(回答先: 「ゆとり教育」の現場から 投稿者 ROM潜 伊-HEXA号 日時 2002 年 4 月 10 日 20:27:52)
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000013290
4月4日をクリックしてください。こちらは、JOG愛読者からの投稿のようです。
しかし、ど〜もここ(JOG)は意図的に北朝鮮情報を流してるような・・・?
_/ _/ _/ ロシアの教育問題
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_/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ 東知世子のモスクワ通信
_/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ _/ H14.04.04 5,335部
_/ _/ _/ _/ _/ _/_/_/ JOG Wing No.491
_/ 国際派日本人の情報ファイル
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現在、モスクワの教育現場で起きている問題は、日本と共通
する点もあるが、もっと深刻というべきだろう。まず、なによ
りも地方公立の学校では、教師に対する給料の遅配などの、恵
まれた経済状況にある今の日本では、まず考えられないような
事態が多発しており、ひどいところでは、暖房が入らない等の
基本的な運営からして厳しい状況にある。
しかし、一方でモスクワ(ロシアの中で、例外的に経済状況
がよいとされる)ではまったく違う角度で複雑な問題が広がっ
ているようだ。
というのは、いわゆる共産主義時代(もっと前という話もあ
る)から続きた裏の賄賂社会が、ついに教育界においても、相
当の広がりを見せているということだ。これは、定期的な試験
の結果操作に始まって、卒業時の論文の内容事前漏洩、課題論
文の代筆も金次第なら、兵役が免除される大学や名門校に入る
のも、8割方が賄賂とコネという話すらある。この原因に考え
られるのは、当然、教師側のモラルのなさもあるが、その背景
には、その給料の不当な低さも理由にある。
こういった表立った腐敗状況に加えて、ロシア全土に不登校、
あるいは学校に通ったことのない子供たちが3万人近くいると
いう統計もあり、この背景には両親の育児放棄などの深刻な社
会問題がある。さらに、このようなアルコール中毒、幼児虐待、
麻薬中毒の両親から逃げ出す子供たち、いわゆる浮浪児も30
万人か、さらにもっといるという話である。
もちろん、すべてのロシア人が育児に対して、熱意がないと
いうわけではないし、立派な両親もたくさんいる。が、統計的
に見ると、かなりそういう割合が低くなるのだ。うまく機能し
ている教育面を見れば、羨ましいほどの成果をあげている芸術
面の充実がある。もちろん、やや特殊ではるが、映画、演劇、
バレエ、音楽関係の優秀な人材を輩出してきた誇りもあり、現
在も、その伝統は健在である。学問の世界でも、比較的厳しい
現実の中で、かなりの成果をあげている分野も少なくない。
だから、すべてに渡って腐敗しているとはいえないまでも、
それでも、現状はほとんど待ったなし、という感じにまで、追
い詰められているといっていいだろう。当然、政府もさまざま
な対策をたて、毎年各地に養護施設を建設し、努力している形
跡はあるにせよ、実際問題、まったく目に見える効果が出てい
るとは思えないのが、残念である。
とにかく、この問題の根底にあるのは、現実の社会・経済問
題、失業などだけではない。おそらく、ロシア人が共産主義時
代に慣れてしまった悪弊の数々から、いまだに脱却できていな
いのは、こちらに暮らしてみると、非常にはっきりと見えてく
る。
まず、根本的な問題点を、いくつかに分けて考えてみたい。
第一に家族・社会・個人の責任感のなさ。これは、日本でも最
近は顕著に見られるようになってきたが、まさに社会主義的な
システム、官僚社会など、人数が多くて、個人に対する管理が
