◆米国の「内戦」
米国内でさまざまな形での「文明の衝突」が見られるようになってきている。それは具体的には、共和党対民主党という形をとったり、反ユダヤ対親ユダヤといった形を見せることもある。たとえば以下の新聞記事からもその状況を把握することができる。
米大統領報道官が前政権批判 パレスチナ問題 数時間後に発言撤回
【ワシントン28日=土井達士】米国のフライシャー大統領報道官は二十八日、パレスチナ問題をめぐって衝突が激化してきたのは、クリントン前政権が二〇〇〇年にキャンプデービッドで和平会議を開き、過度の期待を持たせながら失敗に終わったのが原因だとの見方を極めて強く示唆する発言を行った。しかし、「ホワイトハウスは過去の政権を批判しない」という米政界の不文律を破った形のこの発言に対して批判があがり、同報道官は数時間後に書面で発言を撤回し「遺憾の意」を表明する結果となった。
(『産経新聞』3月1日朝刊)
またこの日には、ベトナム戦争時のニクソン(当時大統領)とキッシンジャー(当時大統領補佐官)との会話録音テープが公開され、ニクソンが劣勢挽回のために核攻撃を示唆し、これを補佐官が諌めるといったやりとりが明らかにされた。折しも支那北京政府の江沢民がベトナム訪問中のことで、ベトナム政府は当然ながら当時の米政府を批判。現在のブッシュ政権が水面下で進めているカムラン湾軍港租借交渉に微妙な影響を与えることは間違いなく、ブッシュの足を引っ張る勢力がこの時期に公開したことは明らかだ。
米議会では民主党が「ブッシュ政権の反テロ戦争継続には明確な方向性がない」と批判の声をあげはじめた。もちろんこれは、今年秋に行われる中間選挙に向けた駆け引きでもある。
◆株価上昇の背景
こうした米国内の確執を読み取ったわけではないだろうが、わが国金融庁は昨年末から断続的に株の空売り規制を行ってきていた。もともと日本の空売り規制は米国等よりもずっと緩く、財務省幹部によれば「日本の市場が外資系ヘッジファンドの博打場になっている」という見方が強かった。このため金融庁は2月末には一段と空売り規制を強め、それが結果として株価上昇に繋がっていった。その背後には、東京市場で跋扈し大量の資金を得ている国際ユダヤ資本の動きを規制しようとする、米国内部の共和党、あるいは反ユダヤ勢力の働きかけがあったものと推測できる。
ここで蛇足ながら「空売り」についてごく簡単に説明しておく。空売りとは、証券金融会社などから株券を借りて、それを売り、一定の期間後に再度市場から株を買い戻して借りた会社に返すことである。たとえば1000円の株券を借りて、これを売る。返す時にこの株券が 800円に下がっていれば、 200円の利ざやが得られる。つまり空売りとは、株価が下がれば下がるほど儲かるもので、空売りが多い市場とは、下がることが期待される市場、力づくで株価を下げられる市場なのである。
この状況下、3月1日に小泉首相は来日中のディビット・ロックフェラーと密かに30分間の会談を行っている。この会談でいったい何が話し合われたのかは不明だが、その直後、なぜか突如として緊急閣僚会議が開かれ、直ちに金融庁による強権的市場介入に踏み切ることが決定された。事実、週明けの3月4日(月)の東京市場は急騰。平均株価は 638円22銭高となり、昨年8月16日以来の高値水準を取り戻した。また売買高も13億8000万株と、約9カ月ぶりに13億株を上回ったほどだ。
いわば米国内の「文明の内戦」がわが国の景気回復の伏線になったと言えるだろう。
じっさいわが国の景気は微かながら遠くに光が見え始めた状況のように思え、夏にはその光が一段とはっきり見えるだろう。早ければ今秋には復活の声が聞かれるといった見通しも出始めている。
そんな状況のなか、すでに昨年初から開始された東京都内の大型再開発がますます活況を呈している。都内在住の方あるいは都心に勤務先がある方などは気づいているだろうが、とくに品川、汐留、六本木、神保町あたりで大規模都市再開発が盛んになっている。こうした再開発地の特徴は、すべてに高層マンションが含まれているという点だ。今年(平成14年)に東京都心に建てられる高層マンションは全部で35棟。これはバブル全盛期よりも数が多く、史上最高の高層マンション建築数となっている。しかも来年(平成15年)にはさらに多くの高層マンションが登場することになっている。
