米軍横田基地(東京都福生市など)に勤務する一部の日本人従業員が昨夏以降、深夜に洗車を命じられるなど人権を無視した異常な労働を強いられているとして、全駐留軍労働組合(全駐労)東京地区本部は来月上旬にも、基地周辺に座り込んで抗議する。組合は東京防衛施設局を通じ改善を求めているが、基地側は「軍の決めたことは絶対」などと回答。基地問題に一石を投じかねない事態となっている。
訴えているのは、米軍人や来日した外交関係者を送迎する「モータープール車両運行課」の日本人従業員約50人。現在の監督者(米曹長)が昨年6月に就任後、事前協議がないまま勤務時間が変更されたり、休日出勤を強要されるケースが相次いだ。待機時間にも見張りを付け、「手を休めるな、時間があったら車を磨け」などと命令されるようになったという。
最高レベルの厳戒態勢が基地内に発令された昨年9月11日の同時テロの翌日には、同課従業員全員に出勤命令が出され、終日、約30台の車を洗うよう指示された。
今年1月には「危機事態で必要とされる職場と格付けられていることを承認し、管理者が必要と見なせば出勤する」との覚書に署名を求められ、2月から緊急時の待機人員だけだった夜勤に7人が増員された。
ある従業員は「夜勤者が夜中から朝まで洗車し、日勤者が同じ車をまた朝から洗車する。異議を唱えると、制裁(出勤停止などで、3度目には解雇)対象と言われる。体調不良や不眠を訴える従業員も続出している」と話している。
日米地位協定に基づく基本労務契約では、日本人従業員は日本政府が雇用し、米軍側が使用主。この制度上、組合が基地側と直接交渉できないため、全駐労東京地区本部は東京防衛施設局を通して、労働環境改善を基地側に求めてきたが、「従業員には十分な説明をし、理解しているはず」「シフト変更は必要だから。軍が決めたことは絶対」などと口頭で回答があっただけ。
全駐労東京地区本部の河津勝則委員長は「日本人は国の法律で働く権利があるはず。国が何もできないでは済まない。夜間洗車や休日出勤の手当は日本の税金から無駄遣いされていることを忘れてはならない」と語る。
読売新聞社は先月6日、同基地に質問状を出したが、現在も明確な回答はない。(読売新聞)
[4月24日14時38分更新]