甘い、あるいは、ほとんど個人に対して、必要な権限すら与え
ず、それを評価したり、機能的に改革する部分が麻痺した組織
で起こり得ることのすべて。
まさに、巨大国家内部で起こってくる不祥事の数々、そのほ
とんどは惰性のなせるわざだろう。誰も責任を取る気がない。
職場では、無駄話をするのが楽しみで、客に対して横柄、尊大、
並んでいても無視して休憩に入るなど、いまだにその勤務状況
を見れば、いかに非効率に仕事をしているかわかる。
また、これは男女関係でも、非常に明らかだ。離婚率の異常
な高さと、何度も結婚することに対して、まったくの羞恥心が
なかったりするのも、恐ろしいというより、こちらが恥ずかし
くなるくらいである。異性に対するモラル、貞節さの欠片もな
い態度、ロシア人の女性は、外見としてはモデルのようだった
りするが、内面の乱れは、やがて外に表れてくるという意識が
まるでない。したがって、30代を超えて、外見の衰えととも
に、金持ちの旦那と離婚訴訟になる、あるいは、男が若い愛人
を作って去っていく、それを、戻すための怪しい祈祷産業が栄
える、まるで笑い話だが、本当のことなのだ。日本も、たまに
企業内不倫で、妻を捨てて愛人に走るような不徳な男がいるよ
うだが、そういう者は厳しく社会的に成敗すべきだろう。その
ようなことが習慣になると、ロシアのように取り返しがつかな
いような、社会になる。
第二に、宗教というもの、信仰というものから、いまだに離
れている人がほとんどで、世の中に信じるものがない。したが
って、アルコールなどにも溺れやすい。(もともと、体質的な
ことに加え、精神的な弱さを感じる)これは、国家、政府、銀
行、警察に始まって、周りのあらゆるものに対する、一定の不
信感と、逆に身近な人間はやたらと、信じてしまったりする盲
目な態度、騙し騙される社会だという前提にしか、(それが当
たり前)暮らせない不幸に繋がっていく気がする。
これは、移民して解決する問題ではなく、やはり移民した先
でも問題を起こしていることからも、個人的なモラルと信仰の
関係はかなり重要な人間の道徳観形成の一部といえるだろう。
ここでわかるのは、日本がいかに幸せな社会であるかというこ
と。その基盤にあるのが、一定の人間同士の信頼関係と、相手
の日本人が、大体、同レベルの常識を持っているという前提に
立てるような、非常に人間関係において相互理解の進んだ段階、
高度に道徳観が一致した社会であることを、嫌でも認識させて
くれる。(もちろん、その弊害もなくはないが)
もちろん、昨今の事件、政治家などを見て、幻滅することは
多いとはいえ、海外に出ればわかる。特にロシアでは、それど
ころではない状況にもかかわらず、「井の中の蛙」とでもいう
のか、まったく海外に出ても、よいところを模倣しようという
考えに至らないらしく、ロシアでは、「こんなのが当たり前」
と割り切ってしまっている。したがって、現状を身の回りから
でも、改善しようという向上心もあまりなく、多くの人がたい
てい、非常に自己中心に生きており、個人の幸せと社会の幸せ
が一致するという意識など、ほとんどないのがかなり絶望的で
もある。
そして、第三に考えられるのが、日本でもそれに近いことが
いえる部分もあるが、ロシアという国の国民であることに、誇
りが持てない社会であること。
これは、チェチェン戦争などを見てもわかるように、自分の
国の軍人を多数、ほとんど犬死にさせておいて、まだやめられ
ない現状。さらには、若い軍人が軍隊から次々と逃亡し、内部
の金を盗んだり、あるいは、ひどいケースになると、地域の住
民を巻き添えにして、殺したりする事態。もう露骨に、軍隊と
いうものの中の問題が外に漏れている。
が、それにもかかわらず、相変わらず、国家としては、その
軍隊を維持するための一般国民からの召集を続けている。金持
ちのほとんどは金を積んで、兵役免除される大学に行かせる、
あるいは、留学させるなどの措置を取って免れるが、大半の兵
隊は、地方の貧しい都市から集められてくるようだ。このよう
な兵役逃れのための場所となった大学など、ほとんど真面目に
勉強するわけがない。
金持ち子弟の多くは、その暇と金を持て余した学生生活の中
