今年8月に稼働する住民基本台帳ネットワークシステムについて、総務省の金沢薫事務次官は25日の定例記者会見で、国の機関による利用範囲を現在の93の事務から大幅に拡大するため、関連法案を通常国会に提出する意向を示した。金沢氏は「住民にとってメリットがある」と述べたが、「個人情報の国家管理になる」との反発も根強い。改めて国会で是非が問われることになりそうだ。
このネットワークは、99年の国会で成立し、今年8月に施行される改正住民基本台帳法に基づく。市区町村と都道府県、国の機関のコンピューターを結び、氏名、性別、生年月日、住所、これらの変更情報に加え、新たに国民一人ひとりにつけられる11けたの数字の「住民票コード」を共有化する。
現在、この情報を利用できる国の事務は、住民基本台帳法の別表に列記されており、資格申請や年金給付など10省庁が所管する93の事務とされている。しかし、「電子政府・電子自治体を推進するため、従来、届け出や申請の際に住民票の写しの添付を求めていた手続きを電子化しなくてはならない」(金沢氏)として、拡大を検討することになった。
新たにネットワークのデータを利用する事務は、旅券発給の申請など100を超える見込み。総務省は近く、行政手続きの電子化を可能とするための共通事項を定めた「行政手続きオンライン化法案」などを国会に提出することにしているが、住民基本台帳法の別表を改めた改正案も併せて提出することを検討している。
住民基本台帳ネットワークに対しては、日本弁護士連合会が昨年9月に「十分な個人情報保護立法がされるまでは、施行を延期すべきだ」との会長声明を発表。ジャーナリストの桜井よしこさんら著名人でつくる「国民共通番号制に反対する会」などが廃止を訴えている。
改正法の施行前に、再改正が検討されていることで、「なし崩し的に国民総背番号制に道を開くのでは」との懸念が強まることも予想されるが、金沢氏は記者会見で「(国の機関に提供されるのは)氏名など非常に限定された情報であり、それ以外の情報を開示する考えはない」と述べた。(21:11)