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http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2002aug/27/W20020827MWA1Z100000002.html
日本のODA(政府開発援助)で恩恵を約束されたはずのインドネシアの地元住民
たちが、供与国日本に対し「援助はいらない」と声を上げ、九月五日に東京地裁に提
訴する。ODAをめぐっては、対象国である発展途上国の住民の間で、補償の不履行
や環境破壊などを原因とする反対運動が起こっている。援助の在り方など、ODAをめ
ぐる論議が司法の場で始まる。
今年五月に現地を訪れた「コトパンジャン・ダム被害住民を支援する会」事務局長の
遠山勝博さん(50)によると、住民の生計を支えるゴム栽培園は道路周辺でしか見られ
ず、飲料水用として作られたOECF(国際協力銀行の前身)の刻印のある井戸からは
濁水しか出なかったという。「移転先で生計が立てられず、水没の危険を冒して元の
村に戻る住民もいた」と話す。
支援する会メンバーの細川弘明・京都精華大教授(47)は「住民たちはODAで今より
良い生活が送れると信じていたが、結局失うものが多かった。今のODAはただ予算を
消化するために実施され、計画のチェックが不十分。現地の実態を外務省は知らなか
ったのではないか」と指摘する。
提訴の舞台となったインドネシアの「コトパンジャンダム」は、日本政府が一九八二年
から十一億円かけて事前調査し、九〇年に対インドネシア援助国会議で融資を表明
した。しかし、住民の立ち退き問題が未解決で、希少動物のスマトラゾウ生息地でもあ
ることから、異例の再調査を実施した経緯がある。
タイでは、火力発電所建設計画をめぐり環境悪化などを理由に地元住民たちが国際
協力銀行に融資をしないよう要望書を提出。インドのダム計画では、十分な補償がなく
住民生活を破壊するとの批判を受け、日本は九〇年に追加融資を凍結する事態とな
った。
円借款によるODAを担当する外務省有償資金協力課は「提訴の動きは承知してい
る。ODA供与に際して、環境への配慮や地元住民の生活保証は極めて重要と考え
ている。案件ごとに配慮し、プロジェクト後でも問題点があればすぐに対応している」と
いう。
国際協力銀行は「ダムは地域住民や産業に多大な貢献をしている」としたうえで、
「住民の移転地の一部に課題が残っていることは承知している。日本からインドネシア
政府への働きかけで、七月に州政府と住民代表が課題解決の具体的な行動計画に
ついて合意した。今後もインドネシア側の取り組みをチェックし必要な支援を続ける」と
している。
「大統領ファミリーに利権が集中していたと指摘されるスハルト政権を日本のODAが
支えていた」と批判する学者もいる。住民たちが受け取るはずの補償金や、ゴム園植
栽の費用はどこに消えたのか。ダム建設は本当に必要だったのか。法廷の中でODA
をめぐる疑問が究明されようとしている。