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<Resurgenceは、環境的また精神的に考える国際フォーラムのため1966年にイギリスで創刊された。シューマッハーが、たびたび寄稿したことで知られている雑誌である。インドからきたサティシュ・クマールが現在は編集長を務めている。下記は、サティシュの許可を得て翻訳したものである。>
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Resurgence No. 195 July/August 1999
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Features
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モンサント・マシン
THE MONSANTO MACHINE
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ジェニファー・カーン
Jennifer Kahn
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モンサントが蒔いているのは変化の種かそれとも破壊の種か?
Is Monsanto sowing the seeds of change or destruction?
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(この記事の完全版は「ハーパーズマガジン」1999年4月号に初掲載された。ジェニファー・カーンはカリフォルニア大学バークリー校大学院でジャーナリズムを専攻している。)
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1998年10月1日
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拝啓 ノ様
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貴殿の地域で「ラウンドアップ・レディ(Roundup Readyはモンサントの登録商標)大豆」等の特許化されたバイオテクノロジー種子を不正に貯蔵・再作付けを行っている農場経営者及びその援助者に関して最近行われた調査についてはお聞きになっているかも知れません。これら特許化された遺伝子を有する種子の貯蔵・再作付けは種子の特許侵害となります。
1998年の生育期を通して多くの生産者、小売業者、種子生産者等がモンサントの種子特許侵害防止に関する行動について情報交換を行いました。
最近行われた種子特許侵害調査を受け、ケンタッキー州リードのデビット・チェイニーは「ラウンドアップ・レディ大豆」を不正に貯蔵・再作付けを行ったと認めました。チェイニーはまた、これら特許侵害種子を他の物品と引き換えに隣人と交換し、再作付けの目的のために種子除去機を入手したことを認めました。モンサントがこの事実を発見した時、これら全員がこの犯罪に関与しているとされました。
チェイニーの和解調停の条件は3万5千ドルの特許料支払いと違法な大豆作物の処分を確認する文書を含んでいます。チェイニー及びその他の関係者は今後5年間に渡って農業サービス機関(Farm Service Agency)及び農業安定保護局(Agricultural Stabilization and Conservation:ASCS)の記録を含む全ての大豆生産記録を検査のためにモンサントに提供することとなります。
また全関係者は今後5年間に渡って大豆作物と種子の検査、採取、試験のために彼らの所有地及び借地への全面的な立入りを認めることとなります。
残念なことにチェイニー訴訟は特殊な例ではありません。今日までにモンサントは全米で425の訴訟を抱えています。これらは農薬販売業者や種子販売業者、生産者その他から寄せられた1800を超える手がかりから生じたものです。これらのうち200件以上が現在調査中となっています。最近判決が下されたいくつかの訴訟の結果は以下を含むものです。
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・ 不正に「ラウンドアップ・レディ大豆」を貯蔵・再作付けしたアイオワ州のある生産者は1万6千ドルの特許料を支払う予定です。
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・ バイオテクノロジー種子特許を侵害したインディアナ州の2人の生産者は相応の特許料を支払う予定です。1人は1万5千ドル、もう1人の農民は1万ドルを支払う予定です。
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・ イリノイ州のある農民は不正行為の代償として1万5千ドルを支払う予定です。
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これらの特許を尊重することは法的なリスクを避けるということ以上の意味を持っています。それはまた将来の技術発展を保護することでもあります。モンサントは貴殿の顧客に新たな技術をより早い時期に提供するため、バイオテクノロジー研究に多大な年月と資金を投資してきました。特許化された種子を生産者が貯蔵・再作付けするとしたら、最終的には農民に利益をもたらす未来の技術に企業が投資する動機が弱くなってしまいます。