で、最悪の場合、薬物に手を出し、あるものは、高級車に乗っ
ていたばかりに、犯罪に巻き込まれて殺害され、あるものは、
薬物の乱用で若い命を落とすなど、考えられないほど退廃的な
雰囲気がモスクワの金持ちの層では蔓延している。
こんな国家を誇れというのも、ナンセンスである。しかし、
ロシアとて歴史上、数々の偉大な学者、音楽家、芸術家を輩出
し、トルストイ、ドストエフスキーのような文学界の巨匠を生
み出した国でもある。せめて、この歴史的なところから、学ん
でくれればいいものを、いまどきロシアの子供たちの本離れは
相当ひどいらしい。教師をしている友達の嘆きによると、読書
量が少ないという段階の問題ではなく、読書の速度が信じられ
ないほど遅く、また一度も海外に出たことのない子供なのに、
ロシア語の発音がおかしく、さらに、ロシア語の基本的な単語
すらまともに綴れない12−3歳の子供が増えてきたという。
これがいわゆる、ロシア流「ゆとりの教育」結果だと彼女は
いう。ロシアでは、幼稚園でほとんど何も教えず、親もまた多
くが教育にまで関心をもつ余裕がないケースも多く、しかも小
学校1−3年(7歳から10歳くらい)の間を受け持つ教師の
資格が、日本でいうところの幼稚園の先生のように、短大卒な
どの比較的学歴が低く、しかも、教養のない女性が受け持つこ
とが多いという。
したがって、その間は「ゆとりの教育」ならぬ、非常にのび
のびと(?)ほとんど子供に躾も施さず、好きなようにさせて
いるために、子供たちはあまり教師のいうことを聞かず、集中
力というものが養われない。また、こちらは日本に比べても季
節の固まった休暇が長いので、家庭が放任主義の場合、本当に
放っておいて育てるに近い感じになる。
そして、12−3歳になって、本格的にロシア文学などやり
始めると、とんでもないことが起こるらしいのだ。つまり、集
中力がないから、授業中に騒ぎ、わけのわからないことで笑い
出したり、課題になっている本も読むのが面倒なので、トルス
トイの「戦争と平和」は、ダイジェスト本で三行読んだら、そ
れで読んだものと思ってしまうなど、信じられないほどに知的
年齢と知的関心が、後退してしまっているというのだ。
つまり、第四の問題は活字離れといえるだろう。これは、ソ
連時代などには考えられなかった現象で、当時は思想的な統制
などから、むさぼるように本を読んでいる人が非常に多かった
という。だが、現在の地下鉄で見かける人たちが読んでいるの
は、スポーツ新聞のような類か、恋愛小説、推理小説、あるい
は、クロスワードパズルを熱心にやっている程度である。ロシ
ア人なのに、ロシア語がまともにできないなんて!と思われる
かもしれないが、この言語は相当語形変化、単語の綴りなどが
複雑で、しかも発音に関しても、ロシア人に生まれたところで、
多少は巻き舌など、訓練しないとできないような発音もあるわ
けで、ただロシアに住んでいれば、まともなロシア語を話せる
ようになるというのは、汚い言葉に関しての話で、美しいロシ
ア語を話すのは、ロシア人とて難しいらしい。
日本でも、おそらく厳密に言えば、同じことがいえるだろう。
日本語にいたっては、ロシア語よりさらに複雑に漢文、漢詩、
古典などの要素も、長い歴史の変遷も複雑に絡んでいるのだか
ら、国語の難しさと重要さは、もっと認識させるべきかもしれ
ない。
とにかく、問題の多いロシアであるが希望もある。ロシアの
人々が逆境に強く、どんなに大変な事態になっても、なんとか
それを乗り切って生きていく逞しさと、また、同じ国民の苦し
みを共有できるような優しさ、大陸ならではの寛大さや、エネ
ルギッシュに改革し始めると、信じられないスピードでやって
しまうような意外なくらいの順応性を持っているから、「まだ、
どうにかなる!」ときっと心の中で思っているのだろう。
こんなロシアでも、どうにかなるのだから、日本はもっと
「なんとでもなる!」と楽観的に考えなければ、と自戒する日
々である。
モスクワより 東 知世子
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