【ブリュッセル13日=鶴原徹也】第2次大戦中、ナチスのユダヤ人迫害を恐れ、アムステルダムに潜んでいたユダヤ系ドイツ人、アンネ・フランク一家を1944年、ナチスに密告したのは、アンネの父の商売相手だった――。こんな新説を打ち出した本が13日、オランダで出版された。
オランダからの報道によると、書名は「オットー・フランクの隠された生活」。アンネの伝記、「アンネ・フランク1929―1945」を4年前に書いた英国人、キャロル・アン・リーさんが著者。
新著はアンネの父、オットーの書簡などをもとにして書かれた。オットーはアムステルダムで食材の卸業を営み、極右政党の党員でもあった卸業者アントン・クリスチャン・アーレスとも取引をした。アーレスは、フランク一家がユダヤ人であることを知り、商売上の利益のため保護したが、44年夏、自分の会社が倒産した時点で、“ユダヤ人狩り”にあたっていたマールテン・クイペルに密告した疑いが強い。クイペルはナチスに情報提供し、8月4日のフランク一家拘束にも立ち会った。
アーレスは大戦後、不正政治行為の罪を問われ、収監された。オットーはその釈放を嘆願した。密告者と知っていたのかどうかは謎だ、という。
アンネ・フランク研究家で、オランダ国立戦時資料研究所のダビッド・バルノウ研究員は「本には興味深い新事実も多い。ただ密告についての真相は永遠に分からないのではないか」としている。(読売新聞)
[3月14日10時37分更新]