パレスチナ人に対する殺戮と占領地拡大の軍事行動を推し進めているシャロン首相は、1982年9月に起きた「レバノンのパレスチナ人難民キャンプ虐殺事件」の首謀者であり、住宅(国家)基盤相として、パレスチナ自治区への“入植活動”(パレスチナ人からの土地強奪)を強硬に推し進めてきた張本人である。
シャロン氏は、昨年初めに首相に就任してからも、「オスロ合意」の“否定”を政策の基礎に置き、さらに強硬なパレスチナ人敵視政策と“入植地拡大”を推し進めてきた。
シャロン首相は、“入植地”=領土をさらに拡大するため、パレスチナ人からの攻撃の危険も顧みず“新天地”確保に狂奔してくれるだろうと考えるロシアなどからの移住者拡大を画策してきた。
「イスラエル建国」後半世紀を経て世俗主義的価値観を持つ国民(シオニスト二世)が増大し、子供もあまり産まないという国内事情では、強固な“防衛体制”を築くために、イスラエルの地によりよい生活基盤を求めるユダヤ教徒を外から大量に流入させなければならない。
昨年秋にロシアを訪問したシャロン首相がもっとも強くプーチン大統領に要求したのは、より多くのユダヤ教徒をロシアからイスラエルに出国させることであった。
イスラエルへの移住者増大は、イスラエル国家に否応なく“拡張衝動”をもたらすものである。
“イスラエル領土”で移住者が生活基盤が持てない状況になっているのだから、パレスチナ自治区を武力で蹂躙して“入植地”を確保しなければならない。そこは、当然、人が生活を維持できる条件の土地であり、そこで生活していたパレスチナ人は暴力で追い立てられ、都市に逃げ込むしかない。
イスラエルは、このような「土地強奪活動」を国家政策として長年にわたって行ってきた。
パレスチナは、「旧約聖書」でも“乳と密が流れる土地”と記述されているように、政治的シオニストが時として主張する「大勢のユダヤ人が困難辛苦に耐えてようやく収穫の地に変えることができた」という“神話”を受け入れられるような荒地ばかりではない。
現在“入植”対象になっているところにそのような土地が多いだけでの話である。
果実や穀物の生産に適した土地が多くあり、収穫物を大量に輸出できるほどであった。そのような土地をごっそり政治的シオニストがテロ活動で奪った結果が現在の姿なのである。
これまでの政権やシャロン政権のように、“イスラエル領土”に生活基盤としての土地がないという状況のなかで移住者拡大政策をとり続けていけば、その行く着く先は一つしかない。
パレスチナ自治区で悪い条件ながらも生活基盤に出来る土地をさらに強奪し、それがなくなったら、本当の「パレスチナ」(“イスラエル”+パレスチナ自治区)からさらに外に“進出”し、“入植地”の対象を見出さなければならなくなる。それが、ヨルダンになるのか、レバノンになるのか、シリアになるのか、それはわからない。
さらに言えば、“近代文明国家”を標榜するイスラエルには石油資源がない。
ひとの土地を暴力で奪い取ることになんのためらいも持たないシャロン政権が、石油資源に惹かれ、それを強奪する行動に出ないという保証もない。
しかも、“不幸なこと”に、2、3歩進めば、そこにはイラクやサウジアラビアという豊富な石油資源を抱えるアラブ国家が存在する。
そこにある石油資源を、なんとか国際的非難を浴びずに、浴びたとしても軍事的に撃退されることなく手に入れたいという衝動をシャロン首相が持っているとしても何ら不思議ではない。
とりわけイラクは、アメリカから「テロ支援国家」・「大量破壊兵器保有国」という難癖のレッテルを貼られ、「文明諸国」もそれに大きな異を唱えていない(はっきり言えば、同調している)という格好の“標的”国家である。
シャロン政権は、テロリストに対する戦いを宣言して大虐殺軍事行動を起こしたブッシュ政権にならって、「対テロの戦い」を名目にしたパレスチナに対する大虐殺軍事行動を繰り返している。
そうであるならば、シャロン政権が、「国際的対テロ行動」を錦の旗として、イラクを米英とともに攻撃することは決して夢想だとは言えないだろう。
アメリカの支配層は、9・11空爆テロ以降、サウジアラビア政権への批判を強めている。サウジ王室の非民主性や宗教的“原理主義”をあげつらい、サウジ王室の打倒や「サウジの間接支配から直接支配への転換」を公言する人たちまでいる。
このようなアメリカ支配層の動きに、シャロン政権が心動かされないままでいられるだろうか?
世界の人々が、今まさに新たに始まろうとしている大虐殺活動による“大イスラエル”の現実化やブッシュ政権によるイスラム法国家絶滅策動を、たんなる「対テロの戦い」だと見誤っているのではないかと危惧せざるを得ない。
シャロン政権やブッシュ政権の目標は、「対イスラム戦争」であり、国際金融家の利益に奉仕する「グローバリズム」の真の世界化である。
今この時点で、政治的シオニストとブッシュ政権の暴挙を止めなければ、後戻りが出来ない大災厄ととんでもない亀裂を世界にもたらすことになる。
「対テロの戦い」というインチキを旗印にしたブッシュ政権の「アフガニスタン大虐殺軍事活動」を「文明諸国」が支持してきたことが、シャロン政権の暴挙をずるずると許してしまうことにつながったのである。
このところのシャロン政権の軍事行動を見聞きしていると、資金的な支えでもある米国政権以外のどんな非難も意に介さず、しゃにむに拡張を続けるという態度である。
逆に、キリスト教会空爆や欧州人デモ隊発砲事件などを見ていると、国際社会を挑発し、国際社会から“隔離”されたほうがやりやすいと考えているのではないかとも思われる。
シャロン首相は、そう遠くないうちに、「テロリストを見逃せと言う国家はテロリストの共犯者だ。米国の対テロ戦争を支持した国がどうしてイスラエルの行動を非難できるのだ」と恫喝するだろう。
シャロン首相のそのような投げかけに、ブッシュ政権の「対テロの戦い」を支持してきた「文明諸国」の政府やメディアはどう応えられるだろうか。せいぜい、「やりすぎはいけない」といったものだろう。
ブッシュ政権が「中東におけるテロ行為の停止のために行動を起こす」と表明した現在、「対テロの戦い」のまやかし=9・11空爆テロの真相を追及しなければ、現在の流れを止めることはできない。
現在の世界は、これまで何十年にもわたって続けられてきたパレスチナの地での政治的シオニストのテロ活動に終止符を打つのか、それとも、中東全域を“パレスチナ”にしてしまうことを許してしまうのかという岐路に立たされているのである。