これらの技術は、より収穫高の高い作物や干ばつに耐える作物、トウモロコシの根を食う虫による被害から守られた作物、そして最終的にはプラスチック生産に使用可能な高価値の大豆を生産する種子を含みます。
私達は大半の農民や小売業者、その他の農業関係者が誠実な経営者であることを認識しています。しかしながら万人のための平等な競争条件を維持する努力の一環として、法を犯して種子特許を侵害することを選んだ生産者に対しモンサントは自社の特許権を行使し続けるでしょう。種子特許の侵害に関する御質問は1-800-ROUNDUPまでお気軽にお問合せ下さい。これら貴重なバイオテクノロジー遺伝子保護のための責務に対する皆様の弛まない努力に心より感謝いたします。
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敬具
知的財産権保護部
部長
スコット・ボーカム
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遺伝子組み換えされた作物の種子を貯蔵・再作付けすることは「特許侵害」にあたると警告するために農業化学企業モンサントから3万の農家に送付されたこの手紙は、一見すると企業の自己防衛行為と映る。しかし本当のところ、これは企業の支配権の誇示であり大地に帝国の旗を突き立てるモンサント流のやり方なのである。
ある生物種の遺伝子を無関係の別な種のDNAに挿入する遺伝子移植技術の進歩のおかげで、今や種子は「知的財産」と見なされるようになった。国際農村発展基金(Rural Advancement Foundation International:RAFI)によれば、世界の商用種子販売の3分の1以上は一握りの企業によって支配されている。その中でも世界第3位の農業化学企業であり、世界第2位の種子企業であるモンサントは最も攻撃的である。
ゲノム科学の研究・開発に数億ドルの投資を行ったモンサントは「自己再生産する」遺伝子組み換え種子を貯蔵・再作付けする農民は著作権侵害に関与している、と主張している。モンサントは米国の農家に種子貯蔵を禁止する契約書に署名することを要求し、後で契約違反で捕まった農民は特許料の支払いと5年間の農場監査を余儀なくされるのである。
単式農法によるバイオテクノロジー作物の栽培方法は、雑草への脆弱性と除草剤の必要性を増加させる傾向があり、除草剤による環境への影響だけでなく作物そのものも殺してしまうという望まれざる効果を生みかねない。しかしモンサントは、この緑の革命の不利な点を独自の強みに転換したのである。12年に及ぶ研究の後、モンサントは自社の除草剤「ラウンドアップ」に対する免疫遺伝子を持ったバクテリアを発見した。この遺伝子を種子に組み込むことによってモンサントは自社の除草剤への耐性を持つ作物を作り出し、両製品のニーズを確保したのである。今日では「ラウンドアップ」と「ラウンドアップ・レディ」種子はモンサントの85億ドルの年商の少なくとも5分の1を構成し、マーケットは更に拡大しつつある。1996年には「ラウンドアップ・レディ大豆」の作付けは100万エーカーしかなかった。今年には7千万エーカーの米国産大豆作物の少なくとも半分は「ラウンドアップ・レディ」となるだろう。モンサントは大豆1袋につき6.5ドルの「技術料」を課金し、種子貯蔵を行っている農家を訴え続けるとしたら来年には3億ドル近い大豆特許料収入を得ることになるだろう。
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モンサントは自社を農民の抱える問題への回答であり世界の食糧危機の解決策である、と宣伝している。遺伝子組み換え作物の種子が従来の種よりも1袋あたり32ドルも割高なのにもかかわらず、より高い収穫高あるいは高価な除草剤や肥料の削減につながるならば米国の農家は喜んでそれを購入することが証明されている。モンサントの「ボルガード(Bollgard)綿」、「イールドガード(YieldGard)トウモロコシ」そして「ニューリーフ(NewLeaf)ジャガイモ」は害虫への耐性を持つよう遺伝子組み換えされている。そしてこれは第一の波に過ぎない。1997年だけでも1万500のバイオテクノロジー遺伝子の特許が申請されたのである。
著名な生物学者は企業的農法と遺伝子組み換え技術の進歩の組合せによる作物の多様性欠如が、1970年代のアイルランドでのジャガイモの凶作や米国でのトウモロコシの葉枯れ病の再来を引き起すのではないかと危惧している。モンサントはこのような危惧を「幻想」と呼んでいるが、いくつかのモンサント製の作物は既に重大な問題に直面している。1996年に同社は無認可の遺伝子を含んだ6万袋のキャノーラ種子をリコールしなくてはならなかった。また1998年にはが奇形の莢(さや)や早い時期に落ちてしまうといった問題を持った「ラウンドアップ・レディ」綿作物によって被害を受けたミシシッピ州の農家と和解しなくてはならなかったのである。
1998年の「ネイチャー」誌の研究によれば、移植された遺伝子が異花受粉によって他の植物に「流出」する確率は、従来の遺伝子と比べて20倍であり、結果として除草剤への耐性を持った雑草を生み出しかねない。同じようにモンサントが殺虫効果のあるバクテリア(Bacillus thuringiensis:Bt)通常は作物に噴霧される)の遺伝子を種子に組み入れることで作り出した害虫への免疫を持ったトウモロコシや綿、ジャガイモを食べる虫は生き残り、病院を汚染する複数の抗生物質への免疫を持ったバクテリアのように殺虫剤への免疫を備えた子孫を交配するかもしれない。
