農業を基盤とする思想実践団体「幸福会ヤマギシ会」の集団生活に参加した横浜市の女性が「参加時に渡した財産を脱退後に返してもらえない」として、同会側に約2億8000万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が27日、東京高裁であった。石井健吾裁判長は同会側に約2億4000万円の支払いを命じた一審・東京地裁判決を変更し、支払額を1億円に減額した。
訴えられたのは、いずれも津市にある「ヤマギシズム生活実顕地調正機関」など2団体。このうち1団体が一審判決を不服として控訴していた。
石井裁判長は、同会の「脱退しても財産は一切返還しない」という契約について、「全く返さないのは公序良俗に反し、無効だ」と判断。しかし、女性が同会のために使われることを承知で出資していたとし、「契約が全部無効ともいえない」と指摘。返還額は、参加期間や会から得た利益などを考慮して算定すべきだとした。
女性は89年、不動産や預金など計約2億5000万円の資産を提供したが、その後、活動に疑問をもって94年に脱退し、全額の返還を求めていた。一審判決は「契約は公序良俗に反し、無効だ」と判断していた。(12:35)