(回答先: Re:間伐と枝打ちなど 投稿者 木村愛二 日時 2002 年 3 月 01 日 18:46:42)
木村様。『“杉林焼き払い放火作戦”開始宣言!』ざっと読ませていただきました。
膨大な調査探究執筆のエネルギーに感服するとともに、間伐・枝打ちの件もよく勉強されていてお見事でした。いささか失礼な前Res.であったことをお許し下さい。
さて、具体案のお話です。対策として「スギ林の皆伐(放火?)を!」と書かれていますが、これは現実的ではありません。現在の手入れ不足のスギ林は林床の植生が貧弱で土が露出している場合が多く、大規模に全部伐ってハゲ山状態にすると、まちがいなく大雨・台風の際、土砂崩壊がおき、洪水が頻発すると思われます。すぐに広葉樹を植林しても治山効果を期待できるまでに根が張るまでは10年以上を要し、その間に伐倒したスギの根が腐って地中にすき間ができ、非常に危険な状態が続きます。
そこで間伐ということになりますが、本数率にして5〜6割の間伐がよいと思います。このような強度の間伐ですと、掛かり木(間伐した木が立っている木に引っ掛かって倒れない)がおきにくく、安全かつスピーディーに作業が進みます。そして同時に樹高の半分の高さまで枝打ちします。残存本数が少ないですから、枝打ちの手間もぐっと少なくなります。生育の順調な素性の良いスギの木だけを残して5割強の間伐をし、さらに樹高の半分まで枝打ちをする。放置しておくだけで、間伐のすき間に下草・雑木が自然に侵入し、健全な山林に変化していきます。山林が健全化すれば、たとえ多少のスギの木が生えていたとしても、花粉はぐっと減っていくはずです。残したスギも程よい間隔をもっていい木に生育していきますから、山林所有者をもある程度納得させることができるでしょう。
また、手入れの遅れ過ぎたモヤシのような線香が立っていようなスギ林は、強度の間伐をすると残した木も台風や雪で折れる事になり、結局全伐したと同じになってしまいます。これを避けるために「巻き枯し」という方法をとります。間伐すべき木を生きたまま立ち枯れにしてしまう方法です。枯らす事によって葉が枯れ落ち、間伐と同じような空間が生じて林床に光が差し、かつ枯れ木が生きた木の支えになってくれます。
これらの選木・間伐・枝打ちのノウハウは現在月刊『林業新知識』(全林恊)に「鋸谷式・新間伐マニュアル」の名で10回にわたって連載中(3〜4月に同社よりブックレットが刊行される予定)ですがwebでは
http://www2.tokai.or.jp/miraiju2001/kan0.html
にダイジェスト版を掲載していますし、この施業法の開発者、鋸谷茂(おがや・しげる)さんの「間伐講議録」も私の管理するHPに流しています。
http://tamarin.cside21.com/ogaya.html
ちなみにこの方法は、簡単な指導を受ければ素人でも十分可能な作業です。
いま日本の林業は大きな曲り角にありますが、残念ながら森林組合などの関係者の意識・危機感はあまりに低く、間伐補助金を食いつぶしながら、いつまでたっても山が改善されない状況が続いています。なにしろ現在の間伐補助申請は1〜2割伐ればいいことになっているのです。ところが、現在のぎゅうぎゅう詰めの林では
この程度の間伐では数年で元に戻ってしまい(間伐と同時に残った木がすぐに枝を張ってしまうので)、税金の無駄使いをしているような状況なのです。あまりにもおかしな山の状態に気付いて、市民が「森林ボランティア」なる活動を始めていますし、私のような門外漢が林業技術雑誌に最先端の間伐技術を連載するというていたらくです。
花粉症も重大問題ですが、川や海にまで繋がる「自然の循環のみなもと」山林の荒廃は、本来なら国をあげてまっ先に取り組まねばならない大問題のはずなのですが・・・。どうか、現実的な具体案としてこの「鋸谷式間伐法」をお知りおきいただき、さらに広範に声を上げて下さるようお願いいたします。
極悪人は誰か?・・・