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今年のカンヌ映画祭で特別賞を受賞したマイケル・ムーアさんに興味を持って、いろいろ調べて見ました。
■略歴、初の映画作品
1990年の雑誌に以下のような記事がありました。
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GMを皮肉ったドキュメンタリー映画「ロジャー&ミー」がドキュメンタリー映画としては異例のヒットを飛ばし、全米の話題を呼んでいる。
タイトルのロジャーとはGMのロジャー・スミス会長、ミーは監督ばかりでなく、自ら出演し、脚本、ナレーションを手がけたマイケル・ムーア氏。
映画の舞台はGM誕生の地であり、今なお工場が立ち並ぶデトロイトに近いミシガン州フリント。映画は自動車産業の衰退でこの10年に3万人もの一時帰休を出した同市の惨状に義憤にかられたムーア監督自らが、スミス会長に一目この有様を見てもらおうと決意。拒絶にもめげずスミス会長を豪華ヨットクラブに、華やかなパーティー会場にと追いかけ回す。
「この作品は僕の故郷でもあるフリントがどのようにして変わり果ててしまったのかを描いたもの。ただそれだけだ。」
と言う35歳のムーア氏は左翼的な雑誌「ミシガンボイス」を創刊、その後は総合月刊誌「マザージョーンズ」で編集者をつとめたジャーナリストで、映画は今回が初。おもしろいのは、この作品を作る軍資金が同誌をクビになった際、不当解雇で会社を訴えて得た和解金ということ。ムーア氏は現在のアメリカの混沌とした労働状況を象徴するような出来事によって、米国が抱える大問題、産業の空洞化をスクリーンに描いたわけだ。
これまでの米自動車業界は、不振の元凶は日本にありという図式だったが、この映画に対日批判を思わせるシーンは「外国車を運転するヤツは馬鹿だ」という町の落書きだけ。そこに、ワシントンの感情的な対日批判とはひと味違う対日観が見えるようだ。
(週刊ポスト1990年2月23日号)
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■映画第2作、体制への批判を強める
「ロジャー&ミー」は大ヒットして(ドキュメンタリー映画としては史上最高の興行成績)、ゼネラルモーターズのイメージを失墜させたそうですが、次の不運な企業はナイキでした。1998年公開の「ザ・ビッグ・ワン」は96年に低予算で3週間で撮影されました。ムーア監督が全米を旅して、各地で工場を解雇された労働者と話したり、リストラを進める企業に押しかけて幹部との面会を断られたりする様子を描きます。カメラの前に立つ度胸があったのはナイキのCEO、フィル・ナイトだけ。この時は自分のしていることの意味がわかってなかったんでしょう(笑)。
ナイト氏はカメラの前で「第三世界」にある自社工場を訪れたことは一度もないと認めている。工場の新設を訴えるミシガン州のフリントの失業者を撮影したビデオを見ても彼は顔色一つ変えなかった。
そして、この映画が初公開される直前になって、ナイキの広報部長がムーア監督に接触し、「いくつかのシーンをカットしてもらうにはどうしたらいいか?」と尋ねてきたという。ムーアはもちろん断りましたが、「代わりにカネとか、一生分のスニーカーでもくれるのかと思ったよ」と語っています。カットを要請されたシーンの一つは、インドネシアの工場で14歳の労働者を使っていることをナイト氏が認めた場面。
ムーアは言う。「これはマスメディアが無視しているアメリカの現実の一面を描いた。記録的な収益をあげているなら、なぜ労働者を解雇するのか。企業に乗り込んでそう質問する人間が私のような野球帽姿のろくでなし一人とは、情けない話だ。」
そして2001年にムーアはブッシュ大統領を批判する著作「大馬鹿者の白人たち」を書きましたが、9月のテロ事件で出版が難しくなります。今年はじめになんとか発売にこぎつけたところ、大ベストセラーになります。全米各地で行ったサイン会もすごい数の人々が押し寄せ、警察まで出動することもあったらしい。しかし流通が妨害されたり、印税がなかなか払ってもらえなくて事務所が維持できなくなったりと、かなり苦しい状況もあるようです。
http://www.pavc.ne.jp/~ryu/wjn/14/244-2.html
太田龍の時事寸評・第二百四十三回によると、「マイケル・ムーアのインターネットホームページ(ウエッブサイト)は今、月間の閲覧件数、八百万件に近い」そうです。
そして「六月二十三日現在、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストに、ムーアの「大バカ者の白人たち」は、十六週間連続入って居り、そしてまたベストセラー第一位に復帰した」とのこと。もの凄い人気です。そんな人物の話題が全くと言っていいほど日本には伝わらない。週刊日本新聞だけが伝えている状況です。どこかの出版社が「大馬鹿者の白人たち」の版権を取得したそうですが日本語版が出るといいですね。
