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現在の日本の景気は10年サイクルの底入れ期に入っている。歴史的にみれば2、3年後には上昇局面か?今後、日本の株式市場が長期の上昇相場を迎えるための条件とは?
企業収益は、法人企業統計(全産業、除く銀行・保険)によれば、93年を底として改善方向にある。しかし、資本効率を示す、売上高の総資本に対する比率である総資本回転率は、81年以降下降局面にあり94年以降は底這っている。余剰借入金、余剰設備、余剰労働力(高人件費)、株式持ち合い等によって総資本が膨張しているためである。この過大総資本が解消され、総資本回転率が本格的な改善に転じない限り、60年代央以降に見られたような、日本の株式市場の本格的な長期上昇相場は見込めないだろう。
総資本回転率の悪化は、1つには借り手の企業の不良資産によって銀行の不良債権が総資本を膨らませていることが要因となっている。しかしながら、銀行は本格的な不良債権処理に取り組み始めており、過大資本は解消の方向に向かっている。一方、もう1つの要因である総資本回転率の分子=売上は、世界経済の拡大に伴い、伸び率は改善の方向にある。加えて、世界経済が98年を境に、ディスインフレーションからインフレ含みに転じつつあることから、日本のデフレ問題も改善方向にある。世界経済の動向、日本のデフレ解消の方向から鑑みて、2004〜5年頃からは、総資本回転率は本格的な改善に転ずることが見込める。総資本回転率が上昇に転ずれば、日本の株式市場は長期(15〜20年)の上昇局面に入るだろう。
総資本回転率が天井をつけたのは、前回が57年、今回は81年である。いずれも、世界経済のインフレがピークをつけた時期に対応する。60年代からの総資本回転率は米国の長期金利とほぼ見合った動きとなっている。このため、米国の長期金利は世界のインフレ率を反映するものといえる。
米国の長期金利は98年に実質的には底入れしている。景気回復が本格化する今年後半から来年の長期金利は、長期の上昇局面となるだろう。また、最近の金価格の上昇は、先行きに流れる変化を先取りし、ドル安を織り込んでいるといえるのではないか。米国は当面ドル高政策を維持して、米国のインフレを抑制する政策を続けるだろうが、貿易・経常赤字の高水準が続けば、財政収支も赤字に転ずることから、先行き米国はドル安政策に転換する可能性が高い。また、米国・日本・イギリスの中央銀行は、マネタリーベースの伸びを高水準で維持する政策を続けており、米国の財政政策も景気刺激策である。ドル安に転ずれば、世界経済のインフレはより鮮明となるだろう。歴史的にみても、世界経済がインフレに転じて、米国の長期金利が上昇する局面では、日本の総資本回転率は上昇局面に入る。
60年代は総資本回転率が本格的に上昇に転じたのは66年からであるが、株価は約半年先行して65年央に大底をつけた。今回も総資本回転率が本格的な改善に向かう目処が立つところが、日本の株式市場が本格上昇に転ずるところとなる可能性が高く、2−3年後のこととなろう。そこまでは、総資本回転率の改善は極めて緩やかで、内需企業中心に、依然として低水準が続こう。当面の2−3年は、90年代の延長線の相場で、二極化相場が続こう。株式市場は国際競争力のある企業と新興成長企業が値上がりする一方、内需大型企業の株価は不振となると思われる。しかし、企業リストラが一巡して、日本経済が新しい成長局面にはいる2−3年後は、円高に転じて、内需企業も買われる、市場全体の本格的な長期(15〜20年)にわたる上昇相場に転じることになるだろう。
シュローダー投信投資顧問株式会社 中村 祐香
提供:株式会社FP総研