に終わっている。
上記について、検証してみよう。
1.確かに、音声通話自体の減少傾向は認められる。但し、これは音声通話からメールへシフトしたためだけでなく、通話料の値下げにも影響を受けている。デフレ経済下にある日本経済においては、これはドコモだけの問題ではない。
2.確かに海外投資においては多額の損失計上となった。尤も、年間3000億円を超えるドコモのフリーキャッシュフローをもってするならば、1兆円の損失も、3年あれば取り戻せてしまう。しかも、財務状態は非常に良好である。むしろ問題なのは、未だに架の投資が失敗ではなかったと頑なに主張する経営陣の心証の悪さにあるのではないだろうか?
3.4のポイントと絡むのだが、ドコモが唯一抱える、無線の帯域幅の限界という巨人ならではの苦悩がある。ドコモは、加入者増が減ったのではなく、加入者増を増やせない物理的な臨界点に達しつつあるのである。ドコモのユーザーならばわかると思うが、通話品質の低下は著しい。これは、限られた帯域に、限界を超える利用者がいるために、通話品質が悪化してしまうためであり、幸運なことに(?)加入者の少ないKDDI陣営にはこのような問題は生じない。ドコモは、加入者獲得のためのコミッションを下げることにより、売上増ではなく、利益増を狙っているように思われる。
4.上記の必然的理由により、ドコモはより効率のよい次世代システムに注力せざるをえない。ところが、ドコモ及び端末メーカーの技術力をもってしても、現状のFOMAは、現行システムに比べて競争力がない。競争力のないサービスの拡販に注力せざるを得ないのが、今後のドコモの悩みであろう。
以上、マーケットにおけるドコモ株に対する懸念材料を振り返ったのだが、実際私自身は、これらは特段の懸念材料とは言えないと考えている。なぜなら、加入者の減少とか利用料の低迷などは、業界全体の問題であるし、次世代サービスについても、遅らせたところで、他社も同様のサービスを開始する必要がある。すなわち、「過去」の海外投資の失敗以外は、取り立てて問題はないのである。今回はあまり触れなかったが、バリュエーションにおいても、ドコモはもはや割高ではない。もちろん、世界の他の携帯通信事業者(例えばボーダフォン)と比較した場合、多少プレミアムはついているのだが、良好な財務体質、欧州市場に比してゆるやかな競争状況、3G免許入札負担のないドコモにプレミアムがついてもおかしくはない。
むしろ、株価におけるリスク要因は、(1)経営陣の慢心や組織の官僚化、(2)NTTグループとの関係(分離?)などであろう。特に、(1)記者会見やアナリスト・ミーティングでの立川社長の頑なな態度は、投資家の不評を買っているのではなかろうか。そもそも、以前増資を行った際の説明とあまりに事情が変わっていることについての率直な反省の弁は未だない。(2)NTTグループの再分割となった場合に、多量の株が親会社から売られるかもしれないリスクについても一考の余地がある。
5月15日付けで、株式分割による新株の交付が起こる場合、当該株が売られるリスクがあるので、直近の株価には注意が必要であるが、MSCIインデックスの再調整の行われる5月末にかけては、長期的には買い場が到来するかもしれない。
外資系ヘッジファンド 運用担当 永坂泰三
提供:株式会社FP総研