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菅首相の伝家の宝刀「解散」封じで自民と公明が“密約”
https://dot.asahi.com/wa/2021012500059.html
2021.1.26 08:00 週刊朝日2021年2月5日号より抜粋
四面楚歌の菅首相(C)朝日新聞社
菅義偉政権の発足から4カ月余り。「叩き上げ」ともてはやされた宰相はコロナ対策の失敗で急速に求心力を失いつつある。菅義偉首相は1月18日、新設のワクチン担当相に河野太郎行政改革相を指名するという“奇手”を繰り出した。自民党幹部がこう語る。
「ワクチンで挽回しなければ支持率は回復しないが、厚生労働省は薬害を警戒しているので田村憲久厚労相がいくらスピードアップを指示しても前に進まない。当初は小泉進次郎環境相の名前も挙がったが、脱ハンコで実績をあげた河野氏のほうが適任となった」
だが、コロナ対策は田村氏に加えて西村康稔経済再生相も担当していることから、今後を不安視する声もある。
「西村氏は河野氏に見せ場を奪われ内心おもしろくないだろう。船頭が多すぎて転覆しなければいいが」(官邸関係者)
早くも雲行きは怪しい。西村氏や田村氏は露出を競うかのように頻繁に会見しており、情報の整理は困難。さらに、全国民に必要な数量のワクチン確保の時期をめぐっては、「6月まで」とした坂井学官房副長官の発言を河野氏が会見で「政府内で情報の齟齬(そご)があった」と否定。坂井氏が「齟齬は生じていない」と反論するなど、混乱が生じたのだ。
「河野氏はあえて波風を生み出し注目を得てきた人物。良く言えば突破力があるが、独善的で役人とうまくやるのは難しい。いずれ官邸とうまくいかなくなるのでは。坂井氏も坂井氏ですが……」(前出の官邸関係者)
それでも、河野氏という「劇薬」に頼らざるを得ないほど菅政権は追い詰められている。ある自民議員は言う。
「支持率が30%を切れば、菅首相は解散できないよ」
党内の動揺を示すように、18日に自民党本部で開かれた経済成長戦略本部の会合も大荒れだった。別の自民議員が言う。
「出席議員からは新型コロナで打撃を受けた産業に対し、補償の上積みを望む声が複数出た。『このままでは衆院選に負ける』と訴える議員もいた」
20日に米国大統領に就任したバイデン氏は日本円にして約200兆円の追加経済対策を発表。1人あたり約14万5千円相当の直接給付も含まれる。日本政府も2021年度は106兆円を超える予算を組む予定だが、経済支援の内容が複雑で対象者が少ないとも指摘される。会合に出席した安藤裕衆院議員は言う。
「菅首相のメッセージが国民に届いていない。政府として『一社も倒産させない、一人も失業させない』という方針を掲げ、米国のように財政出動を拡大し、あらゆる支援策を打つべきです」
こうした中、解散時期をめぐる駆け引きが始まっている。当初、最短の日程とみられていたのは衆院北海道2区と参院長野選挙区の補選が予定される4月25日。しかし、支持率急落の中、自民は北海道2区で鶏卵疑惑を受け辞職した吉川貴盛元農林水産相の後任候補擁立を断念するなど体制を整えられず、緊急事態宣言の解除時期も見えない。このため永田町では「4月解散は無理」との見方が支配的だ。
そこで有力視されるのが6月下旬から7月。同時期に都議選もあり「衆・都ダブル選」説がささやかれる。だが、水面下ではある“密約”が結ばれていたという。自民都連関係者は言う。
「当初、都議選は6月27日の予定だったが、与党議員の一部が7月4日にズラそうとしている。この日付だと国会の首相指名選挙が五輪開会式のある7月23日直前となり、ダブル選挙は難しくなる。事実上、菅首相の解散権を封じられるのです」
なぜ、ダブル選挙を回避する必要があるのか。
「都議選を重視する公明党としてはダブル選の負担は大きすぎるので回避したい。そのため、都議選で候補者を擁立しない選挙区では自民候補を支援するという条件で自民側と密かに合意した。自民としては公明に都民ファーストの会の支援に回られて大敗した17年都議選の二の舞いは避けたいため、両者の思惑は一致したと聞いています」(前出の自民都連関係者)
小池百合子氏は、すでに蚊帳の外だという。支持率低下で与党からも動きを封じられ、伝家の宝刀である「解散権」を行使できず、秋の総裁選挙での「再選」は遠のくばかりだ(本誌 西岡千史/今西憲之)
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