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※2021年1月23日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2021年1月23日 日刊ゲンダイ2面
【しがみついているのはポンコツコンビだけ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) January 24, 2021
世界中から湧きおこる「五輪やめろ」の大合唱
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/ntRkTGyv3O
※文字お越し
「ぺラペラしゃべった幹部は誰だ!」――与党内は“犯人捜し”に躍起だ。英紙タイムズは21日、今夏の東京五輪を巡り、「与党幹部」の話として新型コロナウイルスの影響で「日本政府が中止せざるを得ないと内々で結論付けた」と報じた。
記事によると、与党幹部は「誰も最初に言いたがらないが、総意は(開催が)難し過ぎる」「主催できる可能性を残しながら、国のメンツを保つ中止発表の手法を探し出している」と発言。これだけ理路整然と話せる与党幹部は、自民党総裁である菅首相と、二階幹事長以外の誰かに違いない。
折しも、政府・東京都・大会組織委員会がIOCの要請を受け入れ、観客数について「上限なし」「50%」「無観客」と3案を想定していることが判明したばかり。無観客開催も視野に入れる中、海外から“身内”に背中を撃たれるとは、犯人特定を急ぐ気持ちも分からなくはない。
この報道に、小池都知事は22日の会見で「一切、聞いておりません。むしろ抗議を出すべきではないか」とおかんむり。
坂井学官房副長官は、同日、「いずれ、どこかの段階で、実際に開催するかどうかの判断を行う」と、中止の可能性もあると受け取れる発言をし、釈明に追われる始末だ。
火消しを図るつもりが、かえって火に油を注ぐとは大マヌケだが、総出で打ち消したところで時すでに遅し。海外メディアの報道は、悲観論や中止論が渦巻いている。
15日に「開催の希望に陰り」と見出しを掲げ、「第2次大戦後、初の中止に追い込まれる可能性」との記事を掲載したのは米紙ニューヨーク・タイムズだ。IOC関係者らから、安全な五輪開催は不可能との声が出始めたと指摘。最古参委員のディック・パウンド氏(カナダ)が開催に「確信が持てない」と発言したことなどを列挙した。
海外メディアの懐疑的な報道に一役買ったのは、河野ワクチン相だ。ロイター通信が14日、河野の「(無観客の可能性を含めて)五輪に備えて最善を尽くす必要があるが、どちらに転ぶかは分からない」との発言を紹介。河野は自身のツイッターで「一部だけ切り取って曲解して流すのはメディアの矜持が問われる」と反論したが、仏紙フィガロは「開催されない可能性に日本の閣僚が言及」と即座に反応した。
19日には英BBCが「組織委は中止計画を作るべきだ」と、2012年ロンドン五輪の組織委副会長だったキース・ミルズ氏の踏み込んだ発言を報道。記事の中で「世論の反対が強まっているにもかかわらず開催を推進している」と、政権の姿勢を痛烈に批判した。
何から何まで先の大戦末期に酷似の惨状 |
世界中から湧き起こる「五輪やめろ」の大合唱――。欧米の感染状況の深刻さは日本とは比べ物にならない。ワクチン接種が始まってもウイルスが猛威を振るっている。緊急事態宣言が出た東京の感染率も高止まり。
海外メディアの報道を見れば、もはや開催不可能は誰の目にも明らかだ。
「五輪開幕まで残り半年。本来なら国内メディアも開催の可否を検証すべき時期なのに、大手紙が軒並み大会スポンサーという異常事態です。決して懐疑論を報じることはない。海外メディアを通じてしか、日本がおかれている状況を正確に把握できないとは、まるで先の大戦末期の惨状です」と語るのは、五輪関連の著作がある作家の本間龍氏だ。こう続けた。
