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2002年7月23日
宝島社のメッセージ広告 共感呼んだ「青空国会」論赤池幹(編集委員)
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◇政治への怒りを代弁
宝島社のメッセージ広告(16日東京本社朝刊)「国会議事堂は、解体。青空国会を提案します!」は痛快だった。国会議員がふんぞり返っているだけで、平気でウソをつき、国民のためになる仕事をしないのは、立派過ぎる仕事場(国会議事堂)を与えられて「自分は偉い」と錯覚しているからであり、この際、いびつな議員の人間性を正すために、国会議事堂を壊し、青空国会をしようと提案している。この広告への反響の多さは、この国の政治のゆがみと政治家への国民の怒りそのものだ。
メッセージ広告は、全国紙4紙に一斉に掲載された。掲載地域外読者のために簡単に再録すると、青空をイメージさせるブルーの「国会議事堂は、解体。」のキャッチコピー、芝生の議場にはパイプ椅子が置かれ、居眠りしたり、名札で肩たたきしたり、乱闘や携帯電話をする閣僚や議員、それを取り巻く傍聴人のパロディー写真、メッセージが掲載されている。コピーにドキリとし、写真に笑い、メッセージにうなずいた。
「人間、立派過ぎる仕事場を与えられたら、『自分は偉い』『この場所は他人には絶対に譲りたくない』といつしか思い込んでしまうもの」で始まるメッセージは、その典型として国会議事堂と議員を俎上(そじょう)にのせた。威容を誇る議事堂が議員の人間性をいびつにしているから、まずよどんだ空気がたまった議場を捨て広場に出るのが国会改革の一歩と提案している。
▽屋外なので寒暑、雨雪に耐えて議論する気力と体力が必要▽暗くなる前に議論を終えようとスピーディーになる▽見学自由の広場ではおちおち居眠りもできない▽白日の下ではウソがつきにくくなる▽全国巡回なので、議員は地元だけでなくさまざまな地域の実情を肌で感じられる――などの効用を挙げている。500人もの議員を収容できる広場は限られるから、議員を半減し黒塗り(高級乗用車)での移動は禁止する、とも提案している。
このジョークに満ちたメッセージを「ふざけている」ととるか、「そうだ」と思うか。私は「そうだ」派だ。案の定、宝島社にはこの日午前中だけで100本を超す電話、60件以上のメールが寄せられ、99%が「よく言ってくれた」という賛同だったという。国会の状況に私たちの「うんざり」感は沸点に達している。青空国会が実現するはずもないが「こんな国会、こんな議員なら」というイラ立ちを見事に代弁している内容に共感が寄せられているのだ。
同社のホームページには、「国会はダメだ、と否定しても始まらない。国民が国会や国政を見切り、興味を失い、ニヒリズムに陥ったら、この国は本当に沈んでしまう。多少力ずくでも、国会を再構築するためにゼロから立ち上げ直した方がよい、という思いを象徴的に表現した」と広告の趣旨が掲載されている。
かなり控えめな内容だと思う。昨今の国政選挙の投票率の低さ、さまざまな世論調査を見ても、国民はすでに不祥事続きの国会議員を「そんなもの」と信用していないし、失政続きに失望し、切磋琢磨(せっさたくま)した議論のない国会を見切りつつあり、失望がニヒリズムに向かっていると感じている。
鈴木宗男議員個人の逮捕など小事だ。問題は、なぜああいった人物が「首相候補」にのし上がってしまうのか、という政界のありようだ。議員に数多くの特権を与えているのは、「国民の税金を正しく使い、よい国政を」という期待だ。それを裏切ったらさっさとクビにすればいいのに、それもできない。「この場所を譲りたくない」集団保身でしかない。
なにより国民の「うんざり」感をかきたてているのは、政界の人材不足だ。年功序列と集金能力が幅をきかす政界に人材は向かわない。「自民党をぶっ壊してでも」と豪語した小泉純一郎首相は、ぶっ壊すどころか自民党の懐の中で長期政権を視野に入れ始めた。それでも44%の支持率(本社世論調査)があるのは「代わる人がいない」という情けなさでしかない。政治理念も持ち合わせない田中真紀子ブームは、人材不足の中での“口撃”一芸議員への「変革幻想」でしかなかった。2人への幻想は去ったが、「しかし、誰もいない」のが政界の現実だ。
広告のパロディーが現実そのものであるところに、身震いするほどの空恐ろしさと悲しさがある。
メールアドレス kishanome@mbx.mainichi.co.jp
(毎日新聞2002年7月23日東京朝刊から)
http://www.mainichi.co.jp/eye/kishanome/200207/23.html