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http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/koizumi6.htm
10月29日 日朝国交正常化交渉再開の課題と展望
・・・なぜ金正日体制の延命が必要なのか? これ以上まだ怪物を育てるのか?・・・
2002年10月26日
RENK代表/李 英和
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◎日本は席を蹴るのか
拉致問題と安全保障問題、とりわけ核兵器開発問題で進展がなければ席を蹴ることもありうる・・日本政府はこう明言している。もしこれが本心なら、日本政府は確実に席を蹴ることになるだろう。拉致問題の本質的な進展は望めない。安全保障問題については、最初から金正日は日本を相手にする気はない。だから金正日は平然と小泉首相を騙した。となると、憤然と席を立つ以外に選択肢はなさそうである。
だが、たぶん日本政府は席を蹴らないだろう。平壌宣言と同様、金正日が新たに用意する曖昧な口約束を「前向きな姿勢」とか「誠意の表れ」とか善意に解釈するだろう。脅し文句すらも「対話の意思表示」と理解し、交渉継続による「問題の平和的解決」の道を探ることになるだろう。日本は武力行使の選択肢を事実上禁じられているのだから、平和的解決を目指すしかないのは理解できる。問題は「平和的解決」の中身である。交渉の会議場に座り続けて話し合うだけが平和的手段ではない。ましてや、生来の詐欺師である独裁者に善意と誠実を期待して、なんらかの経済協力を前払いすることでもない。そもそも、日韓両政府による宥和政策(無分別な援助供与)が金正日という怪物を育てた。自国民を意図的に一割以上(3百万人以上)も餓死させる無慈悲な暴君に、毒ガス兵器・細菌兵器・核兵器を持たせ、ミサイルを作るヒマとカネを与えた。日韓両政府はこれまで「北東アジアの平和と安定」をお題目のように唱え、金正日相手に「援助交際」を続けてきた。このアプローチが無益などころか、有害であったことはあまりに明白である。
ブッシュ政権は当面、「平和的手段」を採ると述べている。一見、日本政府の対話方針と違わないようにみえる。しかし、平和的手段とは交渉だけではない。武力行使以外の手段がすべて含まれると理解すべきである。全面的な経済制裁も平和的手段に入る。今後、人道援助の中止を含めた経済封鎖を軸に対北朝鮮政策が展開していくものと予測される。欧州諸国はすでにKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)からの脱退の姿勢を表明している。これに日韓両政府はどう対応するのか。いま日本政府が問われているのは、交渉の席を立つか、座り続けるかではない。日韓両政府が「援助交際」以外の平和的な解決手段を打ち出すことができるかどうかが問われている。国連主導での経済制裁に踏み切ること決断し、国連で主導権を発揮できるかどうか。金正日体制が崩壊した後に生起する一定の混乱(産みの苦しみ)を甘受するかどうか、決断の時に来ている。
◎金正日体制の存続は必要(必要悪)なのか
「北東アジアの平和と安定」にとって金正日体制の急激な崩壊は好ましくない、と考えられてきた。だが、はたしてそうだろうか。外圧であれ自壊であれ、金正日政権が崩壊したとして何が困るのだろうか。北朝鮮の国民は何も困らない。
国際社会は金正日に「天使への変身」を期待してきた。だが、いまや金正日は悪魔へと変身をとげた。国際社会の努力と理解が不足していたせいではない。国際社会の一員となるための改革のチャンスはいくらでもあった。しかし、金正日がそれを拒んだ。金正日自身が「悪の枢軸」の一角に入る選択をしたのである。
金正日に改革開放を期待するのは無理である。なぜなら、金正日が無能な独裁者だからである。北朝鮮は経済と軍事の自力更生を目指し、実際には軍事偏重の無理な工業化を行なってきた。それを裏で支えていたのは旧ソ連の援助である。その結果、北朝鮮経済は「四重経済」(玉城素氏の指摘)とも言われるほど多様化・複雑化した。すなわち、民生部門の「第一経済」、軍事部門の「第二経済」、労働党中枢部門の「第三経済」、そして「ヤミ経済」としての「第四経済」である。しかし、その援助が途絶えた現在、多様で複雑な自国経済を操縦するだけの技量が金正日には欠けている。北朝鮮経済は、いわば燃料切れで廃車状態のまま暴走と事故を繰り返しているようなものだ。運転手が変わらないかぎり再生の道はない。もちろん、金正日は自分から車を降りるつもりはない。それなら、同乗者が追い出すか、外から強制停車させて引きずり出す以外に、大惨事を避ける術はない。
最善のシナリオは、北朝鮮国民が金正日を追い出すことである。だが、有力な反体制勢力はまだ育っていない。周辺諸国が育てようとしてこなかったからである。日本政府に至っては、金正日体制に反感を抱く北朝鮮難民を追い出す始末である(瀋陽領事館事件)。反体制勢力が育って初めて、権力中枢に動揺と分裂が生まれる。日本政府が交渉の席を蹴るのなら、いまからでも北朝鮮難民を支援することである。
金正日政権に対する経済制裁は一般に考えられているよりも有効だろう。これについては、米国の学者がすでに検討を加えている(N・エバースタット『北朝鮮の終焉』)。私なりに要約すればこうである。たしかに、フセイン政権やタリバン政権には経済制裁はあまり効かない。単純な経済構造の国には、経済制裁は有効性に欠ける。制裁への対処方法も単純だからである。だが、経済の多様性が高い国には効果が高い。とくに指導者の経済運営の技量が未熟な場合には有効である。これに反体制勢力の育成が加われば、一枚岩の権力中枢にも亀裂が走る可能性が高まる。そもそも、金正日政権には「韓国」という一大反体制勢力が存在する。
金正日体制が崩壊すれば「大混乱が起きる」と心配する向きが多い。だが、冷静になってよく考えれば、さほどの混乱はない。金正日後の国家再建のシナリオは極めてシンプルである。イラクやアフガンのように、深刻な民族対立や宗教対立は国内に存在しない。政権の受け皿作りも心配しなくて良い。韓国の支配権が素早く北上するだけである。難民問題も一般に言われるほど心配する必要はない。日本に向かう難民は、最悪のシナリオで最大に見積もっても10万人以下である。それも一度に流入するわけではない。金正日体制の下で、これまで数十万人の難民が中国に流入した。中国政府にとって頭痛の種の難民問題は、金正日体制が崩壊して韓国の支配権が素早く北朝鮮に及べば自然と問題は解決される。日本に流入する難民数も無視してよいほど少なくなる。それより、大量破壊兵器で武装した凶悪な隣人がいなくなるぶんだけ、周辺国が得られる利益は計り知れない。
韓国は一時的に経済的負担が増えることだろう。だが、それがどうしたというのか。いくら先延ばしにしたところで、いつかは支払わねばならない「税金」(相続税)である。日本政府の補償金、そして国際社会に支援を求めればよいだろう。中国とロシアも利益を享受できる。現政府の手に余る東北三省と極東ロシアの経済開発にとって、金正日の北朝鮮よりも、北半分を統一した韓国の方がはるかに有益なはずである。
もうそろそろ良いではないか。金正日には十分にチャンスを与えた。それに応えず、大量破壊兵器を玩ぶ金正日体制は不要であり有害である。腹を括って金正日体制を倒す潮時である。北朝鮮が将来に希望を持って生きられるようにしてやるべきである。そうする権利を認めてやってもよい時期である。北朝鮮の民衆はもう十分に苦しんだ。