米ウォルマート・ストアーズの年間売上高は民間企業として世界最大の2200億ドルという。日本円にすれば約29兆円。スウェーデンの国民総生産に匹敵する。似たような数字をどこかで見かけた、と思い出してみると、日本の地下経済の規模なのだった。
地下経済。オモテに現れない経済のことで、脱税や売春、麻薬密売などがそれにあたる。浜銀総合研究所の門倉貴史研究員の試算によると、たとえば女子中高生の援助交際の市場規模がおよそ500億から630億円など、積み上げていくならば、日本の地下経済規模は高めに見積もって17兆1000億円だという。別の推計方法を使うなら23兆2000億円とも。
これは日本の国内総生産の5%前後ということになるが、先進国の中では比率が低い。米国で7.5%、英国で10.2%、イタリアはマフィアの暗躍があって23.4%と見積もられている。一般的には、職の少ない発展途上国ほど、地下経済比率が大きくなる。
ウラの金といえば、対テロ「戦争」を通じて知られるようになったビンラディンの資産が300億あるいは500億円と話題になった。確かに巨額ではあるのだけれど、彼をめがけて飛び立ったステルス爆撃機の価格は1機2800億円ともいう。世界長者番付トップのビル・ゲイツならともかく、ビンラディンが5人集まったって1機も買えない。両者が戦うというのは、いったいどんな「戦争」なのか。ちなみに、世界全体の武器取引額は年間15兆円とか。
さて、怪しげな話ばかり並べたけれど、地下経済には含まれないものの、オモテに現れない経済にはもうひとつあって、家事など家計の無償労働がそれ。内閣府の推計によれば国内総生産の2割を占めており、縁の下で日本を支えているわけだ。地下経済にお金を回すくらいなら、もっとこっちに捧げたいものだが、いかが。