モンサントの製品が農業的均質性につながるのと同じように、同社の方針は農家に同様の行動をとるよう促している。手紙の中で言及されている、いわゆる「平等の競争条件」がそれである。種子の特許侵害を討伐するために1996年にモンサントが5人の専属監察官を雇った時、農家や種子販売業者はこぞって競争相手や以前の顧客を密告したのである。
「農民が犯罪者に仕立て上げられ、農村地域が企業的警察国家となりつつある」とRAFIのホープ・シャンドは述べている。また彼は「我々はこれを生物学的農奴制(bioserfdom)と呼んでいる」とも述べている。これまでのところモンサントは少なくとも500の農家を調査したが、その特許料徴収額を公表してはいない、同社はこれを農業大学の奨学金基金にとして寄付しているそうだが。特に米国、ブラジル、アルゼンチンでの「ラウンドアップ・レディ」種子のセールス好調のおかげで、1996年から1997年にかけてのモンサントの農業製品売り上げは22%増加した。モンサントはこの増加をいくつかの要素に起因するとしており「ラウンドアップ・レディ」種子の到来はその1つに過ぎないとしている。同社の研究は「ラウンドアップ・レディ」作物を使用すれば、雑草が繁殖する場所を確認してから除草剤散布を行えばよいので、除草剤の量はより少なくて済む、としている。しかし除草剤への免疫性という魔法の弾丸を与えられとしたら、農家はむしろより気兼ねなく除草剤散布を行い、本来ならば作物を傷つけないために大目に見るような雑草さえも駆除してしまう可能性がある。どちらにせよ「ラウンドアップ・レディ」種子はモンサント製の除草剤の長期的売り上げに重要な役割を果たしているのである。グリホサート(glyphosate:「ラウンドアップ」の有効成分)の特許は1991年には各国で有効期限切れとなり、米国でも2000年には失効となる。特許が切れたとしても全く問題はない。モンサントは「ラウンドアップ・レディ」種子とグリホサート系除草剤を併用している農家に、「ラウンドアップ」以外の除草剤を使用しない旨を約束する契約書に署名することを要求しているのである。
モンサントはかつて実質的に世界中の全てのPCB類を製造しており、同じように枯葉剤(Agent Orange)も製造していた。しかし今日では化学兵器よりも「生命科学」の方が、収益性が高いため、同社は1997年に化学部門を分社化し、1996年以来60億ドルを費やしてカーギル(Cargill:14億ドル)、デカルブジェネティックス(DeKalb Genetics:23億ドル)といった種子企業を買収している。
モンサントの本社はセントルイスだが、その権力の本体はワシントンDCにあり、モンサントの42人のロビイストと米国規制当局の間は親密な関係が存在する。1992年に遺伝子組み換え食品に関する政策を作成する際、米食品医薬品局(Food and Drugs Administration :FDA)は遺伝子組み換えが栄要成分の変化あるいは既知の健康リスクを伴わない限り消費者向けの表示と安全性試験は必要無し、と判断を下した。この政策はモンサントに7年間勤務し、その後も同社に勤務する予定のFDA審議官によって作成されたのである。1994年にモンサントが牛成長ホルモン(Bovine Growth Hormone:rGBH)を市場投入した時、FDAはrGBH不使用の表示を牛乳に付けないよう小売業者に警告した。rGBH使用の牛乳の発ガン性については論争があるが、イリノイ大学公衆衛生学部のサミュエル・エプスタイン博士は「FDAの共犯行為によって長年の主要栄養品目への大規模な不純物混入という実験に現在全国民がさらされている」と述べている。
モンサント(同社取締役会には前米国通商代表であるミッキー・カンターも名を列ねている)は昨年、遺伝子組み換え食品の試験と表示を行うと表明したニュージーランドとの通商条約を取り消すよう米国政府に圧力をかけた。クリントン大統領からの直接の圧力により、ゴア副大統領及び4人の閣僚はモンサント製のトウモロコシを輸入するようフランスを説得した。もしヨーロッパが食品表示の義務付けを導入した場合、米国はこれを非関税障壁として世界貿易機関(World Trade Organization :WTO)に不服申し立てを行う予定である。モンサントはクリントン大統領の世論調査員であったスタン・グリーンバーグを雇い、同社が世界の食糧危機を解決するだろうとヨーロッパ諸国を説得するために「収穫を始めよう」と銘打った160万ドルの広告キャンペーンを立ち上げた。アフリカのある国連代表はこの広告を「完全に歪曲的かつ虚偽的」と呼び、「エコロジスト」誌はモンサントの特集号を企画した。しかし雑誌出版社は訴訟好きで悪名高い同社に名誉毀損で訴えられることを恐れ、印刷用の版を廃棄してしまったのである。
種子販売が米国外に拡大するにつれ、モンサントが現地調査によって同社の特許を守ることは不可能になるだろう。そこで同社は、米国農務省(United States Department of Agriculture:USDA)と共に「ターミネーター技術(1シーズン後に種子が死滅するよう遺伝子を組み換える技術)」の米国での特許を保持しているデルタアンドパインランド(Delta & Pine Land)を買収することによって究極の特許保護方法を編み出したのである。もしターミネーター遺伝子が「流出」したとしたら、遺伝子組み換えしていないトウモロコシや大豆、麦やコメが結果的に不妊となり、モンサントのような企業に究極の独占状態を与えることになるのではないかと生物学者達は憂慮している。●
東京商科大学 尾関氏による翻訳
Resurgence紙 http://resurgence.gn.apc.org/