こうした高層マンション建築ラッシュも、当然ながらわが国経済を押し上げているのではあるが、ここで考えたいのは、これらのマンションにいったい誰が入居するのか、という問題である。
確かにこれら高層マンションの価格は、なかには億ションとされる類もあるが、だいたい3LDKで4000万円代の価格。バブル全盛期の3分の1ほどである。しかし現在、わが国は、こんな膨大な数の都心マンションを必要としているのだろうか。
◆米国で高まる反ユダヤ主義
フランスの情報機関筋から漏れた話として、「今年に入って 160人以上のユダヤ人が逮捕され、米司法省と国防省に浸透していたモサド(イスラエル諜報機関)の諜報網が壊滅させられた」といった情報が世界中に流されている。
この情報に対し、在米イスラエル大使館は、「とるに足りない単なる査証ミスで、数人のイスラエルの若者が治安当局から事情聴取されたことはあるが、それを曲解した悪質なデマに過ぎない」と噂が燃え上がることを懸命に抑えている。ところが在米イスラエル大使館の冷静な発表の直後の2月27日には、ボストンの連邦検事局が「9・11事件に関連して」ローガン空港に勤務していた20人を逮捕した事実がある。この20人のなかにユダヤ人がどれほど含まれているか、当局は一切沈黙しているが、フランス情報機関筋からの情報を裏付けるかのようにも見える。
米国をほぼ牛耳っているユダヤ系メディアが、米の炭疽菌事件の犯人はビン・ラーディンに繋がると報道しているのに対し、最近になってワシントン・ポスト紙は「FBIが炭疽菌事件の容疑者を絞り込んだ」と報じ、その背後に米陸軍系あるいはユダヤ系の人物が絡んでいるかのような扱いをしている。ここにも、反ユダヤと親ユダヤの奇妙な戦いが見てとれる。
この時期には、黒人運動家のジャックソンが、「ワシントン・ポスト紙やフォックスTVなどはFBIの手先となって少数民族弾圧に加担している」と非難し、全米メディアを一元制御できていないユダヤ系の苛立ちを代弁している。
第二次大戦中のナチス・ドイツのユダヤ人迫害は誰でも知っているだろうが、じつは米国でもずっとユダヤ人迫害は存在していた。戦後もまたユダヤ人迫害の歴史は続き、ネオナチ団体とされる「アーリアン・ネイションズ」やKKK等による銃乱射事件等も毎年のように起きている。
こうしたなか、米国内の不穏な「文明内戦状態」は、最悪の場合ブッシュ大統領暗殺等といった劇的な事態を巻き起こす可能性まで憂慮されるのだ。この危険性を鑑みて、ブッシュ大統領はついに「影の政府」を設置したことを明らかにした。
『影の政府』設置は3月1日付のワシントン・ポスト紙が初めて報じたものである。9・11の同時テロから数時間後に出された大統領命令により、各省庁の高官約百人が米東海岸に2カ所ある地下の安全施設へ移り、小型核爆弾テロなどで首都の機能が崩壊した際、米政府の機能を引き継ぐのに備えており、約3カ月ごとに人員を入れ替えると説明されている。じつは『影の政府』体制は、米ソによる全面核戦争の可能性が現実的なものとして受け止められていた1950年代のアイゼンハワー政権当時に整えられ、地下施設も当時建造されたが、実際に発動されたのは今回が初めてという。
だが、実際に考えられる危険は、大統領に向けられるテロより、在米ユダヤ民族に対するテロである。かつてユダヤ人は、ナチス・ドイツによるホロコーストという悲惨な歴史をシオニズム運動の高まりに結びつけ、イスラエル建国という偉業を成し遂げた。この歴史が形を変えて米国に現出する可能性は十分に存在する。
この危惧される二一世紀最初のホロコーストが現実に起きた場合、いったい在米のユダヤ民族はどうするのだろうか。……当然ながら民族大移動が起きるであろう。そしてそれは必然として資本の移動も意味する。
だが、米国製グローバリズムに則った西側文明圏諸国のなかに、素直にユダヤ民族を受け容れる国などあるだろうか。快適に暮らせる空間と高度に発達したIT環境、その他あらゆるインフラが整備された場所など、どこにあるというのか。
……そんなものは、東京以外には存在しない。