資源確保、対米牽制
【北京22日=山本秀也】今月上旬から中東など五カ国を歴訪していた中国の江沢民国家主席は二十二日、最後の訪問国イランを離れ帰国した。米国との緊張関係を抱えるリビア、イランでは、首脳会談で対米牽制(けんせい)を強く打ち出すとともに、石油・ガスの調達をはじめ二十三もの合意文書に調印するなど、政経両面で巧みな戦略をみせた。
年明け後の中国要人による中東訪問は、呉儀・国務委員(副首相級)のイランなど歴訪(三月中旬−四月上旬)のほか、現在エジプト訪問中の朱鎔基首相(今月中−下旬)ときわめて活発だ。地域情勢に関して、中国側はパレスチナ問題でのイスラエル非難、米国の軍事力突出に対する警戒など、いずれの会談でもアラブ諸国の基本的な立場に露骨ともいえる支持を打ち出している。
江主席の歴訪先では、中国元首として初訪問のリビア、十年半ぶりの訪問となったイランとも、当の中国と並び米国の「核攻撃対象国」と伝えられていた。米国にとっては挑戦的とも映る組み合わせとなった。
新華社電によると、リビアのカダフィ大佐との首脳会談で、中国側はリビアに対する制裁の早期完全解除を表明した。ハタミ・イラン大統領との会談では、イランとの協調姿勢ほか、対イラク制裁問題など湾岸情勢でも米国と異なる見解を強く打ち出した。
こうした政治的な共同歩調に上乗せして、中国は各国との経済関係の強化をまとめ上げた。主な柱は、中国の資源確保▽中国政府系企業の現地投資−の二本といえる。
資源分野では、江主席がリビアとの間で石油開発協力で合意したほか、イラン訪問ではガス開発に関する枠組み協定に調印した。また、ほぼすべての訪問国との間で二重課税防止協定を結ぶなど、中国企業の投資拡大に向けて地ならしを終えた。
外交成果の獲得と並行して進められたのが、医療、水利協力を含む中国の対外援助だ。露払いを務めた呉儀国務委員が援助外交の役割を担ったが、江主席の訪問でもチュニジアとの間で、中国政府の無利子借款による経済技術協力協定が結ばれた。
4月23日 05:15