■そして、カンヌ2002―疑惑の判定
以下の内容の大部分はTV Taro8月号によります。たまたまこの記事を読んだのがきっかけで今回の投稿をしました。普段はブロスを買うんだけど売り切れだったんですよ。これもひとつの縁。
2002年5月に行われたカンヌ映画祭。その受賞結果は、
パルム・ドール(これが最高の賞) 『戦場のピアニスト』ロマン・ポランスキー監督
グランプリ 『過去のない男』 アキ・カウリスマキ監督
監督賞 ポール・トーマス・アンダーソン、イム・グォンテク
主演男優賞 オリビエ・グルメ
主演女優賞 カティ・オウティネン
脚本賞 ポール・ラバティ
審査員賞 『ディバイン・インターベンション』エリア・スレイマン監督
第55回記念賞 『ボーリング・フォー・コロンバイン』マイケル・ムーア監督
カメラドール 『ボール・ド・メール』ジュリー・ロペス・キュルバル監督
短編パルム・ドール『ESO UTAN』
授賞式でのご機嫌なムーア監督の写真が以下のリンクで見れます。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/cannes/2002/p-48.html
カンヌ映画祭公式HPでの作品紹介「ボーリング・フォー・コロンバイン」
http://www.festival-cannes.org/films/fiche_film.php?langue=6002&id_film=3137379
三作目の映画で、銃や暴力の問題を扱っているようです。なぜかマリリン・マンソンも出ていますね。
現地で取材したモリヤマキョウコさんによると、パルム・ドールは「戦場のピアニスト」と発表されると「拍手よりブーイングが大きかった」らしい。コンペの一番人気はマイケル・ムーア監督の作品だった。しかしこれは第55回記念賞という「今年だけの特別賞でお茶を濁された」。モリヤマさんは「ドキュメンタリーを差別したのでは?」と納得できないようです。しかし過去にはドキュメンタリー作品が最高の賞をとった例はありますし、そんな差別があるなら最初からコンペ(本選)の対象にはなりません。コンペ作品は応募された何百本もの作品の中から実行委員会が選んでいるようです。
カンヌ映画祭は審査員の個性が賞に反映されるのが通例らしいのですが、今回の審査委員長はデビッド・リンチ。女優のシャロン・ストーンも審査員に加わっていました。ハリウッドの人たちです。ユダヤ系の影響力が強いハリウッドの人たちです。ムーア監督の作品がデビッド・リンチの趣味じゃないというのはわかる気もするけど。しかしわざわざ特別賞まで与えたということは「ボーリング・フォー・コロンバイン」が無視できないほどの作品だということなのでしょう。日本でも公開してほしいです。
パルムドール受賞の「戦場のピアニスト」は第2次大戦中にドイツ占領下のワルシャワにいた実在のユダヤ人ピアニストの話だそうです。監督のポランスキーもユダヤ系です。
ポランスキーといえば「ローズマリーの赤ちゃん」が有名ですが、これはマイケル・A・ホフマン2世が「フリーメーソンの操心術」で悪魔主義的な映画として批判していましたね。ポランスキーは吸血鬼の映画も撮っています。そして彼は1977年に13歳のモデルを強姦したとして逮捕されています。保釈中にヨーロッパへ逃亡したのでアメリカには入国できない状態らしい。そんな人物です。
キネマ旬報6月下旬号に今回のカンヌ・レポートが載っていましたが、今回は政治的な問題が選考に影響したのではないかとの見方が出ていました。フランス大統領選挙で、反ユダヤ的なルペン候補が決選投票に進出したことに対して、米国のユダヤ人の一部からカンヌボイコット運動もあったそうです。また、パレスチナ、イスラエル両国の作品がコンペに出品されていました。パレスチナの作品は審査員賞を受賞。「戦場のピアニスト」は無難な線ということでパルム・ドール選ばれたとの声も。
ちょっと気になったのは、キネマ旬報の記者はマイケル・ムーアの作品に好意的な発言をしているのですが、映画の内容については一言も触れていないのです。日本のいろんなホームページで今回のカンヌについて検索しましたが、同様にムーアの映画に対するコメントは全く見つかりませんでした。検閲(間違いなく日本にも検閲はあります))の対象になっているのかな?
ところでカンヌ映画祭について調べていくうちに、興味深い発言を見つけました。
『1979年第32回映画祭では、審査委員長の作家・フランソワーズ・サガンが、「作品の審査に実行委から圧力がかかっている。グランプリ作品は公正な審査の結果ではない」との爆弾発言騒動があった』そうです。この時のグランプリ作品である「地獄の黙示録」も「フリーメーソンの操心術」で秘密結社の思想とのつながりを指摘されていた作品です!白人たちはいったい何をやっているのか?