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「瀋陽亡命事件」に見られる日本政界の右往左往 投稿者 あっしら 日時 2002 年 5 月 11 日 19:49:44:

当ボードに「瀋陽の日本領事館で起きた北朝鮮家族の亡命事件に関する新聞記事をいくつか転載したので、事件そのものではなくその反応に対する感想を簡単にまとめてみた。


● 事実関係の精査なしに対中非難言辞を吐き出す愚かさ

びっくりしたのは、事実関係が確認されたとは思われない段階から、政府をはじめとする諸政治家が、ジュネーブ条約を持ち出して中国政府非難を行ったことである。

対中批判(敵対)意識を基礎に、南京大虐殺問題・教科書記述問題・靖国神社首相参拝問題などで見せる中国政府の対日非難言動に対抗する絶好の機会を得たと考えるのはわからないではないが、“条件反射”的な対中批判言動は、“仲間うち=同士”の称賛を浴びたり、胸のつかえがとれる行為かもしれないが、政治家としての資質を疑わせるものである。


● 対中批判高まりの背景

強い対中批判の背景には、亡命希望家族が拘束される状況が映像で流れ、それに対する領事館職員のアイマイな対応振りも同時に見せられ、“国際世論”で対日批判が起きたことがあるように思われる。

事実経過はわからないが、中国外務省の言い分を認めてしまったら、日本だけが“悪者”になってしまうという危惧心も生じたのだろう。


● 亡命事件ではなく敵対行為事件であった場合を想定していない

起きた事件は結果として亡命事件だったようだが、大使館や領事館に無理に入り込もうとする人がすべて亡命希望者とは限らない。

中国人にも反日意識を強く持っている人はいるし、北朝鮮人でも反日意識を強く持っている人はいる。
爆弾や銃器を使った攻撃とまで言わなくとも、火を放ったり、スプレーで抗議スローガンを書いたりなどの行為も考えられる。

今回の侵入がそういう目的であったら、現在対中批判を行っている人たちのなかには、「中国政府は日本領事館に対する警護を怠っている」と非難する人が出てきた可能性もあるだろう。

日本の在外公館を攻撃したいときは、家族連れを装って侵入する戦術を採ればいいということになってはならない。
日本にある外国公館が基本的に日本の警察力で警護されているように、在外公館の安全は相当部分現地警察の力に負うのである。


● 日本は駆け込んでくる“政治難民”や“経済難民”を受け入れる覚悟はあるのか

事件後、メディアや政治家は人道主義や人権意識を高めているが、日本は、ベトナムやカンボジアなどから一定数の難民を受け入れてはいるが、難民申請に対して間口を大きく広げているわけではない。

北朝鮮の経済的な苦境を考えれば、中国経由で難民申請する北朝鮮人は今後も続くと思われる。
北朝鮮政府が意識的に難民を推奨するとは思わないが、黙認するかたちをとれば(スペイン大使館に駆け込んだ人たちの処遇をみるとその匂いがないわけではない)、それを敏感に察知した人たちが国外脱出に動く可能性がある。

韓国や中国が“北朝鮮の崩壊”を恐れている最大の問題は、自国への大量の難民流出である。

北朝鮮からの難民を自国に受け入れる気がないのなら、北朝鮮国民が国内でぎりぎりであれ生活できる条件を国際的に支援してつくり、北朝鮮政府に出国管理を厳しくしてもらうほうが理に叶っている。

北朝鮮の政治体制は、なんであれ、北朝鮮の国民自身が決めるしかないことである。

瞬間湯沸かし器的な反応する統治者や政治家が多い現実を見せつけられると、憲法改正(私は改憲志向)や「武力行使事態法制」(違憲法案)に強く反対せざるを得ない。

国家対国家の関係は冷静に取り組まなければ、禍根を残すことになる。


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