市立図書館が西部、渡部両氏の著書を廃棄
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教科書論議高まった昨年8月
船橋市教委調査へ
千葉県船橋市の船橋市西図書館(木村洋一館長)が、「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆に加わった扶桑社の教科書採択をめぐる論議が高まっていた昨年八月ごろ、教科書の執筆者で評論家の西部邁(すすむ)氏らの著書を大量に廃棄処分にしていたことが十一日、分かった。廃棄処分について木村館長は「政治的、思想的意図はなかった」と説明しているが、船橋市教委は図書館の対応について「故意とみられても仕方がない」として、調査に乗り出す方針だ。
同図書館は西部氏の著書を、四十四冊所蔵していたが、昨夏、四十三冊を廃棄し、現在は「六十年安保センチメンタルジャーニー」の一冊だけしかない。また上智大名誉教授、渡部昇一氏の著書も五十八冊あったが、「そろそろ憲法を変えてみようか」「国益の立場から」など半数近い二十五冊を廃棄した。
木村館長によると、図書館では例年九月に本を虫干しする「曝書(ばくしょ)」を行い、その前に蔵書整理として破損本や古くなった本、貸し出し回数の少ない本を処分している。
ここ数年、社会科学分野の蔵書が増えたため、昨夏は、その関係の本に絞って整理することになり、担当者の判断で約五百冊を廃棄処分にした。この段階で西部、渡部両氏の著書の多くが「貸し出し率が低い」などの理由で廃棄処分の対象になったという。
しかし、貸し出し頻度のデータについては「年度が替わったので簡単には取り出せない」としている。
廃棄処分が行われた昨夏は、扶桑社の教科書採択をめぐる論議が高まっていた時期。特定の著者の蔵書を大量に廃棄処分したことについて、木村館長は「結果として誤解を与えかねないが、担当者に事情を聴いた結果、政治的、思想的な理由はなかったし、あってはならないことだと考えている」と話している。
だが、船橋市教委では、図書館の対応に問題がなかったか、関係者から事情を聴くなど、調査を行うことにしている。
≪予測していた≫
西部邁さんの話「図書館の大半には強かれ弱かれ左翼人士がいる。教科書問題のように激しい論争が起きると私の本を廃棄するというのは左翼的行動で驚くにはあたらない。この国の言論は暗黒時代に入っており、このことは予測していた。言論といえども、イデオロギー闘争からいわゆる焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)が起こるのは歴史の常だ。これからもさまざまな所で同様のことがいいように進むだろうが、本を焼いたなら、せめて理由ぐらいは明確に示してほしい」