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ケインズの乗数効果の理論は、期間の区切りがなければ「無
限に金は流通して売買の道具となる」という当たり前の話にな
ってしまうので、必ず一定の流通期間が想定されているはずで
ある。
その期間内に市中に投下された貨幣によって広範囲品目に渡
って非常な多数回の売買(賃金も労働の売買とみなす)が行わ
れるので、増加総売買量を無限等比数列の和で近似することに
なっている。
これは必ずしも現実性のあることではない。仮に新たに市中
に投下された貨幣で非常な多数回売買が行われるとしても、消
費性向が50%の場合などにたまたま近似するだけで、100
%に近づくと乗数理論の計算値の方は無限大へ発散していくの
で現実離れしていくことは明らかである。
それ以前に、「新たに市中に投下された金で広範囲品目に渡
って非常な多数回売買が行われる」という前提をモデル世界で
はなく現実世界に機械的に当てはめるのは有害な思考停止でし
かない。
現実には、最初に述べたように「国が金を誰にどのようにば
ら撒いたか、それを市民のどのような人々がいついかなるかた
ちで使っていったか」が問題なのである。昔のオーストリアの
経済学者で乗数理論のグラフの上昇カーブが急すぎるのが納得
できず自殺した人がいたらしいが、一社会内で一定期間に広範
囲品目に渡る無限回の売買などありえるはずもないので、乗数
理論のグラフに現実性がないだけではないのか。
乗数理論的な考え方は銀行の信用創造機能とか経済学のいろ
いろな分野で適用されているらしいが、私は全てのその手の発
想においては現実の条件をきちんと考慮しないで機械的に乗数
効果を計算していくとデタラメな数字を生み出していくと思う
。
結論としてわかることは、政府の財政出動は結局支援金・補
助金とか、減税、商品・サービスの直接購入などによる「ばら
撒き」よりも、建設公共事業のほうが圧倒的に景気浮揚効果が
ありそうだということである。建設事業は工事の進行予定に従
って賃労働・運送サービスと非常に多種類の原材料と部品とな
る中間・完成製品、および生産機械を需要し、限られた期間内
に広範囲品目に渡って非常な多数回の連鎖的な購買を強制的に
引き起こすからである。
『ジャパンポスト』平成14年6月1日号 掲載
「公共投資」が少なすぎたことが不況の原因である
http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/jpost14-6-1.htm