「実は私の元にも、組織委の複数の内部関係者から『できないと分かりながら、これ以上、ムダなお金と努力を払うのはつらい』との声が寄せられています。英紙のネタ元となった与党幹部も、菅首相や組織委の森会長らに面と向かって『中止』を進言できないため、“外圧”を使って悲観ムードを醸し出そうとしているのかもしれません」
この期に及んで一体、誰が五輪開催に固執しているのか。国民の大半は今夏の開催を望んでいない。直近のどの世論調査でも8割が再延期か中止を求めている。
その上、このコロナ禍だ。大会計画では、五輪期間中は計1万人以上の医師や看護師らが競技場や周辺で選手や観客の医療にあたる。中核を担うのは東京都医師会だ。
菅政権と小池都政のコロナ無策のせいで、都内の医療体制は崩壊。夏までに感染爆発が収まる保証もない。コロナ対応で疲弊しきった医療従事者に「五輪の面倒まで見ろ」なんて酷な話だ。
日本医師会の中川会長は22日、都内の講演で、外国選手団への医療提供は困難との見方を示し、「ワクチンが劇的に機能したとか、特効薬が急に出てきたとか、そういういろいろな神がかり的な出来事があれば別だ」と語った。
五輪開催は「神頼み」とは、それこそ大戦末期を彷彿させる。
国立競技場はワクチン接種会場に
どうやら違約金の心配もなさそうだ。元電通専務で組織委理事の高橋治之氏は、先週発売の「週刊文春」(1月21日号)で「中止になってもIOCも組織委員会も興行中止保険に入っている。お金の問題は何とかなるのではないか」と語っていた。
まるで中止を想定しているかのような口調だが、実際「ふい」になるのは900億円を見込むチケット収入くらい。コロナ対策など延期に伴う追加経費が総額2940億円にも上ることを考えれば、おつりがくる。
「開催を早期断念し、浮いた追加経費を感染防止策に振り向ける方が、よほど賢明な決断です。競技施設の建設など大会に向けた公共事業の経済効果も既に実現しています。五輪中止で選手村や国立競技場などを使わなくなれば、米国のようにドライブスルー式のPCR検査やワクチン接種の会場に転用すればいい。国民は大歓迎です」(経済評論家・斎藤満氏)
そもそも、国民に歓迎されない五輪を強行開催しても、参加するアスリートは不幸なだけだ。
陸上・女子1万メートル代表の新谷仁美選手は「皆さんがやりたくないのなら、開催する意味が全くなくなってしまう」と一貫して国民が望まない五輪開催に疑問を投げかけてきた。
元五輪柔道女子代表でJOC理事の山口香氏も「(開催可否の)判断が長引けば長引くほど国民の気持ちが五輪から離れていく。五輪を嫌われ者にしないで欲しい」と訴えている。
後手後手の大将に早期決断はムリ
結局、開催を熱望しているのは菅・二階のポンコツコンビくらいしかいないのではないか。
いくら菅が「人類がウイルスに打ち勝った証しとする」と繰り返し、二階が「開催するのしないのって躊躇している問題じゃない」とスゴんだところで、底が割れている。コロナ迷走で支持率急落の中、五輪開催という政権浮揚の唯一の「切り札」まで失えば共倒れ。あろうことか、政治的保身のためだけに五輪にしがみついているのだ。
この調子だと感染拡大を理由に棄権する国が続出しても、東西冷戦下のボイコットの応酬で参加国が偏った1980年モスクワ、84年ロス両大会の悪しき前例を免罪符にしかねない。間違いなく五輪史に汚点を残し、コロナ地獄を招くだけだ。
「森会長でさえ、21日の西日本新聞の単独インタビューに『最悪の状態をいろいろ想定して考えるのは当たり前』『開催可否の判断は3月25日の聖火リレー開始前』などと答え、どうも開催強行派から距離を置き始めたかのような発言です。菅政権にとっても開幕直前までズルズルと引き延ばすよりも、早めに中止を決断した方がダメージは少ないはず。今の状況下での五輪開催は、どう考えても不可能です」(本間龍氏=前出)
後手後手続きの“バカな大将”に早期の大英断を期待するだけムリってものだ。「降伏」の決断ができず、ズルズルと戦禍を拡大させた指導者の姿まで、先の大戦に似せる必要はない。
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